この乙女ゲームの攻略情報は、妹だけが知っている〜主人公の師匠ポジになってしまった兄より〜 作:ゲスト047562
おにいの妹:今日も推しが生きてる。尊い
おにいの妹:朱青を見守る壁になりたい
ダイダラぼっち:主人公ちゃんに会ったわ
おにいの妹:は?
ダイダラぼっち:とりまチュートリアルを無双出来る程度には鍛えたい
おにいの妹:待って。意味わかんない。何があったの?
ダイダラぼっち:泣いてる子の話聞いてたらソイツが主人公だった。殺されかけた。強くする。以上
おにいの妹:キモ
ダイダラぼっち:てめえ自分の過去ログ漁ってみろや
おにいの妹:ウチも会いたい
ダイダラぼっち:冬休みに戻ってきたらな
◇◆◇◆◇
主人公涙のベアハッグ地獄から抜け出し、明日再びここで落ち合う事にしてしばし。
俺は今日の予定を全て取り消し、ある場所へ向かっていた。
「たのもーう」
一軒家を改造した、小さめの体育館に似た建物。大分ガタの来ている木の扉を横に開ける。
中は道場となっており、『生存戦略』というスローガンがデカデカと飾られている。
……そこは『質実剛健』とか『明鏡止水』とかじゃないのかよ、って思ったよな? 俺もそうなの。
まあその件は後にして、目的の人がいない。つか、人っこ一人いない。まあそれはいつもだが。
うーむ、どっかですれ違ったか? 普段は昼過ぎには道場に入り浸ってるし、今日もいると思ったんだが……。
「ん〜? 何じゃ〜?」
「あ、いた」
諦めて帰ろうとした矢先、2階へと続く階段からお爺さんが降りてくる。
腕を腰に回してはいるが、背筋をピンと真っ直ぐ伸ばし、床を鳴らす事無く静かに移動する老人。長く伸ばした髭はそのまま彼の生きた年月を表し、老いた姿ながら若々しく感じさせる。
「お〜ん? お主、何でおるんじゃ?」
「お疲れ様っす
「おうおう、気にするでない
「ありがとうございます。ちょっとお話が……」
彼の名前は、
……開いている、とは言っても。今のところ門下生は俺1人だけな貧乏道場だが。この辺りというか、恐らく世界で唯一に近い、加護無し向けの護身術である。
この世界では古来より、危険な戦場に赴くのは、神霊とその加護持ち達。加護無しは安全な場所で彼らの為に様々な支援をするのが習わしだった。
その中で、ある1人が思った。『もし加護持ちがいないこの場所に危機が迫った時、他に護れる者が近くにいた方が良い』と。
それが献魂護身術の始まり。加護無しによる、加護無しの為の技術。
しかし、その教えは広がらなかった。当然だ。加護無しがいくら強くなろうとも、加護持ちには結局敵わないのだから。
必死に護身の重要性と教えを説く創始者を、周囲は奇異なモノを見る目を向けた。それでも彼は諦めなかった。家族やごく少数の門下生に教えを広めていき、少しずつではあるが加護持ちもその技術を取り入れる者も増え、その存在も認知されていた。
そこに神霊学園が出来てから、状況は一変。加護持ち専用のしっかりした体系を授業に落とし込み、加護持ち達の更なる戦力強化を行った。
……もう分かるね? そう、皆思うんだよ。『あれ、じゃあ護身術とかいらなくね? 結局加護持ちが解決してくれるでしょ。その為の神霊学園なんだし』と。
かくして、遂にその門戸を叩く者はいなくなり、この世の加護無し専用の技術は消えて無くなりましたとさ。めでたしめでたし。
……長えよ。このジジイ、別に護身術の歴史なんざ知りたくもないのに延々この話をするから、とにかく教えろや今その歴史と寿命終えたいかと飛びかかったのは良い笑い話だ。
「実はさっき──」
話を本題に戻そう。床に座って、先生にさっきあった事を説明する。
髭を手で梳きながら、先生は目を閉じ静かにその話を聞く。時折頷く様に首が下に動き、反動で首が上に戻って──。
「いや寝てんじゃねえか」
腰をほんの僅かに浮かし、前蹴りをかます。
「聞いとる聞いとる。あれじゃろ、要はデキ婚したからどう責任を取れば──」
「んな生々しい話した覚えありませんが!?」
「あ〜、それはお隣の鴨さんの事じゃったかの?」
「実話!?」
主婦の井戸端会議にしても議題が嫌過ぎるだろ。普段何話してんだ。
っと、いかんいかん。こういった精神的動揺を誘うのも、献魂護身術の一つだったな。
ボケてしまった老人に見えるが、根はそこらのチンピラよりも気骨のある、強い人なのだ。じゃなきゃわざわざ教えを請うたりなんかしていない。尊敬の念はあるのだ。それはそれとして、ボケなのかボケてるのか分からない時があるからイラッとくるだけで。
溜息を一つ、心を落ち着かせる。
「要は、神託の巫女に会っちまったんで、せめて入学前までにある程度強くしたいと思うんです。良いですか?」
「別に構わんぞ〜。わざわざワシに話さんでも、門外不出を謳っとる五行家でもなし。お主のしたい様にすれば良いじゃろ〜?」
「いや、門下生に勧誘せずに技術だけ教えようとするんですから、スジは通しますよ。だって、困ってる所を助けて『ここに入れば助かりますよ。入信料1000円でお得です』なんて、詐欺の常套手段じゃないっすか」
道場に金を落とさない人間に、無償で技術を授けようというのだ。ケジメは必要だろう。
まあ俺が出しても良いのだが……ほら、今は中学生だから。当然お小遣い制よ。稼げるのは霊力だけなんでね、何とぞ……。
それに、投資という点で見れば悪くないと思っている。原作通りに彼女が世界を救ってくれれば、『献魂護身術のお陰です』って宣伝してもらえるし。
「いやいや、そうじゃなくての〜」
「ん?」
「お主、
「教えませんよ」
その先の言葉を遮る。
先程までの戯れとは明確に違う一線。そこに触れられ、空気が凍る。
「……すいません。とにかく、アイツに必要なのは献魂護身術の方なんです。お願いします」
「……団坊。お主は相変わらず、その
「……」
「お主の目には、初めて会うた時から強い決意が見えておった。ワシにも見えぬ、何か大きな目標に向けてな……お主が妖力を得てまで強さを求めるのは、その為かの〜」
……先生は俺の事情を殆ど知らないのに、そこまで見抜かれているとは思わなかった。流石だな、と素直に感心せざるを得ない。
つか何で妖力持ってる事まで知ってるんだ? 別に話す必要も無いから黙ってたのに……。
「今一度確認させとくれ。お主なりに目的があって、その娘を助けるんじゃろ〜?」
「はい」
「かつて先祖が示した様に、その心と技術を広めてくれるのであれば、ワシから言う事は何も無い。好きにせい」
「……! ありがとうございます」
「なぁに、可愛い
「おじいちゃ〜ん、私のパンツどこ〜……?」
2階から、ボサボサの髪をそのままに、パジャマをだらしなく羽織っただけの女性が、寝ぼけ眼を擦りながら降りてきた。
ほう、ヘソチラですか。大した者ですね。
「……
「あ、おはざっす。師範」
「うぅ〜ん……ん? で、ででででで弟子ぃ!?」
昼過ぎなのに、今起きたかの様なこの女性h「ちょちょちょっと待て!? 着替えてくる!」
「はい?」
いや別に良いんすけど。貴方が内弁慶のだらし姉なのは公然の秘密ですし。