「祝!登録者1万人!」
「おー」
いつも以上に輝く笑顔で片手を天に突き上げる姫の言葉に現実感のない様子で拍手をする。
RadioDuoもすでに数回配信していて季節は夏、秋、冬となり、暮れに差し掛かっている。
「順調っていうか、早すぎるよね」
「それだけあーちゃんがすごいってことでしょ!」
「まぁ私っていうより前世の歌手の方々がってことだろうけど」
「でもコメントとかメッセージにはあーちゃんの演奏もすごいっていっぱい来てるよ」
それもチート由来の賞賛のため素直に喜びづらくもある。
そんなことを言うと姫が嫌がるからある程度は素直に賞賛を受け取るようになったがいまだに慣れないのは間違いない。
「それ言ったら姫かわいい、高音綺麗等々ありますよー」
「照れちゃうねー」
そんなやり取りをしながら次の回に読むメッセージの選別を進める。
とはいえかなりの割合が一万人おめでとうメッセージのためわざわざ個別で取り上げるかと言われると微妙なところではある。
「でもあーちゃんさ、どうする次回?記念配信にする?」
「記念って言ってもあんまりこれってものも思いつかないかな、姫は?」
「ケーキでも食べる?」
「それも良いけど、もっとリスナーが喜ぶ企画の方がいいんじゃない?」
まぁそれが思いつかないから二人でメッセージを漁っていたわけでもあるのだが。
さらにそれから数十分メッセージと格闘するが思うような成果は得られない。
「もういっそリスナーに聞いてみる?」
「それしかなくない!?」
「間違いなーい」
「「相性優勝ドロップスちょっとおしゃれしてー」」
最近妙に二人でお気に入りのフレーズを口ずさみ姫は踊り始める。
企画選びに完全に飽きていたみたいでそのまま姫の踊りに付き合わされること数分。
とりあえず方針は決まったので次回配信の準備を始める。
「だってさぁ!こんなにも!」
「夢中になれるの!」
「今しかなくない?」
「間違いなーい!」
準備が始まる、はずだ。
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【姫と従者のRadioDuo~ちょっと聞きたいことがある!~】
「こんちゃー!姫だー!」
「こんばんわ、アネモネだよ」
・待ってたー
・1万人おめー
・おめー
・おめでとー
配信開始とともにコメント欄は1万人達成に対するお祝いコメントであふれる。
メッセージでもたくさん祝ってもらったが、リアルタイムで祝われるとまた嬉しい気持ちがあふれ、自然に口角が上がっていく。
姫も同じ気持ちだろう。
いつも以上の笑顔で配信カメラに向かって両手を振っている。l
「ありがと、みんな。今日は一万人記念、といきたいところだったんだけどどうするか決まんなくてね」
「リスナーのみんなにもどんな記念配信がいいか聞きに来たよ」
「ってことで新コーナー!ドンっ!『こんな記念配信が見たい!冬!』」
「わー」
・わー
・わー
・ぱふぱふ
・どんどん
「ってわけでリスナー、どんな記念配信してほしいかコメントに書いてみて!」
「もちろん公序良俗に反する内容はダメだよ」
一応注意喚起はするが、そういった内容も完全にはなくならないだろう。
そう言ったコメントへの対処はモデレーター権限を渡しているお父さんと肇さんに任せてかなり早くなったコメント欄に目を通す。
「ライブ、ライブ、新曲、ライブ、コラボ。コラボはねぇ」
「私たち今までほかの配信者さんと絡みが全然ないからね。いきなりコラボは無理かな」
・それもそうか
・ていうか個人勢としては登録者1万人って相当上澄みだから、コラボ相手を選ぶのも難しいよな
・でっかくなったのう(古参面)
「ほかのライバーさんってどうやってつながり持つんだろうね、あーちゃん」
「んー、まぁまずは裏でメッセージ送ってとかじゃないの?私たちにも何人かから来てたよ」
「えぇ!?あたしそれ聞いてないんだけど!」
「姫に言ったら秘密にできなそうだし」
実際かなりの配信者からいやそれ以外からもメッセージは来ている。
大きいところだとテレビ、レーベル、芸能事務所、有名Vライバー事務所からも来ているし、配信者なら上は登録者100万人を超えVライバーからもメッセージが来ている。
「どんなのがきてるの?コラボ?」
「まぁコラボもそうだし、楽曲提供とか、歌ってみた出してもいいですかとか」
「えー!誰から!誰から来てるのあーちゃん!」
「ここで言えるわけないでしょ」
・ま、そりゃそうだよね
・今はまだ知る人ぞって感じだけどこのままの勢いなら簡単に100万人も見えるだろうしな
・姫の歌とかアネモネの演奏技術もそうだけど、やっぱり曲がいいからね
・少しでも目端の利く人間なら歌ってみたとかコラボとかなんとかつながりを持とうとするだろうしな
「じゃああとで絶対教えてよ、あーちゃん!」
「はいはい。っと歌ってみたの話が出たからここで言っておくけど、私たちが歌ってみたで出している曲。まぁオリジナルは私か姫名義でだすからそれ以外の『違う世界の曲』は歌ってみたとかは自由です」
・ふぁっ!?
・まじ?
「何度も言ってる通り、私が作った曲じゃなくて元の世界でそれぞれの歌手の方とかが作った曲だからそれで権利を主張するのも違うでしょ」
「今まで歌った曲のカラオケ音源は次回の配信までにダウンロードできるサイトを作っておくよ、あたしが!」
「ありがと、姫。あ、でも歌ってみたとか出したら聞きに行きたいからURLとか送ってくれると助かるよ」
・この子ら一体何を言っとるんじゃ?
・これがZ世代?
・なんでもかんでもZ世代で一括りにしないでクレメンス
・クレメンスなんていうZ世代がいるか!
「今まで歌った歌は男性ボーカルの曲が多いから、そっちも聞いてみたいよね」
「えーあーちゃんあたしじゃだめってことー?」
「単純に向き不向きでしょ?姫にガツガツのロックとかはやっぱりちょっと合わないと思うし」
「やればーできる!」
ひと昔前に流行ったお笑い芸人のあまり似てないものまねをする姫に苦笑しながらパンと手を打ち話題をもとに戻す。
視界の隅では姫が不満そうにぶー垂れているが、とりあえず今は放っておく。
「じゃあ今度やってみよっか。ってことで話題戻すよ」
「任せろー(ばりばり)」
「やめてー」
・まぁ姫は女性ボーカルって感じが強いよな
・アネモネちゃんは結構ハスキー系だからコーラスじゃなくてアネモネメインの曲が増えてもいいかも
「確かに!あーちゃんも今度歌おうよ!」
「いや、話戻すよ」
「決まり!今度の記念配信はあーちゃんメイン曲ライブにしよ!」
「決まってない!?」
・姫が暴走なされた
・おいたわしやアネ上
・ライブはネット上?さすがに箱とってはやんないよね?
話しがまずい方向に転がり始めている。
姫の暴走はたまにあることだが、思いのほかコメント欄が乗り気なのが想定外だ。
「いやいやいや。さすがにそれは!」
「あーちゃんなに歌う!?あたしはね……!」
真夏の太陽レベルの笑みを浮かべて姫がこちらににじり寄ってくる。
結局この状態になった姫の言葉を覆すことは私にはできっこないのだ。
コメント欄に流れる合掌を横目に見ながらいかに被害を少なくするのかに悪戦苦闘することになるのだった。