黙視の佐天は今日も線を視る。 作:寿限無
しかしそんな魔術師に前にとある少女が現れる。少女の身の上は憐れとしか言いようがなくその魔術師も少女を憐れに思い仮初の一瞬でも幸せな時を与えようと努力した。それはただ少女を憐れに思っていただけのはずだった。だが魔術師は先生と呼ばれるうちに彼の中で少女の存在は日に日に大きくなっていくことになる。
だが残酷か、別れの時は決まったいたのだ。彼は泣いた別れたくないと少女は一筋の涙を流して微笑んだ忘れたくないと。
その時、彼は気づいた。救おうとした少女はいつまにか自らを閉じ込めてしまっていた自分を救っていたのだと。
その日彼は信念を手に入れた。
彼の名前はアウレオルス=イザード、魔道を捨て、魔術とは異なった術を持つ錬金術の道を選んだ異端也。
彼の者の師はズェピア・エルトナム・オベローン、錬金術師の総本山であるアトラス院の院長にして使徒第十三位の吸血鬼である。
そして彼は当然と言わんばかりに救われた恩と信念から生まれた執念によって行動を始めた。彼の身は既に人の範疇に収まらない。
彼はすでに人間であることを諦めていた。
あの炎使いに包帯を奪われたせいで周りには線が視える。初めて見たときより頭痛はせず意識していれば線を薄くすることすら可能だ。これも彼らの記憶のおかげだろうか。
だがこのままというわけにもいかないので病院へと向かっていたとき不意に音が聞こえた。
ガシャンガシャン、そんな音が聞こえてくる。私が言うのもなんだが今は闇が支配する深夜近くだ。なのにこんな時間にどこのどいつがロボットなんて動かしているのだろう。
そんなことを思い音の方向へと向かうとそこには時代錯誤な全身鎧を着た集団が整列して立っていた。見事なまでの統率、歪みはなくどこからどうみても真っ直ぐに伸びる鎧集団は軍といったイメージがとても噛み合う。
そして私の感に引っかかるなにかとてもよくないもの。
次の瞬間、鎧の集団は光をはなった。
聖人の後光にも匹敵する美しさを持ったそれは同時に破壊性をもち目の前のビルを突き破り消えた。音をたてながら崩れいくビルに私は言葉なくその美しいまでの破壊性に心奪われていた。私が視たその光の線は彼らだけではない、どこか別のところにも繋がっている。それが集まり一つの線となっている。これほど美しい集合体を見たことはない。
しかしその破壊は意味を成さなかった。
「―――なッ」
逆再生をかけていくかのように戻っていくビル、時間逆行をしているかのような錯覚すら覚え騎士達は戸惑い僅かにだが陣形が乱れかけている。だがそこはプロなのだろう、言葉を失うほどの衝撃を受けた彼らだがすぐさま騒ぎが収まり新たに陣形を組み直している。そして旗を持った男が騎士の中でもひと際豪華な鎧をまとった隊長らしき人物に話しかけた。
―――ここでは聞き取りづらいか
音を立てないように闇に紛れて近づく。彼らの言葉が段々と聞こえ私はその会話に私は疑問を覚える。
「忌々しき錬金術師め…まさか黄金錬成を完成させていたとは……」
錬金術、私達にとってはオカルト分野ででてくる架空の能力。それをおこなう者は魔女や賢者が釜戸など大きな鍋をつかい薬草などを煮込んでいる絵などで知られているだろう。彼らが作り出す未知なる薬や賢者の石と呼ばれるものは人を不老不死にしたりなどで有名だ。しかしそんな夢物語に属する存在を真面目に語る彼らは何者なのだろうか。
「本部に援軍を要請しますか?」
「構わん黄金錬成とはいえたかがひ弱な錬金術師一匹だ…この人数ならどうとでもなる」
私は隊長が一瞬視線をそらした瞬間に中に入り込んだ。自分でも自分が何をしているのか理解に苦しむがこの機会を逃せば私はただの傍観者で終わってしまいそうだったからか
―――違う、私は寧ろ傍観者の立場を望んでいたはずだろう。
だが錬金術師というワードを聞いた時に感じた非日常に私は心を震わしたのだ。元の私を壊すようにして目の前の異変に立ち向かいたくなった。
―――もう私は傍観者じゃない!
それこそ今の私に正しいあり方だと、それが今の私なのだと
そして意思を得た体は明確な思いのうえで動き出す。目の前の未だ逆行しているガラスの破片、そしてつながっていく途中の線、それをなぞる。
「―――ッッァ!?」
私の背筋になにか硬いものが埋まっていくかのような感覚が支配しこれをなぞり続ければそれだけで自身の持つ肉体が失われていく。そしてなぞりきるとその悪寒はなくなり手にガラスの破片をもっている。それにシャツを切り裂いて持ち手が傷つかないようにしてから握り力を緩めたり強めたりしていく。
「うん丁度いい」
そして誰もいない一階をすぎ私は頂上を目指した。
そして階段に足をかけると頬を光の玉が掠る。そう先ほどみた光の塊を小さくしたかのような蛍光灯ほどの小さな玉が大量にそこにあったのだ。それがまるで蛍のように揺らめき美しき幻想を放っている。だが佐天に感傷に浸る時間などない。
「冗談ッ!」
当然光の玉は待ってくれるはずもなく弾丸のごとくこちらに向かってくる。目の前に光の壁がせまってくる。
探せ、この危機のひっくり返す可能生を、全てに繋がる『繋がり』を
左右上下極限の集中によってブーストされた時間の中で必死にソレを探す。
一秒、左を見て線はあるものの繋がる『繋がり』が存在しない。いや細い『繋がり』は存在するが決定的な一手を持つ『繋がり』は存在しない。
二秒、階段の4段先まで迫り来る死がより私を研ぎ澄ませる。一秒間の間に右までを視る。
―――あった
全てに連なる『繋がり』の線が
だが光はもう鼻先ほども近くに迫っている。視えたはいいがこのままではそれを断ち切れない。
「まにあわッ」
―――コロセ
頭の中で響く低い声、まるで獣の唸りのように響き私の中で繰り返し再生される。そしていつのまにか私は動いていた。
移動する視点、光の玉よりも早く動く体、そして夢で見た式にも志貴にも似つかない獣のような動き、気づけば階段の一番下に私の体は着く。
一瞬の戸惑いの末、目の前の光の玉全てに繋がる『繋がり』を目に捉え光の大群に体ごと突っ込んだ。私の視界は光にまみれ目の機能は光をこれ以上吸収しまいと瞳孔を細くするが必要以上に吸収してしまったせいか風景が見えなくなる。それでも視える線に今更ながら恐怖を抱くがすぐに視界が戻り周りが見え始めるとその恐怖も消えた。
「…コロせた?」
周りを見渡しても先ほどの光の玉はない。うまく断ち殺せたみたいだ。
「やったっ!」
非日常とまるで主人公のような活躍に興奮し思わず胸の目の前で拳を握りこむ。あぁこれが私の臨んだ非日常、彼らが体験した運命。
興奮で握りこんだ拳が震えしばらくこの余韻に浸っていたかったが今は急ぐ必要がある。あの騎士達がいまかいまかと突入の時をまっているのだから。
そして私は階段を上がっていく。
やっと落ち着いてきたのでまた投稿再開します。
投稿速度とクオリティ、それと文字数にはあまり期待できないですよー