小さな頃は活発なお転婆だったビアンカはしかし、長じてからは優しくて麗しいレディとなっていた、それは外観に限った話では無くて、内面もまたそうだったのだがそんな彼女は幼馴染で初恋の男性である“リュカ・グランバニア”と無事にゴールインを果たして自身の思いを成就させたばかりか、その後も試練の連続だった使命の旅路を夫と共に無事に乗り越え、晴れて大団円を迎えるに至っていたのだ。
そんなビアンカには今、リュカとの間にもうけた6人の子供達がいた、即ち長子であるティミーとポピーの他にも次子であるレックスとタバサ、そして末子のテンとソラである。
驚いた事に彼等は皆、双子として生まれて来ており、しかも揃いも揃って母親譲りの金髪碧眼を備えていて、更に言うならば全員が“天空の一族”の血筋に連なる者達であった。
「グランバニアの第3王朝はリュカ様の代で終わりですかな?」
「第4王朝の初代はティミー様が務められるでしょうね、“天空の一族”の国王として!!!」
学者達を中心として、家来の内の誰も彼もがまことしやかにそう噂し合っていたモノの、当事者のリュカは特に気にしてはいなかった、“形あるモノはいずれ消え去る”と言う故郷エルヘブンの教えを、彼はよく理解していたのだ。
だけど。
「・・・・・」
(せめて私が。黒髪黒眼の子供を産んであげる事が出来ていたなら・・・!!!)
リュカの
“回復呪文”を掛けられながらとは言えども際限無く繰り返された夫との、烈々たる“ウテルスセックス”による影響だろう、ビアンカの子宮は一度は完全に壊れてしまい、生殖機能を喪失してしまった代わりに凄まじい迄の超悦を放つ最大の性感帯として生まれ変わっていたのである。
しかし女性器や胎盤を傷付けられながらも彼女が苦痛を得たり、死なずに済んで助かったのはひとえにリュカが常日頃から行っていた、性器同士の結合を利用して自身の“気”と“精神エネルギー”とを回復呪文に乗せて直接、子宮に送り込ませる“癒しの技法”のお陰であった、それが奏功して辛うじて“生殖器の性感帯化”と言う“内臓系統の変質”だけで容態を落ち着けたビアンカはそれから暫くの間、特に何事かあるわけでも無く至って平和な日常を謳歌する事が出来ていたのだ。
「ゴメンよ?ビアンカ。僕が無理をさせてしまったから・・・」
「ううん、そんな事無いわ!!?私だって望んでいた事だったし。それに私、あなたにあんなに激しく求められて凄く嬉しかったものっ❤❤❤❤❤」
流石に申し訳なさげに言葉を掛けて来る青年国王に対して愛妻王妃が優しく笑って応じるモノの、果たしてその思いに嘘偽りは決して無く、最愛の夫と睦み合いながら過ごす事が出来た彼女は至って幸せだったのである。
そもそも論として。
既に6人もの子供がいたリュカもビアンカも今更生殖機能が失われても取り立てて困る事は無く、また自身の大切な花嫁の身体の具合がすっかり安定している事を見て取った青年国王は、彼女自身が強く望んでいた事も手伝って、その後もますます激しい“子宮姦”をこなし続けていったのである。
ところが。
「リュカ、それにビアンカも。夫婦が愛し合って繋がり合って。その結果として二人の子供を成すのはとても幸せな事なんだよ?」
ある日、その事態を重く見た天空人の“プサン”がどこからともなくやって来ると、手のひらを愛妻王妃の下腹部に当てて“神妙の光”を解き放ち、その神聖にして摩訶不思議な能力で“天空の花嫁”の胎盤を回復させ、みるみるうちに女としての機能を蘇生させてみせたのであった。
「有り難う御座います、マスタードラゴン!!!」
「この御恩は忘れません!!!」
帰り際に、見送りながらそう告げて来た二人に対してプサンは人差し指を口に当てると“黙っておけ”と言う仕草をし、グランバニア城を後にしたのだが、この“奇跡”の後のリュカとビアンカは余計にその仲睦まじさを増しており、殊にビアンカのリュカに対する“甘くて確かな激情”は一層燃え上がるばかりだったのだ。
(なんとしても夫の子供を、リュカの子供を産んであげたい。それも出来るのならば黒眼黒髪の、エルヘブンの血を色濃く受け継ぐ子供を・・・!!!)
