彩葉の弟は様子がおかしい   作:真球猫

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真実視点です。


幕間2

 

 

 

 朝葉と初めて話して思ったことは『なんかやけにノリが合う男の子だな』だった。

 

 彩葉や芦花と話す時とはまた別の妙な気安さがあって、最初は少し警戒してたけどそれもすぐに必要なくなった。

 

 彩葉の弟って聞いて、実際一目見ればすぐにわかるほど似ていたのを見てすごく納得した。

 

 外見もそうだけど、内面がそっくりだったから。

 

 真面目が服を着て歩いてるような彩葉。

 でも実はノリが良くて少しおっちょこちょいで、それを必死に隠してる。

 

 一見チャラついてて適当そうに見える朝葉。

 でも根は真面目かつ責任感が強いのがバレバレで、それを指摘されるのを嫌がってそうだった。

 

 どっちも本当の自分を隠して生活してる。

 

 なんとも難儀な二人だ。

 ここに繊細な芦花を放り込めば、昼ドラも真っ青なドロドロストーリーの幕が上がることは想像に難くない。

 

 仕方がない、私が適度に息を抜いてやりますか。

 自分でも不思議なほどすんなりそう思った。

 

 

 

 

 予想通り朝葉とはすぐに友達になったけど、男子ということもあっていつも一緒ってわけじゃなかった。

 

 彩葉が何かと理由をつけて側に置こうとしたり、ある時期から芦花が頻繁に話しかけるようになったりして、関わる機会自体は多かったけど。

 

 芦花の気持ちには何となく察しがついていて、それでも容易に踏み込めなかったところに朝葉がフォローを入れてくれたらしい。

 非常にありがたいし友達同士が助け合っているのは素直に嬉しかった。

 

 でも二人とももう少し自分達が周りから、特に彩葉からどう見られているかを意識した方がいいと思う。

 あと彩葉もあれだけ露骨な芦花の態度にいい加減何かを感じ取った方がいい。

 

 私の友達がクソボケばかりで頭が痛い。

 

 二人がそんな感じだから、私と朝葉が二人きりになるなんてことはそれこそ数えるほどしかない。

 それでも気まずくなるなんて事はなくて、むしろ他の二人がいたらできないような気安いやり取りを楽しんでいた。

 

 そんな生活の中で、私には彼氏ができた。

 

 彼氏は他校に通っているということもあって、忙しい彩葉達に紹介する機会がなかなか訪れない。

 

 そこで、たまたま予定が空いていた朝葉に一足早く都合をつけてもらった。

 一応数少ない男子の友達ということもあり、変な勘違いをされないように早めに紹介しようという思惑もあった。

 

 そして訪れた朝葉と彼氏の初対面は……本当に酷かった。

 酷いは酷いでも、私が置いてけぼりになるという意味でだけど。

 

 自慢ではあるが、私の彼氏は優しい人だ。

 高校生離れした包容力がありつつ、少しつついただけで簡単に反応するいじらしさもある人。

 そしてなにより、人を見る目がある人。

 

 一目見て朝葉の生真面目さに気づいたんだろう。

 独特な言動や首の傷なんて気にもしないで、穏やかに会話は進んでいった。

 

 朝葉もそれが嬉しかったのか、上機嫌に話題を振って自分との共通点を探っていく。

 こういうところは本当に上手い、後学のために教えてほしいくらいだ。

 

 あれ?様子おかしくない?と思ったのは、何やら文学作品の話題に入った時のことだった。

 文学オタクの彼氏とこれで意外と優等生な朝葉は話が合うようで、教養で攻められると弱い私が少しづつ距離を離されていった。

 

 最初の内は私を気遣って有名なタイトルの話に限定したり、わかりにくいところは例え話を使って興味を持ちやすいように誘導してくれたりした。

 イケメン二人に接待されて少しだけいい気分だったのは内緒だ。

 しかも内一人は彼氏、勝ち組である。

 

 しかし、オタクという生き物は自分のボルテージが一定のラインを超えると、周囲の目や足並みを一切気にしなくなる愚かな習性を持っている。

 私は詳しいんだ。

 

 近現代文学にやたらと強い朝葉と、最近話題の作品を激推しする彼氏。

 飛び交う単語はどんどん専門性を増していき、三十分も二人と目が合わなくなってから耐えきれずに口を開いた。

 

「そんなに気が合うなら、二人で付き合えば?」

 

 彼氏が快く提供してくれた部屋の温度が一気に低下する。

 ……いや、そこまで脅かすつもりはなかった。

 自分で思っていたよりもこの状況に不満を覚えていたようだ。

 

 無言のままどちらからともなく正座の姿勢を作り始めた二人は、何故かポケットに入れていた飴やキャラメルを差し出してきた。

 君達、私に食べ物やっときゃいいと思ってない?……もらうけどさ。

 

 そこから二人は反省してくれたのか、全員に平等な話題で会話は進みその後和やかに解散した。

 

 そういった経緯もあって、彼氏と朝葉はそれはもう仲の良いマブダチになった。

 あんまり仲が良過ぎるので定期的にグループチャットで嫉妬の言葉を発すると、二人とも次の日にお菓子をお供えしてくれる。

 

 いやだからそうじゃない。

 私も混ぜろと言ってるんだよもらうけど。

 

 

 

 朝葉と私の関係は曖昧だ。

 もちろん友達ではあるけど、お互いに彩葉や芦花、彼氏との関係の方が深い。

 

 きっと彩葉や……多分芦花も。

 朝葉とは何かしら特別な繋がりとかがあるんだと思う。

 

 それが羨ましいとは思わない。

 だって、そんなのなくても朝葉は私の大切な友達だから。

 

 なんとなく気落ちした日に励ましてくれる、嬉しいことがあったら一緒に喜んでくれる、冗談に冗談で返してくれる。

 一つ一つは何でもないことだけど、その全部が私と朝葉で積み重ねた繋がりだ。

 

 だから、もしいつか朝葉が心の内側を見せてくれることがあったなら。

 その時は何でもないように受け入れてあげたいと思った。

 

 ……私ってこんなに情に厚いタイプだったっけ?

 最近色んな人から影響を受けている気がする。

 まあでも、悪い気はしなかった。

 

 

 とりあえず、今週末の彼氏と朝葉の国会図書館へのお出かけにはついて行こう。

 その日はデート行けないって言ってたよね?

 彼女放ったらかして何しようとしてんだ?

 

 今度はお菓子じゃ誤魔化されないからね?もらうけど。

 

 

 

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