「そろそろ一周年ですねだって」
「いやまだ4か月くらいあるけど……」
風には初夏の香りが混ざり始めたある日、次の配信用のメールを選んでいると姫が一通のメールをさしてぽつりとつぶやいた。
まぁ確かに何かをするならそろそろ準備をする必要があるとは思うが、それにしても唐突ではある。
「姫は1周年記念で何かやりたいことあるの?」
「あたしは、んー。楽しいことやりたい。あと派手なこと!」
「オーマイ……」
具体的なことが何もない答えに思わず頭を抱える。
まあ姫の場合はこういうことを言うときは何をやっても大体楽しんでくれるはずだが、もう一つの派手なことという縛りが不穏さをかもしている。
「でもこういうときはやっぱりみんなに聞いてみるのが良いと思うよ!前の記念配信の時もみんなに聞いたし」
「……なんか姫にしては段取りがいいというか建設的な提案だね?」
「えぇ!?せっかく提案したのに!」
ダルがらみしてくる姫をあやしながらその素振りを観察するがこれと言って妙なことは見つけられない。
しかし長年の経験から姫が建設的な提案をしてくるときは大体その後ろに何かがあるはずだ。
お母さんとか、肇さんとか春さんとか、ごくまれにお父さんとか。
これはVライバーデビューが決まっていた時と同じ空気を感じる。
「ということで、ゲリラ配信だ!あーちゃんデバイスつけて!」
「露骨に話題そらしてない?」
「配信開始まであと1分!と見せかけて配信開始ぃ!」
「ちょっ」
【姫と従者のRadioDuo~『緊急』ちょっと聞きたいことがある!その弐!~】
・ゲリラ配信きたー
・なんかガサガサしとるな
・遠くからアネさんの声が聞こえるような
「ということで急遽始まりましたひめじゅーラジオ。ただいまあーちゃんはトラッキングデバイスを探して走り回ってます」
「姫、あたしのデバイスどこに隠したの!?」
「えー、あたし知らなーい」
・絶対知ってて草
・白々しさマックスwwwww
・おいたわしやアネ上
「あった!」
「ばれたかぁ」
・自白ありwwwww
・アネさんお帰りー
・お疲れ様です
・しかしほんとに急だね
「はい。緊急で動画を回しています」
「もう、いいから!もう少し準備してからでも変わんないでしょ」
「人生には刺激がないと!」
「毎日十分すぎるほどもらってるよ」
「楽しい毎日をお届けしてます」
・反省してなくてわろた
・少しは反省して
・アネさんを解放しろwwwww
「だってさ、姫?」
「はい、じゃあ今日の緊急議題!もうすぐ一周年だけど、みんなどんな記念配信を見たい?」
私の話は流されたが、姫の言葉にコメント欄は今までの比ではないくらいに高速で流れ始める。
「ライブ、コラボ、凸待ち、凸待ち、ライブライブライブライブ」
「大体ライブかー!やっぱりねー!」
・それはそう
・ぜひともリアルライブを!
・武道館行っちゃう?
・ドームですよ、ドーム!
「さすがにドームとか武道館はね。結構前から予約取らないといけないらしいし」
「やめて、その予約が取れればみたいな言い方。さすがに私たちじゃ格が足りないし、そもそもそんなキャパの箱なんて埋めらんないよ!」
「えー!私たちに登録してる人が皆来れば20万人は固いよ!歴代でもトップの動員数だよ!」
「登録してる人が皆来れるわけないでしょ!今だって同接1500人くらいだし」
まぁ今はゲリラ配信だからかいつもよりは少し少ないが、リアルライブともなるといつもの同接の中から1割でも来てくれればいい方だと思う。
・リアルライブやるなら行くで
・全国ツアーってまじ!?
・全国ドームツアーってマジ!?