己の事を省みて痛みに打ち拉がれるよりも、だただひたすらリュカの事に思いを馳せる天空の花嫁。
夫に寄り添い続けては彼と深くまで愛し合う事を、そしてそんな二人の心と身体の結実をその身に宿す事を全力で念じ続ける愛妻王妃であったが、考えてみれば彼女は何時だってそうだった、何くれとなく気配りが出来て心優しいビアンカは、自分の事よりも大切な人の事を常に最優先で考えてしまう性分だったのであるモノの、それが一番最初に発揮されたのが花嫁選びの時であり、二番目がデモンズタワーに掠われて来た時だったのだ。
幼い頃からリュカに淡い思いを抱いていた彼女は大人になって彼と再会した折に、より逞しい好青年となったかつての幼馴染に対してハッキリとした恋慕を募らせたが、当時の彼は結婚相手を決める為のレースに参加しており、聞けばそれは南にある大都会の首領“ルドマン”の娘であると言う。
“サラボナの白薔薇”と呼ばれていたフローラの噂は山奥の村で父親であるダンカンの介護に勤しんでいたビアンカの元にも届いており、そんな清純で美しい女性と一緒になれるのならば、その方がリュカにとっては幸せでは無いか?と考えたのである。
それだけではない、見事に花婿に選ばれた暁には代々ルドマン家に伝わる家宝である“天空の盾”がもらえると言う特典付きであり、リュカの父パパスの志と無念な最後を知る身となったビアンカは、ますます自分の思いを彼に伝える事が出来なくなってしまったのだ。
しかし。
(リュカ、好き。大好き、ううん。こんな言葉では足りない位に・・・っっっ!!!!!)
“抑えなければならない”と言う自制心とは裏腹に、彼への思いは募るばかりであった、“水のリング”を巡る船旅の途中で彼女は自室で密かに何度泣いたか解らなかった、何度嗚咽を漏らしたかも解らなかった、それほど一途にリュカの事が好き好きで堪らなかったのである。
そんなビアンカの純粋にして強すぎる慕情は旅の途中でついつい、漏れ出して来てしまっていた、それは彼女なりの心の叫びであり、慟哭だったのであるモノの、ところが。
花嫁選びの時にリュカは、迷わず彼女の前まで来て手を取り、プロポーズをしてくれた、その時の温もりをビアンカは生涯忘れまいと誓った、そしてそんな彼女が。
「ねえリュカ。そっちに行っても良い?」
ハッキリと“自分はこの人を愛しているのだ“と悟ったのは、結婚してから後、新婚旅行でアルカパの宿屋に宿泊した際だった、夜中に起きて物思いに耽っていた愛妻に気が付いた青年が“眠れないのかい?”と声を掛けて来たのだが、その折ビアンカはリュカに尋ねた、“なんで自分を選んでくれたのか?”と。
そうしたら。
「君のことが大好きだったからだ、ずっとずっと昔から。誰よりも何よりも愛してる・・・!!!」
「・・・・・っっっ!!!!!」
その言葉を聞くと同時にビアンカは心の底からこう思った、“ああ、私は”、“この人の為ならば死んでも良い!!!”と。
そして言った本人のリュカもまた自分の気持ちを口に出した刹那に悟ったのである、“そうか、自分はこんなにもビアンカの事を愛していたのか”と、“この人の為ならば自分は死んでも構わない”と。
それは二人に初めて自分以上に大切な存在が出来た瞬間だったのであるモノの、それからー。
時は流れてリュカの故郷のグランバニアに到着し、彼の子供を産んだと思ったら直後に
しかし。
内心では心細さと
