この乙女ゲームの攻略情報は、妹だけが知っている〜主人公の師匠ポジになってしまった兄より〜   作:ゲスト047562

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第9話 決め台詞と決めポーズはお約束

「今日は神技を覚えるか」

 

「はーい。あの、師匠……大丈夫?」

 

 どうも、財布の中身を根こそぎ吸われたシワシワ代陀羅団です。季節のせいでしょうか、懐も心もとても寒いです。

 師範にホイホイ誘われた結果、訪れたのはショッピングモール。そこでどんな訓練をするのかと思ったら、中学生である俺の財布を空にする事だった。人の心とか無いんか?

 

「ああうん、こっちの話だから気にすんな。神技ってのは、神霊の持つ力を更に引き出した技の事だ」

 

「銃に神力を込めて撃つだけじゃ駄目なの?」

 

「駄目じゃないが、それは神力の使い方の基礎だからな。神技はもっと強い攻撃や回復も出来る。後カッコいいぞ」

 

「最後のはいるの?」

 

 いる。寧ろこれが1番重要だろ。

 神技は、詠唱パートとして神霊に力を貸してくれるようにお願いする祝詞がある。神霊との関係が深まればこの祝詞は必要無くなるが、俺はやっぱりお約束って大事だと思うんだよな。

 カミカゴの決め台詞はそれなりにカッコよかったから覚えてる。良いなー俺も言いたかったなー。

 

「まあとりあえず、手に神力を込めてみるんだ。お前と神霊は一心同体、お前の心がどうしたいか、何をしたいか、それを願ってみろ」

 

「分かった」

 

 前回と違い、彼女は素直に目を閉じて両手を重ねて前に突き出す。

 すぐに青い神力が彼女の手に集まっていく。神力はどんどん凝縮されていき、今にも弾けそうだ。

 

「……ッ、お願い!」

 

「フオオッ!?」

 

 突如水の爆弾が目の前で爆裂し、身体が壁に叩きつけられた。

 

「きゃああああああああ!!? ごめん、ごめんなさい師匠!」

 

「お、俺じゃなかったら致命傷だったぜ……」

 

 慌てて駆け寄る天外を押さえて、無事をアピールする。

 …………っってええええええええええええ!!?? 大丈夫!? 全身の骨折れてない!? ガードしても膝ガックガクなんやけど!?

 天外半端ないって! 初っ端祝詞無しとか出来へんやん普通! 関係深まる程祝詞はいらないって言ったけど愛され過ぎやって君!

 

「本当にごめん師匠。集中してて……」

 

「ええんやで」

 

「え?」

 

「すまん、オッサン言葉が。とにかく気にすんな、後はその神技に名前を付けて完成だ。名は言霊、神技は名前を付けて初めて完成するんだ」

 

 俺が本当に無事だと分かったのか(すいません嘘です見栄張りました》、彼女は少しだけ悩む素ぶりを見せる。

 まあ、今の神技の名を俺は知っている。正面から見たのは初めてだが、あの神技は……。

 

花水鬼(はなみずき)ってどうかな?」

 

「良いと思うぞ。確かに花が咲くみたいに爆発したからな」

 

「気にしてる?」

 

「してない」

 

 本当だぞ。

 

「あ、いきなり祝詞無しで神技撃てるのはマジで凄いからな? 最初は祝詞を唱える事から始めるのが普通だから、祝詞を見てたら回避余裕だったから」

 

「やっぱり気にしてる?」

 

「してない」

 

「ふーん……師匠、ちょっと良い?」

 

「ん?」

 

 不意に天外が近付いてくる。今度は何をしてくるかと警戒していると、手を上に向けて神力を込め始めた。

 

「神霊よ、傷付いた人を守る恵みの雨を下さい。ヒールカーテン!」

 

「お、おお?」

 

 俺達の周囲に雨が降り注ぎ、身体の痛みが消えていく。

 これは範囲回復の神技! これって序盤で覚えるのか。

 クッソ便利なんだよなこれ。結が苦戦してた序盤の詰みポイントとか、これが無かったら俺もイライラしてたかもしれん。それぐらい有用な神技だ。

 

「どう? 身体は平気?」

 

「天才」

 

「えっ、えへへ……言い過ぎだよ。唯、師匠を治したいなって思って」

 

 照れて顔を隠す様に笑う。あら可愛らしい、まるで乙女ゲームの主人公だ。……主人公か。

 しかし……うーむ、確かに褒めすぎ、か? 俺も天外も神霊学園に通ってないから、基準が曖昧なんだよな。唯一の指標は結だが……アイツも特別だしなぁ。

 

「何にしても、神霊学園に通ってる奴らが3年かけて習う事を、お前はすぐに出来てるんだ。自信持って良いと思うぞ」

 

「神霊学園……あれ? そういえば、師匠は加護無しだから通ってないよね? 何でそんなに詳しいの?」

 

