ガンダムSEED-廻る運命の中で- 作:チェストベリー
設定
フレイ・アルスター(転生者)
学生時代にガンダムSEEDをリアルで観ていた為、そこそこの知識はあるが、フレイ・アルスターの人物像には知識があまりない。
作中で【最愛のパパ】を亡くした事により、フレイが作中で悲劇のヒロインになった事、またそこからのフレイの人生を思い出せば絶望の二文字しか思いつかないが、ならば、とパパを自分の手で救えばオールオッケーじゃない?と楽天的な思考で(猛反対するパパを猛烈に説得)して地球軍の軍人として志願する···。
物語開始の二年前に転生を果たした転生主の人生をかけた戦いが始まる───。
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「····は、」
酷く、酷い夢を見た気がした。
内容はほぼ忘れてしまったけれど、燃え盛る炎の中で自身が焼かれる夢だったはずだ。
目覚めが悪い、と言うのはこう言う事なのか···。
モヤモヤする気持ちのままベッドから体を起こすと、視界の隅で赤い髪がさらりと肩から流れ落ちた。
首筋には肌から滲んだ汗で、張り付いていて気持ちが悪い。
そこで、私は一つの疑問を持つ。
「······、赤い、髪?」
私の髪はカラーして茶髪だったはずだ。
赤に、しかもこんなに鮮やかな赤い色に染めた覚えはない。
それに···、辺りを見渡してみれば部屋も違う。
1Kのアパートに住んでいるのに、やたら広くて豪奢な部屋では無かった。
頭が混乱する。
アンティークな家具や天蓋付きのベッド。
これはもしや今どき流行りの悪役令嬢に転生したのだろうか····、とドクドクと早る胸を押さえた。
「深呼吸よ···深呼吸····」
スーハー、スーハー、と繰り返して、ゆっくりと目を開けた。
···今、ものすごく聞き覚えのある声を出した気がするのは気のせいだと思いたい。
─コンコンコン。
「お嬢、お目覚めでいらっしゃいますか」
シーツをギュッと握り締めた所で、軽快なノック音と共に部屋に入って来たのは、1人のメイドだった。
(···誰かしら)
全く持って覚えていない。
優雅な所作でベッドに近づいたメイドは、そのまま笑みを浮かべて挨拶をした。
「おはようございます。フレイお嬢様」
「え、?あ、おはよう」
(フレイ?フレイって言った?)
「昨晩は夜遅くまで旦那様の帰りをお待ちしておりましたものね。旦那様はダイニングでお待ちしておりますよ。手早く支度をしてしまいましょう」
「えぇ、お願い」
嫌な予感がする。
メイドは夜遅くまで起きていた私がまだ寝坊けているものだと思っているのか、やんわりと私をベッドから立たせた。
ドレッサーへ向かう途中で、自分の姿は見たくないと心が警鐘を鳴らしている。
「さ、お座りください。本日は三つ編みのハーフアップにいたしましょう」
鏡をわざと見ないようにして引かれた椅子に腰掛けた。
「っ、···!?」
ゆっくりと目を開ける。
写し出されたのは、赤い髪、グレーの瞳、幼い顔立ちをしているが、やけに見覚えのある顔が写っている。
「どうかなさいましたか?ふふ、まだ微睡みの中にいらっしゃるのかしら」
サラサラと髪を掬い、ブラシで丁寧に髪を梳かれる。
鏡に写る自分の顔。
グレーの瞳と目が合った瞬間、頭の中に一気にフレイ・アルスターの人生が流れ込んで来た。
─コーディネーターのくせに、馴れ馴れしくしないで!
─ パパの船を撃ったら、この子を殺すって!そう言って!
─ あんた…自分もコーディネイターだからって、本気で戦ってないんでしょう!
─ 戦争って嫌よね…早く終わればいいのに。
─コーディネーターなんて、みんな死んじゃえばいいのよ!
─本当の私の想いが、あなあを守るから···。
昨夜の夢は、これだったのだと腑に落ちた。
身を焼かれる感覚は、痛さをも飛び越して無に変わり、キラを守ると告げた彼女。
非業の死を遂げたフレイ・アルスターの人生は、酷く悲しくて、苦しくて。
そんな彼女に転生してしまい、密かに絶望感を抱いたのは言うまでも無い。
何でフレイ・アルスター?
もっと無難にミリアリアとかあったじゃない!
作中悪女と言われるポジションに転生を果たしてしまった
私事フレイは、メイドにされるがままに身支度を整えたのだった。
今の私は13歳。
二年後、私は父を失い自身も戦死する。
❖
メイドに連れられてダイニングルームへ着くと、ジョージ・アルスター、フレイの父が席に座っていた。
どうやら情勢の確認をしていたようで、ノートパソコンを私(フレイ)の姿に気が付いたと同時に閉じた。
優しく穏やかな笑みを浮かべるフレイの父、ジョージ。
「····パパ?」
「おはよう、フレイ。昨夜はすまないね、帰りが遅くなってしまって···おや、どうしたんだい?顔色が冴えないようだが···」
「旦那様、フレイお嬢様は昨夜、余程怖い夢を見られたようで、いつもでしたらウキウキした様子で身支度を整えていらっしゃいますのに、どうやらまだ怯えていらっしゃるようで」
「そうか。報告ありがとう。おいで、フレイ」
フレイの精神がそうしたいのか、私は差し出された腕に飛び込んだ。
「パパ!!」
「おやおや、本当にどうしたんだい」
自然と滲み出る涙は拭えない。
パパが生きてる!!