要はそれだけ必死になってなり振り構わず彼女の事を追い掛けて来た、と言う次第だったのであるモノの、それを聞いた時にビアンカは“なんで来てしまったのだろう”と思った、彼には安寧と幸せの中でいつまでも微笑んでいて欲しかった、“ただただひたすら眩しくて大切な
(リュカ、来ちゃダメ。あなただけでも生き延びて?私の事はもう忘れて・・・)
だけど。
本心では助けて欲しいと願いつつも、それをググッと堪えてやがて姿を見せた傷だらけの夫に対して“自分の事は忘れて逃げて!!!”と告げた彼女にリュカは語った、“君一人守れない国王が、一体誰を守れるって言うんだよ”と。
「・・・・・っ。リュカ、あなた!!!」
「それに・・・。僕は君の為ならば死んでも良い。君の為に命を懸ける男が一人ぐらいいたって良いだろっ!!?」
「・・・・・っっっ!!!!?」
「どうせ死ぬなら、君の為に死ぬ。そこで見てろ、ビアンカ!!!」
そう言うが早いかリュカは少しも怯える事無くジャミに斬り掛かっていった、その言葉にビアンカは感動すると同時に喜びに打ち震えた、“この人も自分と同じだったんだ”、“こんなにも私の事を愛してくれていたのだ”と涙すら流すが、しかし。
ジャミの体は鉄壁のバリアーで守られており、最初は彼等の攻撃を受け付けなかった、徐々に劣勢に追い込まれて行き血と汚れに塗れて行く仲間達を、そして何よりリュカの姿を見た瞬間に、ビアンカはいても立ってもいられなくなった、“このままではリュカが殺されてしまう”、“絶対にダメ、それだけは!!!”。
気付いた時にはビアンカは走り出していた、この時の彼女にあったのはジャミへの憎しみでも無ければ恐怖でもない、ただただ“夫を救う”、“殺させはしない!!!”と言う純然たる思念の塊と化した花嫁の姿であった。
敵に対する害意や死への恐れを軽々と越えてしまうほどにまで、ピュアで一途な彼女の思いは一気に自身の中に眠っていた“天空の力”を呼び覚ました、どこまでも深くて激しいリュカへの
結果としてビアンカの破邪の光り輝きの援護を受けたリュカは立ち直り、父の仇でもあったジャミを討ち果たす事が出来たのだが、そんな彼はその後も彼女の事を何くれとなく助けてくれた、石にされて
それは冒険が終わって以降も何も変わらず続いていった、子育てで大変な時期に、ついついリュカに当たり散らしてしまった時もリュカは絶対にビアンカに暴言を吐いたりめげたりせずに、常に彼女を見つめ続けてフォローし、尚且つ心を配り続けてくれたのである。
そんないつまで経っても変わらない彼の、妻への情熱と真心はビアンカをしてそれ以上の愛慕と恋意とを彼自身に抱かせ、徐々に彼女を狂わせていった、今やビアンカは夫に四六時中ベッタリな上に依存体質になってしまい、彼がいないと寂しくて寂しくてどうにもならなくなってしまう。
「ねえあなた・・・」
「何さ?ビアンカ」
「私ね、あなたに出会えた事を神様に感謝しているのよ?絶対に何処にも行かないでね?絶対に私を離さないで・・・」
そんな自身の本心を、ソプラノの声に乗せて夫に届けた愛妻王妃はそのまま彼に抱き着いて愛しそうに頬擦りをするが、あの時。
ジャミの元から救出した彼女を、そして大神殿から助けられた直後、10年振りに石像から復活を遂げたビアンカを、彼は何も言わずに黙って抱き締めてくれた、ただただ“良かった”と、“君が無事で生きていてくれて”と心の底からそう告げて。
それはどんな愛の言葉より、そして甘い囁きよりも遙かに確かで暖かくて、何より彼女が欲していたモノだったのである。
