Wizard   作:オンドゥル大使

17 / 17
ACT17「404の激動」

 

 その声に目線を振り向けた[ランスロット]は信じられないものを視界に入れていた。

 

「(……さっきの少女……?)」

 

 しかしその姿はまるで異物のように浮かび上がっている。火山灰と煤けた風に燐光を帯びた青い髪を棚引かせ、そのぷっくりとした唇で冷徹に告げる。

 

「これならば、勝てるだろう。その力、見せてもらおうか。――征け、[ウィズ]」

 

「――御意」

 

 即座に応じた姿は光として認識されていた。左胸から灼熱の鼓動を拡散させ、その全貌はまるで窺い知れないまま、人影が403へと歩み寄ってくる。

 

「(いけない……!)」

 

 すぐに割って入ろうとしたがダメージが沈殿してすぐには動けない。[ランスロット]のその模様を意にも介さず、403が即座に接近して光の人影を叩き伏せようとして、その腕が白亜の装甲に包まれる。

 

「(……まさか……)」

 

 相対する徒手空拳で403を弾き返し、それは顕現を果たしていた。白亜の装甲に、顔のない立ち姿――その名を。

 

「(……コード……404……)」

 

 だがどうして、と疑念を挟む前に404――無貌の電脳戦士は403の攻撃を軽くいなし、それからモンスターボールを放る。

 

「(行け)」

 

 出現するなり、解き放たれたのは白い表皮を誇るグソクムシャだ。「であいがしら」の技が403へと突き刺さり、その頭蓋に亀裂を走らせる。

 

 404が前に出て、まるで同一化しているかのようにグソクムシャを巧みに稼働させる。横合いから急加速して「れいとうビーム」の一撃を放とうとした403へと軽い所作で弾き返し、攻撃を繋げて403を地面に叩き伏せる。

 

「(……すごい……)」

 

 感嘆の息が漏れると言うのはこの事なのだろう。無貌の電脳戦士はいちいち言葉を弄するまでもなく、グソクムシャの戦闘能力を引き出し、403へとダメージを与えていく。

 

 403が立て直す前に「アクアブレイク」の水流の一撃が深く食い込み、403の鋼鉄の躯体を激震する。

 

 まるで異次元。

 

 吹き飛ばされた403が頸椎を伸長させて威嚇するが、無貌の電脳戦士はうろたえるでもなく、グソクムシャを自身に纏いつかせていた。

 

 シンクロ進化の力を得たグソクムシャと404がその片腕の爪に高速回転の削岩機の性能を帯びる。

 

「(ドリルライナー)」

 

 直後、放たれた螺旋の一撃が403の腹腔を貫き、一秒後には爆散している。またしても、彼に助けられてしまった――その感慨を浮かべつつ[ランスロット]はシンクロ進化を解いてよろめきながら歩み寄る。

 

「……君は……」

 

 無貌の電脳戦士へと声を掛けようとしたその時、浮遊する青い少女が冷徹に告げる。

 

「[ウィズ]。そいつも邪魔よ。――討ちなさい」

 

 まるで迷いなどないような論調に怖気を覚える前に、[ランスロット]の胸元を無貌の電脳戦士の爪が引き裂く。ダメージに後ずさってもその応戦の攻撃は緩まない。

 

 装甲にいくつも傷をつけられ、アバターを維持する事でさえも困難なほどの打撃を受ける。

 

「ま、待って……! 僕は敵じゃ――!」

 

 容赦などない。

 

 シンクロ進化を切らさず、404は[ランスロット]の装甲を引き裂く。

 

『日神さん! このままじゃ……[ランスロット]としてだけではなく、アバターの耐久能力を維持出来ません! ……生命維持装置に異常発生!』

 

『日神クン! ログアウトしなさい! すぐに撤退を……!』

 

 それを選びたいのはやまやまなのだが、痛みとそして裏切られたような感覚が纏いついたまま剥がれない。

 

[ランスロット]は膝を折り、全身に至った裂傷の痛みを抱えながら意識の手綱を握るだけで精一杯だ。

 

 無貌の電脳戦士はシンクロ進化の「アクアブレイク」を片腕に凝縮させる。水の爪が実体化し、その鋭さを光り輝かせて今にトドメの一撃が放たれるかに思われた。

 

「(排除、する)」

 

 まるで感情など排し切ったかのような、冷たい声音。

 

 考えれば、イレギュラーでしかない404に近づいた己の迂闊さを呪う前に、無貌の電脳戦士がグソクムシャの鎧を纏いながら大きく腕を引く。

 

 その爪が、命を啄む――その瞬間が眼前に迫る。

 

 404が駆け出す。歩みはまさに、死へと繋がる絶望の足音に思われていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1:電脳戦閃【PlaZma War】 end

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。