姫と従者のRadio Duo   作:びーびー

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季節感は投げ捨てるもの。


旅立ちの日に

 

 

「ってわけでだいぶ歌ってみたも増えてきたね、あーちゃん」

 

「まぁいろんな歌が聴けて楽しくなったよね」

 

 そう言いながら動画配信サイトをスワイプすると少し前までは見ることがなかった企業勢のひめじゅーソングと言われる複数の歌の歌ってみたが投稿されていた。

 

 いろいろな人物が歌を投稿していたがそれぞれがそれぞれの特色を出していていろいろ見ているととても楽しい。

 

 ちなみに確認できている中での一番乗りはグレイさんで、その次が龍崎さんだった。

 

 それに関しても龍崎さんはグレイさんがスタッフを抱え込んで罠に嵌めたとどこかの配信で言っていたと思う。

 

 閑話休題。

 

 最近は少しずつ寒さも和らぎ、春の足音が近づいてきているように感じる。

 

「はい、姫。いったんタブレット閉じて。次の配信考えないと」

 

「えー?卒業関係みたいな話しなかったっけ?」

 

「だからその中で読むお便りとか歌う曲とか」

 

 そう言いながら姫はパソコン前の私に近づいてきて肩に寄りかかってくる。

 

「みんな学校の思い出ばっかだねぇ」

 

「ま、卒業ってそんなもんでしょ。私たちも来年かぁ」

 

「あーちゃんは大学行くの?」

 

 今のところ、私たちのオリジナルでも結構お金をもらえているし、何だったら肇さんにスタジオミュージシャンとして誘われてもいるから今のところ大学進学は考えていない。

 

「姫は?」

 

「んー。あーちゃんが大学行くなら一緒に行くけど、そうじゃなければVライバー一本でもいいかなって」

 

「肇さんとか春さんはなんて言ってるの?」

 

「あーちゃんについていきなさいって」

 

「はぁ……」

 

 信頼が重いというかなんというか。

 

「あ、あーちゃんこれは?」

 

「んー?どれ?」

 

「このリストの32番のメッセージ」

 

 あー。

 

 なんというかすこし昔のことを思い出して気恥ずかしくなるメッセージだ。

 

「んーこのメッセージを選んだのはどうして?」

 

「あたしもこういう気持ちになったこと、あったから」

 

「え?姫も?」

 

 驚いた私の目に映ったのはいつもとは違い柔らかく微笑む姫の顔だった。

 

 

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【姫と従者のLiveDuo~卒業、おめでとー!~】

 

 

「ってことで改めて!卒業生のみんな、卒業おめでとう!」

 

「もう卒業式が終わったってところも多いのかな?」

 

・ありがとー!

・うちも今日卒業式だった。

・卒業したがこのまま浪人じゃ……

・涙ふけよ

 

「あたしたちは来年だけど、想像つかないなぁ」

 

「一年後、自分が何をしているか、か」

 

・あっという間やで

・思い出いっぱい作ってね

・去年卒業したけど、仕事で忙しくて同窓会とかもでれてないな

 

「ま、今しんみりしても仕方ないけどね。その前に進路決めなきゃ出し」

 

「そーそー。大学か、Vライバー一本か、それ以外か」

 

「とりあえずどんな進路に進んでもいいように勉強は頑張ろうか?」

 

「つ、次の曲ー!」

 

・姫wwww

・解釈一致ではある

・Vライバー一本でも良いと思うけどなー

・歌手デビューとか

 

「さて次の曲はいわゆるひめじゅーソングってやつ。私の世界での卒業式の定番ソング」

 

・おー

・ひめじゅーソング公式化か

・わかりやすくていいね

 

「この曲はとある学校の校長が作詞をして、音楽の先生が曲を付けた歌なんだけど、これが広がって全国区で歌われるようになったものなんだ」

 

「いや本当にすごいよね、この曲。シンプルな歌詞なんだけど、その分ストレートに心に響くというか」

 

・楽しみ

・卒業ソングかぁ

・言うたら素人さんの曲が全国区になるとかすごいね

 