「ゴメンよ?ビアンカ。僕と結婚したばっかりに、こんな目に・・・」
そうして晴れてグランバニア城に一家揃って凱旋した折、オジロンに呼ばれて彼女の元から離れる際に泣きながら自身に詫びて来た夫に対してビアンカはとても強くて深い優しさを秘めた眼差しを彼に向けてこう言ったのだ。
“私はどんな事があってもあなたに付いて行くからね?”、“愛してるよリュカ”と。
「・・・・・っ。有り難う!!!」
リュカにはそれだけで充分であり、そしてそんな彼の気持ちにビアンカは堪らない程の激情と愛しさの衝動が自分の中でフツフツと湧き上がって来るのを感じていた。
その夜に。
リュカは10年振りにビアンカを抱いた、一刻も早く彼女を抱きたかったし、彼女も抱かれたいと
その日は朝からリュカは王宮に居なかった、では何処に行ったのか、と言えばそれは“グランバニア王室秘密離宮”の書斎に籠もって自作の物語を書き連ねている最中であったのだ。
そして今現在、彼の元には来客が訪れていた、誰あろうそれはリュカの長男にして伝説の勇者であるティミーであったのだが、彼は久方振りに城へと帰還した父の元へとあくせく通い、改めて剣や心身の修業を付けてもらおうと考えていたのである。
「ねえお父さん」
「なにさ?ティミー・・・」
「小説を書いているんでしょ。一体どんなジャンルのモノを書いているの?」
「・・・小説と言うよりも、自分の伝記かな?今までの人生や旅のこと、そこで出会った人々や起こった出来事。そして自分が学んだり気付いたりしたことなんかをなるべく正確に書き連ねているんだよ」
長男の言葉に落ち着いた口調でそう応えた青年国王だったがその日、彼は敢えて愛妻王妃から“逃げていた”、別に彼女が嫌いになった訳では無いが、しかし彼だってたまには1人でのんびりと過ごしたい時があるのである。
何しろリュカが1人でいる時は必ずと言って良い程“好き好きオーラ”を全開にしたビアンカがやって来る。
そうして彼に抱き着いては自身の身を擦り寄せてキスをせがみ、また或いは強要したりしてたっぷりと甘えてくるのだが普段はそれを苦にしないリュカでも、やっぱりたまには静かに自分自身と向き合って心に潤いを持たせたい時があったのである、己の気持ちや考えを整理したい時があったのである。
ビアンカはそれを夫が公務や修業の旅に出ている合間にこなすのだがリュカの場合はそうはいかない、だからこうやって城に帰還して国元に身を寄せている時に自分と対話を行うようにしていたのであったモノの、要するに日々強くなって行く花嫁の求愛行動に若干辟易していた、とまではいかなくとも少々お疲れ気味であったのだ。
「いつかさ?この話を元にしたファンタジー小説を書いてみたいんだよね、その時は大人向けの官能小説にしようかなぁ・・・?あっ。ちなみにヒロインとのエッチシーンはちゃんと取材を行ってから書く事にするよ、流石にお母さんとの事は書けないからね。僕達だけの秘密だから・・・」
「・・・ま、まあそれは良いけれど。でも、その。取材ってなんなのさ?」
「んん・・・?まあ幸いな事に、僕には女の子の知り合いがいっぱいいるからね?彼女達に協力してもらうのさ。それで夫や恋人に出会った時の事とか、してもらって嬉しかった事とか。はたまたエッチの最中の気持ちとか、要求なんかを事細かく聞くつもりだよ・・・」
「・・・・・」
(お、お母さんがこの事を知ったら。お父さんが殺されてしまうかも・・・っ!!!)
