ガンダムSEED-廻る運命の中で-   作:チェストベリー

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説得

約束した通りに、パパは仕事から早く帰って来てくれた。多忙な立場なのに、朝は泣いてしまって困らせた挙句に、わがまままで言ってしまった。

 

パパ、ごめんなさい···。

 

「おかえりなさい!パパ」

 

私はエントランスホームで、パパの姿を見つけるや否や抱きついた。

 

令嬢としては失格だけれど、今は気にしない。

 

「ただいま、フレイ」

 

私の姿を見つけた途端、瞳を細めて微笑んだパパは、私に向けて腕を広げた。

 

あの時、この言葉を伝えられたらどんなに良かっただろう。

甘えるように抱きついた体を、パパが抱き締め返してくれた。

 

パパは私(フレイ)を溺愛している。

私が地球軍へ入隊すると伝えたら、どんな反応をするかしら。

 

正直、胸が不安でいっぱいだ。

 

怒る?怒鳴る(は無いと思うけれど)?失望する?悲しい顔をするかしら。

 

だって、パパはママを溺愛していたから。

今だってママが生きていたら、きっと仲の良い夫婦だったでしょうね···。

 

ママを亡くした悲しさと寂しさを知ってるパパ。

パパを亡くした悲しさと寂しさを知ってる私。

 

「ねぇ、パパ···夕食の後に、お話があるの」

 

「···、フレイ?」

 

パパがゆっくりと私の肩を掴んで離した。

どこか不安そうに私を見つめるパパ。

 

「まさか···、まさかボーイフレンドが出来たのか!?」

 

(ちっがーーーーうっっっ!!)

 

微かに震えるパパの手の感覚。

パパの眼圧が半端ない···。

 

(まぁ···そうよね。フレイだって13歳とは言え年頃だものね···パパしては普通の反応よね···)

 

「パパ、違うわ」

 

私が困ったように笑みを浮かべると、パパはキョトンとした表情をした後で、「そうか、そうだよなぁ···」と誤魔化していた。

 

「そうか。···おほん、早合点したようだ。さ、フレイ、ダイニングルームへ行こうか」

 

 

 

 

(···美味しい)

 

ご飯が美味しいだなんて、いつぶりかしら。

大好きな人とのご飯が、こんなに楽しくて嬉しくて、温かくて。

 

「フレイ、どうしたんだい?」

 

気が付けば私は自分の頬に涙が伝っていた。

 

「お嬢様、如何なさいました?」

 

心配そうに私を見るパパとエマ。

 

「ううん、食事が···おいしくて。パパと食べるの久しぶりだったから」

 

「···。すまないね、フレイ···泣かせてしまう程、寂しい思いをさせてしまって」

 

しまった!

これじゃあ私がパパ恋しさに泣いてるみたいじゃない!

落ち込ませたい訳じゃないのに。

ファザコンが過ぎるわ!

あ、えと···確かに寂しかったのは本心なのだけれど。

これでは誤解だわ。

訂正しないと!

 

「パパ!そうじゃないの!···そうじゃなくて、パパがお仕事大変なの、知ってるから、その···」

 

「何、これからはもっと早く帰って来るとしよう」

 

「無理しなくて大丈夫だから」

 

「いいんだよ、私がそうしたいからね」

 

「···、パパ」

 

あー、やっちゃったわ···。

エマと言えば私の後ろで控えて笑ってるし···。

 

 

 

 

夕食が終わり、私はパパの書斎に来ていた。

あの話をするのに、めちゃくちゃ気が重たい。

でも話さなきゃ始まらない。

 

私はコンコンコン、とパパの書斎の部屋のドアをノックした。

 

「フレイかい?」

 

「えぇ」

 

「入っておいで」

 

私が部屋に入ると、パパが「こっちに座りなさい」とローテーブルを挟んだ向かい側のソファに座るように促した。

 

私が来る前に運んで貰ったのだろう、ローテーブルの上には紅茶の注がれたティーカップが置かれていた。

 

ゆらゆらと揺れる湯気。

 

カップを覗くと、私の顔が写った。

意を決してはいるけれど、迷いのある顔をしている。

 

「大事な話しなんだろう?言ってごらんなさい」

 

パパは私を見越してか、私が話しやすいように口を開いた。

 

私はピンクのワンピースのスカートをギュッと握りシワを作った。

 

言わなきゃ、言わなきゃ!!