「話が勝手に膨らんでいく!」
「いいねぇ!北は北海道。海鮮、ラーメン!南は博多。水炊き、ラーメン!」
「ラーメンだらけ!?っていうか皆やめて!うちの姫は本気にするから」
「えーいーじゃーん。楽しそうだよ?」
「そりゃドームでライブできれば楽しいかもだけど、ドームを押さえるほどお金ないでしょ」
「世知辛ーい。クラウドファンディングとか」
「やめなさい!」
流石に無責任発言過ぎる。
お金は私たちのオリジナル楽曲の収益や配信サイトでの収益で十分暮らせるほどには入ってきているがさすがにドームとなると桁が二つか三つ違う。
・ドームは無理でもライブハウスとかなら資金クラファンしてもええで
・リアルライブならまじでクラファンやるよ
・リアルライブとなるといろいろ調整が大変だからな。企業勢でもない二人にそこまで求
めるのはきついっしょ。
・あー確かに。
・それはそう
……まぁそういうことをできる人は身内にいるが、だからこそ身内だからと甘えるわけにもいかない。
お願いすれば本気で動いてくれそうなのが怖いのでそのことは胸の奥にしまっておこう。
閑話休題。
「あとは凸待ち、コラボねー?あーちゃんどう?」
凸待ちと言っても、私たちが知ってる配信者ってグレイさんくらいなんだけど。
まぁ凸待ちをすれば何人かは来てくれるだろうけど、初対面の人と記念配信で喋るのもなんだか違う気がする。
「凸待ちもコラボもグレイさんしか来ないかもね」
「たまに見るよね、凸待ちゼロ人みたいなやつ」
「記念配信が地獄になるのはノーセンキューかな」
「みーとぅー!」
「まぁ配信にゲストで来てもらうのはいいかもしれないけどね」
・いや『started』からは結構な人数きそうだけどな
・『Hundreds Numbers』も負けじと来るっしょ
・それはそれで面白そうだけど、一周年記念でやることじゃないか
・それじゃあやっぱライブか
・いやでもアネさんの言う通り今からじゃ箱が押さえらんないでしょ
大体意見は出尽くしたかな。
と言っても大きなイベントをするにもお金も時間もないから多めにコラボゲストを迎えての配信になるのが無難なところか。
来年はもう少し早めに準備を始めてリアルライブ、を目標に頑張るか。
「いろいろ意見は出たけど、もろもろの事情により普段通りの配信になるんじゃないかな。ね、姫?」
「ふっふっふっ!」
「姫?」
・ん?
・どしたん、話聞こうか?
・なんか起こりそう
「まずはこの動画を見てもらおうか!」
「え?」
・お?
・動画?
・なんか始まった?
姫が配信用パソコンを操作すると私が全く知らない動画が配信画面に流れ始める。
姫を問い詰めようとするも満面の笑みで唇に人差し指を当て、動画を見るように促される。
『8/22』
『Sunday』
『UNIZON HALL IN TOKYO』
「はっ?」
・えっぇぇぇえぇぇぇぇぇ!?
・まjかmjかmあじか!!!!!!
・ユニゾン!?結構でかいとこじゃん!
・ちょwwwwwwwwww!
『ひめじゅー1st LIVE“Fist Step”』
『開催決定!』
「はあああああああああ!?」
・ええええええええええええええ!?
・やたあああああああああ!
・きたああああああああああああ!
・うぉおおおおおおおおおお!
「というわけで!ひめじゅーinユニゾンホール!ファーストライブ開催決定!!!!」
「待って!待って!待って!全然意味わかんない!聞いてないし!」
「言ってないからね!サプラーーーーーイズ!」
・最高!!!!!
・うおおおおおおおおお!
・まじか!!!!
「詳しい話はまた配信取って話すよ!とりあえず今日はここまで!!!」
「待ってって!私なんもわかんな「待て次回!!!!!」」
・wwwwwwwwwww
・ありがとおおおおおおおお!
・絶対いくぞおおおおおお!
・おいたわしやアネ上wwwwwwww
菅原圭さんのライブに行ってきましたがすごくよかったなという個人の感想。
皆さんもぜひ聞いてください。