何気なくそう語る父王の言葉に、王子は軽い戦慄を覚えてしまうがもし、リュカが他の女子にちょっかいとまでは行かなくとも二人で会って話をしている場面などを目撃しようモノなら、母は父を殺して自分も死にかねない程の超愛と狂慕を夫に抱いていたのであり、それは息子達の目から見ても非常に良く理解出来ていたのである。
「・・・う、売れると良いね?そのファンタジー小説は」
「・・・まあね?ただ作家活動と言うモノは、相手があってのモノだから。だからどうしたって“虫が好かぬ”、“性に合わぬ”と言うのは出て来るんだよ。自分を支えてくれる読者の間でさえも“この話は良いけどこの話はダメ”と言うのがあるからね?まあその辺りはどうにもならないモノだからね」
「・・・・・」
「そうだな、そう言う意味では作者と読者と言うのは“夫婦の関係”に良く似ているんだよね?作者が父親で読者が母親だ、そして互いの間に生み出された宇宙がそれぞれの子供だと言う訳さ?」
「・・・子供。宇宙が?」
「人間は幻想的な世界や宇宙を創り出す事が出来るんだよ、みんな“神”の分け御霊を持っているからね。ちなみに小説と言うのはどんなに素晴らしい物語であっても、作者が書いただけでは単なる“妄想日記”に過ぎないんだよ。だけどその世界を受け止めて飲み込み、宇宙へと発展させてくれるのが読者なんだ。そうして生み出された宇宙は影響力を持つ、そうやってこの現実世界に顕現して行くんだよ・・・」
「・・・・・」
「人々の意識が集まるとね?それ相応の“エネルギー力場”が出来るんだよ、それは波動力学的にこの3次元世界に干渉する力を持ち始めるんだ。そうやって幻想の物語は確かなる宇宙となって時空の連続体の只中へと顕現して行くのさ・・・」
「・・・僕には何だか良く解らないよ」
「あはは・・・。その内に解るようになるよ、いやでもね?“波動力学”や“量子力学”の本を読みなさい。城の書庫にあった筈だ・・・」
「・・・勉強か。あんまり得意じゃ無いんだよなぁ」
「あはは・・・。君は体を動かす方が得意だからね?でも男の子の若い内はその方が良いんだよ、体もしっかり作れるし。第一体力や膂力も付くからね・・・」
そこまで話すとリュカは不意に物語を書く手を止めて、体ごと息子の方に向き直る。
「・・・ねえティミー、頼むからどうか強くなっておくれよ?皆の前では敢えて言うことはしないけれども、本当は“弱さ”って罪なんだ。弱い人間ほどその生き様は醜くて汚らしいし、いざという時に己や大切な人も守れない。そしてその結果として自分や周囲に悲劇や災厄をもたらす。負の連鎖を生み出す事になるんだ」
「・・・じゃあお父さん。一応聞いておきたいんだけれども“本当の強さ”とはなんなのさ?」
「“許せない事を許せる心力”の事だよ、簡単に言うと」
息子の問い掛けに、リュカは正直に答えた。
「まあ解りやすく言ってしまえば“優しさ”の事かな?ねえティミー、これは僕の持論なんだけど・・・。不思議なモノで本当に優しいヤツって言うのは必ず本物の勇敢さやガッツを持っているモノなんだよ、そう言う暖かで確かな精神構造こそが“強さ”なんだと思うんだよな。ただ一つ言っておくけど、自分が間違っていると思えばそれを認めて省みる素直さと謙虚さは常に持っていてくれよ?それが無いと力は単なる頑固さや横暴さの発露になってしまうからね、結局は自分や周囲を苦しめるだけのモノになってしまうから・・・」
「・・・・・」
“やっぱりお父さんからは”とティミーは続けた、“まだまだ勉強させてもらうことがいっぱいあるね・・・”とそう呟いて。
