【姫と従者のRadioDuo】 Now Live!
「というわけであーちゃん、次のお便りどうぞ!」
「はいはい、お姫様。えっと次は、これか。『姫様、アネさんこんにちわ。』こんにちわー」
「ハロー!」
配信が始まってもう中盤になるが、姫の元気は留まるところを知らないぐらいだ。
今日ももう2曲は歌っているが、疲れた様子を見せず今も私が読むメッセージに楽しそうに頷いている。
「『そこで私は思ったのです。アップテンポな歌を歌う姫様も良いけど、バラードを歌い上げる姿も見てみたいと。なにとぞ採用をお願いします』だって」
「えー!?」
・わかるまーん
・高音域がきれいだからバラードもよく似合うと思うよ
・ってかこのメッセージをアネさんが読んだってことは!
「えー、じゃないでしょ。というわけで今日のあっちの世界の曲は宇多田ヒカルさんの『First Love』です」
「いやーちょっと、あたしには難しいっていうか。ほらあたしはみんなのアイドルだから愛とか恋とかわからないっていうか」
「別に歌詞だからそんなに気にすることでもないと思うけど」
・愛とか恋!?
・あらー
・宇多田ヒカル is 誰?
・アネさんの転生前の世界の歌手だって何度も言っとるだろう
・あーそういう設定ね
・設定とかいうな
「はいとりあえず私はアコギを持ってきましたが、姫準備良い?」
「準備が早いっ!なんかあーちゃんいつもよりノリノリだねぇ」
「まぁあんまり姫が乗り気じゃないのも珍しいしね。珍しいものを見てなんか楽しくなってきた」
・草
・歪んだ愛www
「じゃあ姫、そろそろ覚悟は決まったかなー」
「……むー」
「おっけーみたいね。じゃあ聞いてください。『First Love』」
いやそうな顔をする姫も、私がアコースティックギターを弾き始めると気合を入れなおすように目を閉じる。
そして次に目を開けた彼女は配信者の顔をしていた。
「最後の、キスはタバコのflavorがした。にがくて切ない香り」
・声の透明度がえぐい
・え?てかこのギター生?アネさんのモデル超滑らかに動いてるけど
・個人勢の使うトラッキング機器じゃないんだよなぁ
・それ、何回も言われてますから!
「You are always gonna be my love。いつか誰かとまた恋に落ちても、I'll remember to love. You taught me how」
ギターを弾きながら姫の歌声に耳を澄ませる。
この世界に生まれてきてからずっと聞いていたその声に。
私の始まりの音に。