 

「······、ぱ、パパ」

 

喉が緊張で乾いて、くっつきそうだ。

 

「ん?」

 

「私、·····ち、地球軍に····し、志願しようと思うの」

 

「·····」

 

言った瞬間、ピーンと緊張の冷たい糸のよう物が部屋に張り巡らされたような気がした。

 

チラッとパパを見れば、目を丸くして固まっている。

 

緊張からの焦燥感で、心臓がバクバクし口の中がカラカラに乾く。

 

このシーンとした静寂が恐怖感を煽った。

 

「···、フレイ、それなりの理由があるのだろう?言ってごらんなさい」

 

「···パパ、」

 

やっと言葉を飲み込んだパパからの声音は、かなりの緊張を孕んだ物だった。

 

膝の上で握った手のひらに、自分の爪が刺さりそうな程私は緊張している。

 

理由は、パパを死なせない為だ。

 

私はこの先に起こる未来を知っている。

 

バカ正直に言ったとして、それなりの強い意志がなければパパが納得するはずがない。

 

「···、私。このままで良いのかなって思ったの。これから先の事を考えたら不安なの。ナチュラルとコーディネーターの戦いはいつ終わるのか分からないまま。···そんな中、もしかしたらパパが死んじゃうかもって考えたら···」

 

アークエンジェル内でモニターに映し出された、パパの乗る艋が大破する場面が脳裏にフラッシュバッくした。

 

ダメだ。

 

泣いちゃダメだ。

 

声が震える。

 

「フレイ···」

 

─もう二度と、パパを失いたくない。

 

私は涙を拭いて前を、パパを真っ直ぐに見つめた。

 

「だから私、地球軍に志願します!パパが私達を守ってくれてるなら、私だってそうしたい!反対されても私折れない!折れるつもりなんて毛頭無いから···、お願い···私にも大切な人を守らせて」

 

「······、はぁー···」

 

パパからの深いため息。

 

呆れられた?

 

失望された?

 

でも、私は諦めるつもりはない。

 

あんな想いは二度と味わいたくない。

 

「で、···フレイ。志願するからにはそれなりの知識が必要なのは分かっているね?」

 

「はい」

 

「では聞こう。フレイは今まで何を勉強して来た?身体は作っているのかな?」

 

ひくっと、私は息を呑んだ。

 

地球軍に志願すると息巻いていても、フレイに転生して1日、私は今まで何もしていない。

 

「これから、これからやるわ!」

 

「フレイ、生半可な気持ちで軍に志願するのであれば止めときなさい。キミは女の子だ。それに、フレイにはサイ君から婚約の打診が来ているんだ」

 

「···は、サイ!?」

 

サイって、あのサイ・アーガイルよね···?

いくら幼なじみで仲がいいからって、もう婚約?!

サイには悪いけれど、今そんな恋する乙女とかやってらんないのよ。

 

サイよりも今はパパが大事だから。

 

「サイとは確かに仲は良いけれど、婚約は断るわ。私、今それどころじゃないの。男の子とか女の子とか、みんなだって私くらいの子達だって戦ってるんでしょ?私、諦めるつもりはないわ!」

 

こうなったら、勉強に筋トレよ!

今夜は遅いから明日の朝からみっちりしてやるわ!

決めたら一直線よ、フレイ・アルスター!!

 

「わかった。ならこうしよう。キミはヘリオポリスに行って、勉強して来なさい」

 

「···、えっ?」

 

ヘリオポリスって。

ガンダムSEEDの舞台になる所じゃない。

今から入学したらオチオチ巻き込まれて、軍人じゃない私は原作ルート必至でパパもろとも自滅じゃない!?

 

「宇宙工学から色んな分野に長けて勉強出来る」

 

そりゃそうだ。

主人公のキラがいるくらいなんだし。

 

「ここじゃダメなの?」

 

「もちろん、無理にとは言わない。けれど、独学でどれだけ覚えられる自身がある?」

 

「···えーと」

 

「時期的にも来年から行けるじゃないか。私はヘリオポリスを進めるが···それと、言いにくいんだが、軍の志願は15歳からと決まっているから、フレイの年齢だとまだ軍に志願は難しいんだよ。そうとう気持ちは強いようだがね···」

 

マジですか、パパン···。

私の説得は意味が無かったと言う事ですか···。

 

いえ、まだやりようは沢山ある。

諦めさえしなければチャンスはやって来るはずよ!

 

「わかったわ。パパ···、私、ヘリオポリスに行く」

 

もちろんその前に、頭に叩き込める知識は叩き込んでやるわ!筋トレだって···!

 

あの苦しい想いをするのな、乗り越えられるわ!

 

 

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