「僕はそこまで考えられなかった。確かに強さと暴力とは裏表と言うか、紙一重だもんね。うんと気を付けて用いるようにしなければならないんだね・・・」
「自分に優しくなりなさい、ティミー。自分に優しく出来ない人は他人にも優しくなれないからね?ただし時には厳しさも必要だよ?ちなみにこの場合の厳しさとは“誤魔化しや適当を認めない”と言う事だ、決して嘘を付いたり妥協したりしない事を言うんだ。それを良く覚えておいてね・・・?」
リュカがそこまで話していた時だった、書斎のドアの向こう側に突然人の気配を覚えて思わず彼が入り口に顔を向けると、それと同時に扉が開いて長い金髪を揺らしながら碧空の双眸で自身を見つめる絶世の美女が入って来る。
「・・・・・っっっ❤❤❤❤❤」
「・・・・・っっっ!!!!?」
「あ、母さん・・・」
彼女を見た時にリュカは“しまった”と思った、話に夢中で接近に気が付かなかったのであるモノの、その人こそ彼の愛妻にして天空の花嫁の一人である“ビアンカ・エル・シ・グランバニア”その人であったのだ。
「・・・・・っ。やっぱり、ここにいた!!!!!」
「あ、あはは・・・っ!!!」
“リュカ・・・ッッッ❤❤❤❤❤”とホッと安心したような満面の笑みを浮かべてそう叫び様、ビアンカは彼に向かって駆け寄って来ては倚子に座っている夫の上から腰を降ろして抱き着いた。
「もうっ、探したのっ。一体何処にいたの・・・?」
「あ、いやちょっとね?考え事をしながら離宮の中を、
自ら発した質問にそう答える夫の顔に愛しそうに頬擦りをすると、トロンとした熱い眼差しを彼に向けてジッと見つめる。
「・・・あ、あのね?母さん。僕、ちょっとお父さんと話があって」
「・・・ティミー。あなたにはお勉強があるんでしょ?それに剣の訓練だってしなければならない筈だし、ここに居る時間なんて無い筈だけど」
まだ父親に話し足りない事があったのだろうティミーが母に向かって不服を申し立てるが、するとそんな我が子に対して逆に“邪魔をするな”とでも言わんばかりの態度で辛辣な目線を投げ掛けつつ、ビアンカが言い放った。
「うぐ・・・っ!!!」
「下がりなさい、ティミー。お父さんが困っているじゃないの。早く下に行って・・・!!!」
「あ、あははっ。ティミー、お母さんもこう言っているから・・・!!!」
流石にリュカは決まりが悪そうにしながら我が子にやんわりと退室を促すモノの、本当はまだまだ話したい事がいっぱいあったのだろうティミーはそれでも無念そうに書斎を後にしていった。
「・・・もうっ。あの子にも困ったものね」
「あ、あははっ。そうだね・・・」
“いつまで経っても父親離れ出来ないのだから・・・っっっ❤❤❤❤❤”等と言いつつビアンカは恍惚とした顔で全身を密着させ、彼の
それが済むとー。
法力を操って、遠隔操作で書斎の出入り口に二重に鍵を掛け、リュカを独占して行った。
(・・・ティミー、結局君には言えなかったけれども。人は本来ならば誰もがみんな“光り”であり“強きモノ”なんだ、何故ならばこの宇宙には不要なモノは全く無い。全ては必要であり必然によって生まれ出で、引き起こされて来る現象なんだ。逆に言えばそれは“不要になった瞬間に消されてしまう”と言う事なんだ、そんな厳しい宇宙で存在出来ているのだから。光りを放てているのだから、君達はもっと自分に自信を持って良いんだよ?その事にいつか気付く時が来るだろう!!!)
愛妻による熱烈な求愛行為の最中でもリュカは少しの間、寂しそうに自分の元を去って行った息子の事を思っていた。