「混成三部合唱だけど、一生懸命卒業するみんな、したみんなに向けて送るね」

 

「みんな卒業式を機にいろんな道に旅立つんだと思う。友達の中にも疎遠になる人もいるかもしれない」

 

「でもさ、ありきたりだけどそれでも残るものってきっとあると思うんだ。だから、聞いてください」

 

「「『旅立ちの日に』」」

 

・合唱曲か

・アネさんのピアノ、いいわぁ

・卒業、かー

・残りの一人分のパートはどっちかの録音かな

 

 

「白い光の中に、山なみは萌えて。遥かな空の果てまでも、君は飛び立つ」

 

「「限りなく青い空に心ふるわせ。自由を駆ける鳥よ、振り返ることもせず」」

 

「「「勇気を翼にこめて、希望の風にのり。この広い大空に夢をたくして」」」

 

・グレイいて草

・ちゃっかりグレイおるやんけ

・配信画面の右上に卒業アルバムの写真のようにグレイがいてワロタ

 

 あの記念配信以来ちょくちょく絡むようになったグレイさんにお願いしたら快く引き受けてくれたテノールパートの録音に合わせるように歌声を伸ばしていく。

 

 何だったらゲスト参加しようとしていたが、どうしても抜けられない仕事があったらしく、泣く泣く断るといった内容のメッセージが録音データとともに届いていた。

 

「「「今(今)別れの時。飛び立とう(飛び立とう)未来信じて。はずむ(はずむ)若い、力(力)信じて」」」

 

「この広い」「「この広い」」「この広い」「「この広い」」

 

「「「大空に」」」

 

・888888888

・えぐいてー

・これ素人さんが創ったん?

・うちの高校もこれ歌いたい

・王道の卒業ソングだけど、だからこそこの時期に聞くと涙が……

 

「というわけで声だけ出演のグレイさんでした」

 

「コメントにもあったけど、すぐに歌えるようにパート別の歌動画をグレイさんと私たちのチャンネルでこの後公開予定だよ」

 

「あーちゃんがアルトであたしがソプラノ、グレイさんがテノールの動画だよー」

 

「あと、伴奏譜面とかもろもろはいつものサイトね。startedにはグレイさん経由で一足先に渡してるからもしかしたら合唱バージョンの動画が上がるかも?」

 

・おのれ露骨な宣伝をwwwww

・もうプレミアム公開の枠が立っとるwwww

・startedのほとんどのメンバーがいて草

 

「というわけでもろもろよろしくねー。来年とかには卒業式とかで歌ってくれてもいいからねー!」

 

「いや、姫。さすがにそれは無理でしょ」

 

「でもあーちゃん。この曲はもともと一つの学校でしか歌われていなかったものが全国に広がったんだからそのポテンシャルはあるってことでしょ!」

 

・確かに

・来週までに学校を動かしたいねぇ

・卒業式前の送る会とかならワンチャンあるわ

 

「まぁあんまり無理しないようにねー」

「こうなると本当に合唱してる動画が送られてくるかもね、あーちゃん」

「卒業式の主役は卒業生だから、それだけは忘れないようにね」

 

・それはそう

・注意喚起たすかる

・さむいことになんないように気を付けなきゃな

 

 さて、注意喚起をしたところで一つ空気を変える。

 

 今日の配信で読むメッセージを探しているときに、私と姫の二人がチェックをしていたメッセージ。

 

 

「じゃあ次で今日は最後なんだけど、その前にメッセージを一つ」

 

「東京都の悩人さんから。姫様、アネさんこんにちわ。こんにちわー「こんにちわ」少し悩んだけど、思い切ってメッセージを送ります」

 

・ほん?

・こんにちわー

・こんー

 

「卒業をテーマにとのことなので一つ相談というか、私の悩みを聞いてください。私には幼稚園から一緒の幼馴染がいます。彼女は友人の私から見ても才色兼備、眉目秀麗のパーフェクトウーマンです」

 

「おぉー。すごい褒めるね」

 

・だいぶ強火で草

・アネさん送った?