【あの時】の絶望感が押し寄せると同時に、愛おしい人がこうして目の前にいると言う安心感と幸福感。
「フレイ」
和やかな声音で呼ばれて、優しく頭を撫でられる。
言ってしまいたい。
夢の中身を。
だけど、言ってはいけない気もする。
味わった大切な人を亡くす絶望感。
どうしたらいいのか分からなくなる、叫びたくなる感情。
怒り、憎しみ、憎悪。
もう二度と、あんな気持ちは味わいたくない···。
必死だった。
この手を離したら、もう二度と会えなくなるんじゃないかなって。
【フレイの感情】が私の心の内で爆発していた。
「パパ、···どこにも行かないで」
「これは、困ったなぁ···」
ぎゅーっと抱きしめたまま、酷いわがままを言った。
それにはジョージも苦笑いしていたが、可愛い可愛い愛娘の為か。
「フレイ、パパは今日は早く帰って来るから。それまで我慢出来るかい?」
「·····」
私は首を振る。
パパが困ってるのに。
「お嬢様···お嬢様、お寂しいでしょうが、お嬢様にはこのエマがついております。本日のご予定は全てキャンセルして、エマと一緒に過ごしましょう」
見かねたエマ、メイドが私の肩にそっと手を添える。
母が亡くなってからと言うもの、エマは母のように私(フレイ)に寄り添ってくれている。
私はチラッとエマに視線を向けた。
差し伸べられたエマの手。
柔らかい視線は我が子を見守るようだ。
分かってる。
数時間会わないだけ。
パパは必ず帰って来る。
「パパ、早く帰って来てね」
「もちろんだとも」
ジョージはフレイの頬に、キスを残した。
❖
朝食を摂った後で、私は自室のテラスで日記を取り出した。
【フレイの感情】が酷く重い。
気持ちを落ち着かせようと、出された紅茶を一口のんだ。
のどかな昼下がりの日常が、二年後には崩壊するなんて正直想像出来ないわ。
私は時系列に覚えている事を日記に書き出した。
今は13歳。
物語が始まるのはだいたい2年後。
私がこのまま何もしなければヘリオポリスの学生になり、流れのままに物語が進んで行くだろう。
そして、炎に焼かれて死ぬ運命だ。
けれど、最愛の父親を亡くしてから一年以内に自身もフレイも死んでしまうのは如何なものだろう。
これぞ解せぬ···。
解せぬ過ぎるわ!
自分の運命に頭を掻きむしりたくなる、やらないけれど。
まず、この運命から逃れる為にはどうしたらよいのか。
①ただのんびりお嬢様として生きる。ヘリオポリスにも行かないし、家庭教師ならばわざわざヘリオポリスに行かなくても良い。ヘリオポリスに行ったら必ず巻き込まれるのは必至。でも、パパは助からない。
②なんなら歌姫になって平和の歌を歌う。いやいや、私の柄じゃないし、それはラクス・クラインの立ち位置だ。···それに、フレイ(私)はラクス推しでもある。叶う事なら生で見たい!ぶっちゃけ仲良くなれたら万々歳!···と、今はそれは置いて置こう。
③地球軍に入隊する···これかな?パパは確か地球軍のお偉いさんで外務次官だったはず。軍に志願すればもしかしたらパパを守れるかもしれない。物語を覆す事も出来るかも知れない。何もしないで後悔するより、やる事やって後悔する方が余程ましだわ。それに、パパを救う事、それが最優先。フレイの人生は、パパを亡くした事がきっかけだ。それさえ覆せれば···。
これだ。
③番に絞るしかない。
そうなれば後はパパの説得だ。
しかし、問題はフレイを溺愛しているパパが簡単に軍の志願を許すはずが無い事だ。
猛烈に反対されるのは容易に想像できる。
だけど、ここで折れたら二人とも死んでしまうのだ。
命がかかっている以上、私は折れるつもりは毛頭ない。
さて、どうやってパパを説得すれば納得してくれるのだろう。これは大きな問題だわ···。
「はぁ」
「お嬢様、お茶のおかわりはいかがでしょう?」
朝から冴えない私をみかねてか、エマがお茶を淹れてくれる。
「···ありがとう」
「何か、お悩みでしょうか。差し出がましいですが、もし宜しければエマにお話ください。お嬢様、私はフレイお嬢様の憂いが晴れる事を、エマは望んでおります」
「···エマ」
「はい」
「···、どうしてもやりたい事があるのだけど、パパには大反対されると思ってるの。だけど、どうして諦め切れない事なのに、どうやってパパの納得いくように説得していいのか分からなくて···」
「そうでしたか···。お嬢様、まずは旦那様に素直なお気持ちを打ち明けて見たらいかがでしょう?それから旦那様の言葉を受け入れた上で、まず、どうしても諦め切れない旨をお伝え申し上げて見たらいかがでしょうか?フレイお嬢様のお顔が曇ってしまっているのは、そのせいなのでしょう」
まず、話す。
「まだ生きてるんだろ?なら話せるじゃないか」と、オーブのお姫様の声が脳内に響いた。
「そうよね。まだ、お話が出来るのだもの···わかったわ。ありがとう、話てみる!」
私は、ドキドキする胸を押えて、パパの帰りを待った。