「妹が加護持ちでな。それで色々教えてもらったんだよ。因みに、神託の巫女の話も妹から聞いた」

 

「へ〜、そうだったんだ。それなら、妹さんにもお礼を言わなきゃだね」

 

「ははっ、会う事があったらな」

 

 推しを見守る壁になりたいとか抜かす奴が、実際にヒロインの前に立ったらどんな反応をするか。今から俺も楽しみだぜ(ゲス顔)。

 

「でも師匠。妹さんに聞いても、神力とか神技の使い方とか、流石に詳しすぎじゃない? 感覚で分かる問題じゃないと思うんだけど……」

 

「ん? あー、そりゃ簡単な話だ」

 

 どうせいつかバレる事だしな。

 指先から妖力を吐き出して、彼女に見せつける。

 

「俺が持ってるのは妖力。()()()()()を使ってるからだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………──え?」

 

 何故か天外が、顔にありありと絶望の色を浮かべた。

 え、そのリアクションis何? 確かに妖力は良くないイメージだが、そこまで悲しい顔浮かべる要素あったか?

 

「う、そ……」

 

「マジマジ」

 

「じゃ、じゃあ師匠は……」

 

 天外は、瞳に涙を溜め喉を鳴らしながら、意を決した様に聞いてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の、敵……」

 

「な訳ねーだろ」

 

「きゃんっ!?」

 

 頭に軽くチョップを叩き込み、正気に戻す。

 何だ、そんな事かよ。あまりに迫真過ぎる顔だったから身構えちまったじゃねえか。

 

「あのな、俺が敵なら初対面で殺してるわ。わざわざ自分の倒し方を教える奴なんざいねえって」

 

「だ、だって……」

 

「まあ、妖力があるから怖い奴って認識は仕方ない。お前が今戦ってるのはそれを操る妖魔だしな。だが、妖力を持つ奴が全員悪いって訳じゃねえ。力は結局唯の道具、使う奴次第で善にも悪にもなる」

 

 俺の様子が変わらない事に安堵を覚えたのか、少しずつ彼女も落ち着いていく。俺の言葉をゆっくり咀嚼してから、恐る恐る口を再び開いた。

 

「じゃあ、師匠は……敵じゃ、ない?」

 

「うん」

 

「……よ、良かったぁぁぁ」

 

 嬉しそうに笑い、力が抜けたのかその場にへたり込む天外。

 ええ……そこまで思い悩む事だったか? 別に俺が敵になったらなったで、「あい分かった。では死ぬが良い」って言いながら特攻するぐらいの気構えぐらいは欲しいんだが。

 ……それは俺の性癖か。かつての友と泣き叫びながら戦うシチュ、良いよね……。

 

「疑問は晴れたか? じゃあ神技の練習を続けるぞ。お前のその心の弱さは神霊も影響を受けるんだ、心が弱ってる時は万全の神技を撃てないぞ」

 

「うん、分かった!」

 

 天外は元気を取り戻し、神技を撃つ構えをしたまま祠を突き進む。あ、飛び出してきた大きな狐の妖魔、野干(やかん)が高圧放水の餌食になった。

 なるほど。天外は親しい人には手を挙げられないタイプか。確かに親身になって寄り添う系ヒロインは王道だな。つか、乙女ゲーム自体が攻略男子のメンケアゲームと呼ばれるぐらいだし、寧ろそれが普通なのか。

 

「当たり前だが、神力は使うと減るからなー。気を付けろよー」

 

「はーい!」

 

 何にせよ、課題は彼女の心の強さだな。この世界において、精神の強さは時に肉体より大事だ。

 優しさは美徳だが、ああも容易く揺れてしまうようでは、その内妖魔に付け入る瞬間を与えてしまうだろう。俺が教える間に、出来るだけ指摘してやりたいが……。

 

「花水鬼! 花水鬼! 撃ち抜けっ!」

 

「……」

 

 あの、神技使い過ぎじゃない? 神力どうなってんの? しれっと銃と使い分けしてるし……。

 原作知識を携えた俺でも妖技を撃つのに1日かかったのに。天は二物どころかそれ以上を与え過ぎじゃない? こんなバトルジャンキーみたいな姿見せられたら、そりゃ世紀末女子になりますわと納得せざるを得ない。

 

「師匠、今のどうだった?」

 

 子犬の様にキラキラした目で誉められ待ちをする天外。

 そこだけを切り取って見れば、ヒロインらしい愛らしさなんだ。

 

「……慣れてきたなぁ」

 

「うん。神力の事とか、妖魔とどう戦えば良いのかとか、段々分かってきた気がする」

 

「そうかそうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 じゃあ俺と戦うか」

 

「さっき敵じゃないって言ったのに!?」

 

「そろそろ新しい刺激が必要かなって」

 

「やっぱりさっきの誤射根に持ってるよねぇ!?」

 

「持ってないって。あんまし」

 

 いや、あまりにも君の覚えるペースが早いからさ……。

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