産廃レ級 〜ゴミじゃなくて産業廃棄物〜 作:Верный510
いつか人を殺すことになるのは
深海棲艦になったときに分かってたはずなのに
「ほら、行ってこい!」
艦載機を投げ、発艦させる。
艦爆状態のをぶん投げるのは結構きつい。しかもこれが結構続く重労働。
さっきまでは偵察状態のやつを投げていたので、なおさら肩に響いた。
産廃レ級たちは、敵大規模輸送艦隊へ接近していた。
基地にまだ残っていた、予備のレーダーで位置を特定したのだ。
途中何度か見つかりそうになった偵察機は、全て深海蜥蜴艦爆が撃ち落としている。
「各艦、戦術は覚えているな?」
声が聞こえたかどうか定かではないが、それぞれが反応をしてくれた。
信頼できる。それは素晴らしいことだ。
戦術はこうだ。
まず曇天を利用して接近した艦爆が敵大規模輸送艦隊にある程度攻撃した後、レ級を筆頭にした打撃部隊が【あえて】姿を見せつつ砲撃をする。
敵艦隊がこちらへ意識を向けている間に、イ級達別働隊の魚雷で輸送艦を全て沈める。
我ながら、天才的だと思っているレ級。
それはそうとして、艦爆の視点を共有する。
敵大規模輸送艦隊であろう姿が見えた。どうやら通常の艦船もいるらしい。
すると、火花が上がった。市販で売ってる打ち上げ花火?みたいに。それが4本。
その火花は空中で形どっていく。
翼、胴体、プロペラ…と。
つまるところ、艦載機である。
「レ級!艦隊が見えた!」
どうやらとても近いところまで来ていたらしい。はっきりと艦影が見えた。
空中から火が落ちているのもよく見える。
「あの様子では艦爆は護衛機に邪魔されているようですね……。アレほど練度の高い空母が護衛にいたとは」
チ級が冷静に分析しつつ、左手の艤装を構えた。
リ級も、ル級姉妹も同じように構え、レ級も指先を艦影に向けた。もちろん指鉄砲で。
これまでは、自分と同じ体のよう使っていたから当たらなかったが、某電撃を放つ魔物とそのパートナーのようにすれば命中すると踏んだ。
「
轟音と共に砲弾が放たれた。
空気を裂いて飛翔する砲弾は、綺麗に艦影に吸い込まれていく。
直後に起きる、大爆発。
この距離では、艦娘にはまず当たらない。
だが相手は普通の艦船。的が艦娘と比べて大きいので、この距離でも命中したようだ。
続けて砲撃をしていく。
何発も、何十発も撃ちながら、少しずつ距離を詰めていく。
寄ってきた艦娘は、全てハル級が倒した。
左手につけた艤装も不具合なく使えているらしく、寄ってきた艦娘を吹き飛ばしている。
一行は着実に、艦隊へ近づいていった。
ーーーーーー
半場沈みかけな輸送船が燃えている。
重油が海を黒く染めて、辺りには酷い臭いが漂っていた。
おそらく人と思われるものから、何かの木箱や木片、中には椅子なんかが流ている。
ふと下半身が海中に没した艦娘が目にとまった。
まるでタンスから落ちそうになっている猫のように、海面を必死に引っ掻いている。
だがその努力も虚しく、その艦娘は海の底へと引きずり込まれていく。
そして水面に消えた。
「お、イ級達」
レ級は、別働隊として別れたイ級達を見つけた。しっかりと全員生き残っているのに、レ級は安堵する。
おそらくこの辺の艦は全てイ級達の魚雷が沈めたのであろう。
「レ級さん。どうしますか?」
「何を?」
「決まってるじゃないですか。漂流者を、ですよ」
涼しい顔で言い放つチ級。
そして指差す先には、ボートに乗って必死に逃げようとしている階級の高い人や、沈みかけの船にしがみつく水兵、木片に必死にしがみついている人がいた。
チ級は、静かにレ級の言葉を持っている。
もし、ここで人間を生き残らせた場合、レ級達の存在が大体的にバレる。
そもそも、レ級が何処ぞの第六駆逐隊の1隻よろしく「全員助ける」なんて言ってもみんな納得はしないだろうし、そもそも助けるメリットがない。
レ級は、通信機の言葉を思い出した。
『大規模輸送艦隊を殲滅してほしい』
多少カタコトだったが、確かにそう言っていた。
それを踏まえて、レ級は命令を下した。
「…………全員、殺せ」
指示を受けたチ級よりも速く、射撃を開始したモノがいる。
深海迎撃要塞である。
機銃型は船にしがみつく水兵や漂流している水兵へ撃ちまくった。
ほかの深海棲艦も、同じように漂流者へと攻撃をし始めた。
レ級はもう戻れない。
いや、戻る気もないのかも知れない。
断末魔や肉が千切れる音を聞きながら、レ級はその場で事が終わるのを待っていた。
深海棲艦は悪なんですよ。
深海棲艦になった時点で、悪の役割は避けられないもんです。