暴れウンピョウから始まる異世界生活   作:ネイムレス

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第八話

 前回のあらすじ。自称好敵手に教えられた狩場にて、最初の理不尽は何故か猫耳少女へ。割って入って助けて見れば、何時もと違って語尾無しの素直なお礼。おい、語尾どこやったと尋ねてみれば、今旗が折れましたと木こりさんに告げられる。そして、追及する暇もなく一列特急と化した猪の群れに襲われ有耶無耶となる。地獄の大量解体の後に現金化を済ませ、風呂上がりに仲間について考える青年。酷過ぎる性格な奴らでも、孤独を埋めてくれてるならそれでも良いかと結論付けた。だが、待ち合わせ場所の酒場では直立猫も猫耳少女も青年の事を待ちもしないでお大臣の大宴会。

 こいつらで本当に良いのだろうか。青年はそう思ったが、これが最底辺とは限らないのだ。

 

「ぼちぼち人を増やした方が良いかもしれやせんぜ、アニキぃ。三人だと持ち運べる荷物にも限界がありやすし、せっかくアニキの力で大量に狩っても持ち帰れないんじゃもったいねぇでゲしょう?」

「どうしよう、相変わらずお前がまともな事を言ってると、なんか胸がざわつくんだよな。普段からそれぐらいまともな言動なら、いちいち周りに警戒しなくて済むのに」

 

 それは一狩り終わってまったりとしていた時の事だった。何時もの酒場で酸味のある麦酒で乾杯して、運ばれてきて料理でお腹がこなれた頃合いに直立猫が急にまともな事を言い始めたのだ。青年はとりあえず思った事をそのまま口に出していたが、確かに荷物持ちが一人いれば楽になるかもしれないとも思う。

 そして同時に、異世界だとそう言う職に就いてる人は冷遇されているからなり手が居ないんじゃないかとも思うのだった。だからそれを素直に言ってみる。

 

「何言ってんすか、アニキぃ。ポーターや解体屋が冷遇されるなんて迷信でゲすよ」

「むしろ荷物持ちは優遇される。……にゃ。報酬アップに直結するんだから当たり前。にゃ」

 

 良かった。役立たず扱いされて追放される荷物持ちは居なかったんですね。どうせなら理由つけて追放されてえなぁ俺もなぁ、などと思いつつも青年はまた一つ異世界の常識と言う物を教えられていた。言われてみれば確かに、専属で荷物持ちしてくれる職業が役立たずになる筈は無い。色々と違うんだなぁと、しみじみと感心するふりをした。別に悔しかったわけではない。

 と言うかむしろ、この集団に新たなる仲間を加えて良い物かと言う方が気がかりとなる。

 

「でもさぁ、今居るのがゲスな畜生と倫理観狩人の猫科二人だろう? 分かってんだよ、どうせ三人目も異世界人でお楽しみする感じの、あげく猫科の同類なんだろ? パターンなんだよ、いい加減さぁ」

「げへへへ、またまた冗談きついでゲすよアニキぃ。アニキ、目がマジでゲすよ? ……アニキ? アニキ?」

「異世界人の事は確かに広く知られている。……にゃ。でも、実際に会った事ある人は少ないから大丈夫だと思う。にゃ」

 

 それはもう、青年は警戒していますとも。自身が異世界への来訪者である事も問題の一つだが、これまでの理不尽を考えれば新入りが第三の刺客にならないとは限らない。否、むしろその可能性の方が高い。現在進行形で金づるにされている青年としては、何か対策が無いととてもじゃないが賛同する気にはなれなかった。

 ああ、どこかに親切に対策を教えてくれる人は居ない物だろうか。

 

「青年、異世界人とお見受けした。ならば、冒険者ギルドの人員募集では種族制限を掛けるのです。信仰やその他の事情で組む相手を選ぶのは、比較的普通の事なので受け入れられる事でしょう。それではさようなら」

「後ろから!? そしてあまりにも的確!? もしかして近くで話聞いてたの!? ねえ!?」

 

 気が付くと背後に木こりさんが居た。青年が一人で大慌てするも、猫科の二匹は特に反応はしていない。そうしている間にも、まさかり担いだ木こりさんはえっちらおっちらと酒場から出で行くのであった。酒場の店主が冷やかしはお断りだよと言っていたので、もしかしたら本当に助言の為だけに現れたのかもしれない。一杯くらいひっかけて行けば良いのに、ありがとう親切な木こりさん。