・草

 

「これは私が送ったわけじゃないから。続きね。そんな彼女と最近喧嘩をしてしまいました。というのも彼女は私が本当はやればできる人間だと誤解しているのです。だから一緒に勉強をしていて私が詰まってしまっても頑張れと応援してくれます。でも最近その頑張れがつらいんです。彼女に悪気が無いのは私が一番知っています。でも心の中で変に彼女の言葉に突っかかろうとする自分がいます。自分を卑下して彼女に劣等感を持つ自分がいます。本当は喧嘩なんて立派なものではなく彼女を一方的に詰って気まずくなってしまったのです。もうすぐ卒業なのでこのままお別れなんて嫌ですが、どうしても自分の劣等感を抑えられません。どうしたらいいでしょうか。ってメッセージね」

 

・これは……

・あぁ

・重いなぁ

・若いなぁ

 

「あたしがこれを選んだのはあたしもあーちゃんに感じてたことあるからね」

 

「私も同じ。姫に感じてたよ」

 

・まじか

・はー。その年でそこまでまっすぐそれが言えるのはすごい

 

「だってそうでしょ。あーちゃんはちっちゃいころから歌もうまいし、楽器も上手だし」

 

「姫だって歌もうまいし、コミュニケーション能力激高だし、運動神経も良いし」

 

・草

・お互いに好きすぎ

 

「私の劣等感って姫に置いていかれたくないって気持ちが元だったんだよね。隣に立てるように。それってさ、やっぱり姫が大切だったからなんだ」

 

「あたしはあーちゃんを守らなきゃって気持ちかな。だから守るあーちゃんの前に立てるように。だからやっぱり私もあーちゃんが大切」

 

・てぇてぇ

・てぇてぇ

・てぇてぇ

 

「自分の劣等感と向き合うのって大変だよね。でも向き合わないで逃げたままじゃきっと後悔することになる。私たちはとあることがきっかけでお互いにその劣等感を伝えることができたけど、それがなかったら、考えたくないね」

 

「このメッセージの内容って皆多かれ少なかれ有る事だと思う。だからこそ私と姫からそんな君に、君たちに歌を送ります。『才悩人応援歌』」

 

 曲名とともに始まる姫のギターを耳で聞きながらマイクを軽く握る。

 

 珍しくこの曲は私が歌う。

 

 特に理由はないが、歌いたい気分だった。

 

 

「得意な事があった事。今じゃもう忘れてるのは、それを自分より得意な誰かが居たから。ずっと前から解ってた自分のための世界じゃない。問題ないでしょ一人くらい寝てたって」

 

「生活は平凡です。平凡でも困難です。星の隅で継続中です。声援なんて皆無です脚光なんて尚更です。期待されるような命じゃない」

 

・アネさん……

・これ気持ちわかるわ

・確かに

 

「唇から零れ落ちたラララ。ほんの少しだけ大気を揺らしたラララ。とてもっ、小さな声。唯一人が聴いた唄ラララ」

 

・本当に応援歌なんだな

・人は自分にないものを求める、か

・この世界の悩んでいる人に向けた歌か

 

 正直劣等感は人にどうこうできるものではなく自分でどうにかするしかない。

 

 だからこそ私たちは歌う。

 

 あえて言うよ、頑張ってと。

 

 それに負けないために何より自分を大切にしてほしいと。

 

「世界のための自分じゃない。誰かのための自分じゃない。得意な事があった事。大切な夢があった事。僕らはみんな解ってた。自分のために歌われた唄などない。問題ないでしょ」

 

「「唇から零れ落ちたラララ。その喉から溢れ出したラララ。とてもっ、愛しい距離、その耳だけ目指す唄ラララ」」

 

「僕が歌う僕のためのラララ」

「君が歌う君のためのラララ」

 

「「いつか大きな声。唯一人のための唄ラララ、ラララ。ラララ、ラララ」」

 

・頑張んなきゃな

・ありがとうございます。頑張ります。謝ります。

・がんばれ

・がんばれ

 

 

「「応援、してる」」

 

 




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