 と言う訳で、一番の懸念については何とかなりそうである。

 

「よし、そう言う事なら善は急げだな。ちょっと今からギルドに戻って応募してくる。お前らは先に宿に戻ってて良いぞ!!」

「あっ、アニキぃ!! お勘定は割り勘にしときますぜぇ!! 何も今すぐいかなくても良いでゲしょうに。せっかちなお人でゲすねぇ」

「露骨に態度が変わった。……にゃ。そんなに猫が怖いなんて、おもしろ。にゃ」

 

 何とでも言うがいい。立ち去る青年は、猫科以外の仲間が出来るという事に全賭けしたのだ。

 早速、ひとっ走り冒険者の集まる施設に向かった青年は、飛び込むや否や人員募集を依頼する事にした。こればかりは猫科二匹に任せる事は出来ない。確実に自分の手で新人受付嬢さんをビビらせる勢いで書類を提出し、くれぐれも猫科以外でお願いしますと念押しをした。半泣きになったのは可哀想だが、人の命が掛かっているのだ許してほしい。

 そして翌日、冒険者の施設に顔を出すと直ぐに、条件の合う新入りが見つかったと言う知らせがもたらされたのであった。

 

「どうも、初めまして。丁度加入先を探して募集を出していたのですが、なかなか条件の合う所が見つからなくて困っていたので助かりました。どうか、よろしくお願いしますね」

「…………謀ったな、あの新人受付嬢……。謀ったな!!」

 

 とても丁寧にあいさつしてくれた新入りさんの姿に、青年は硬直しつつ顔を引きつらせる。その姿は、何と言うか酷く独特で、実に威圧的だったからだ。何時も人生舐め腐ったかの様な太々しい猫科二匹も、その異彩に青年の陰に隠れてがくがくぶるぶるしている。

 有体に言うとそう、洋画に出て来る殺人鬼みたいだと青年は率直に思っていた。

 

「全身赤黒いフード付きレザーコートとデカいリュック背負ってるのはまだ良いとして……、なんで室内でガスマスクしてんだよこえーよ……」

「ああ、怖がらせてしまいましたか、すみません。これは解体の時に身を守る為の物なんですよ。このリュックも見た目より物が入るから、解体物が沢山持ち運べるんです。それに、こう見えても力持ちなんで荷物持ちも楽々ですよ」

 

 こう見えてもと言うのは体格の事だろう。鉱人と草走りの血が混じっているので背は小さいが、走る速度と力は親譲りなのだそうだ。良いとこ取りするなら見た目を優先させろよと思ったが、青年は怖すぎて何も言えなくなっていた。だって、斧みたいな鉈みたいなでかい解体包丁担いでるし。

 そんな見た目やばい人は、徒党を組めるのが余程嬉しいのか声と体を弾ませている。まるで理想の相手に出会ったとでもいうかの様に。

 

「うふふ、嬉しいなぁ。珍しい種族の方と組みたいと思っていたのですが、まさか種族の違う獣人の方二人と異世界の方と組めるなんて……。半分諦めていましたが、私は本当に運が良いです。その代わり解体は任せてくださいね。大得意なんです」

「う、うん……。はい、こちらこそよろしくお願いします」

 

 防毒面の奥できらきらと瞳を輝かせながら言われてしまえば、それを断りきる度胸は青年には無かった。それは縋りついてくる猫科二匹も同じなので、大きな背嚢の新入りさんは満場一致で受け入れられる事となった訳だ。いやー、めでたいめでたい。めでた過ぎて、青年を含めた三人の眦には涙が浮かぶほどである。

 青年は強く思った。猫科じゃないけどそれ以上にヤバいのが来るのは反則だと。

 

 限界感じて新を求め、出会いましたは見た目殺人鬼。それでいて中身は丁寧だと言うのだから、世界の悪意が凄まじい。青年どころか猫科二人まで涙目で、果たしてこの出会いの先になにが待ち受けるかはこれからのお楽しみ。

 青年よ、楽をするには代償と言う物があるのだ。今が耐え時である。報われるかは、知らないなぁ。

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