吸血鬼、(股間が)灰になる 作:灰被りの吸血鬼
初投稿です。
吸血鬼の股間だけ灰になってたらTS娘になるんじゃね??って思って勢いで書きました。
吸血鬼とは。
ヴァンパイアとも呼ばれる種族で人の生き血を吸う不老不死の存在。
人知を超えた身体能力に加え膨大な魔力やコウモリへの変身能力、強力な再生力まで持つ最強クラスと名高いモンスター。
吸血鬼に血を搾り取られ命を落とした冒険者は数知れず。
討伐すれば冒険者ギルドから賞金が出るほど脅威とされている。
そんな危険度マシマシ吸血鬼だがその強さ故に弱点が多いことも有名で十字架やニンニク、銀の武器に流水など多岐にわたる。
中でも一番有名なものは日光を浴びると灰になるというものだろう。
何代にもわたる世代交代を経て幾つかの弱点は克服しつつある吸血鬼だがそれらが対吸血鬼において有効な手段であることは変わらない。
よほど日差しが強くなければ常にヒリヒリとした痛みを肌に感じ、弱体化するも完全に滅びはしない。
けれど、強い日の光を浴びせれば吸血鬼は灰になって死ぬ。
それはいつの時代になっても変わらない、幼い子供でも知るこの世界での一般常識。
だから、勇者との戦いに敗れ肉体が強烈な日の光の元に晒されたおれはそのまま死を迎える。
そのはずだった。
窓から差し込む明かり(吸血鬼が日光を少しでも克服するために魔法で作り出した疑似日光)で目が覚める。
目を開けるとそこは知らない天井だ……ということもなくここ最近見ていなかった実家の自室。
今まで魔王軍幹部としてあちこちへ飛び回っていたからこの部屋で目を覚ますのは久々だ。
はて、どうしておれはここで寝ていたのだろうか。
おれはたしか勇者との手に汗握る激闘のすえ、あと一歩、具体的に言えばこっから奇跡起きて隕石でも落ちてくれればワンチャン勝てるんじゃね? ってぐらいのとこまで勇者を追い込み、もとい追い込まれた後日光を浴びて灰になって消滅したはず。
そんなおれがどうしてここに?
勇者との観客が居れば後世にまで語り継がれただろうあの激闘はおれの夢だったのだろうか。
寝起きの冴えない頭で云々うねりながら考えているとふいにドアがコンコンコンと子気味よい音とリズムでノックされる。
「失礼します」とそう言って部屋に入ってきたのはクールな目つきに凛とした佇まいをした白髪の少女。
我が家のメイドにしておれの幼馴染兼お世話役だったイリスだった。
「お目覚めになられましたか、レヴィ様」
数年振りに聞いたその落ち着いた声はとても懐かしさを感じるものだった。
魔王軍に配属されてから今まで一度も実家どころかこの吸血鬼の国に帰ってくることができず、もう二度と聞くことも叶わないと思っていたせいかこのたった少しの言葉にさえどこか感動を覚える。
「久しぶり、イリス。えっと、起きたばかりで少し混乱してて……。なんでおれがここにいるのかとか教えてほしいんだけど」
と、そこで自分の声に違和感を覚える。
風でも引いたのだろうか、いつもより少し声が高くなっているような感じがする。
それに以前よりもほんの少しだけどこかたどたどしくなってしまっているような……?
「レヴィ様は惜しくも勇者に敗れ日光に晒されてしまったことでお体の殆どが灰となってしまっておりました。なんとか左胸の心臓部は日が当たらずギリギリのところで我々が回収。なんとか再生に成功し目が覚めるまでご自宅でお休みになってもらっていたところです」
なるほど、どうやら勇者と戦ったのは夢ではなく現実だったが命はなんとか助かったらしい。
だが、この感じではおそらく魔王軍幹部であるおれ、レヴィ・モントブルートは勇者に討たれたと人間たち、魔王軍には伝わってしまってるだろう。
別に人間との戦いなんて興味は無いし、ブラックすぎる魔王軍も近いうちに辞めたいと思っていたから問題ないか。
うん、むしろあの魔王から逃げれたという意味では大きなプラスだろう。
サンキュー勇者、今度お礼に血を吸ってあげるから首を洗って待っててね。
「ところでイリス。その手に乗っけているお盆みたいなのは何なんだ?」
部屋に入って来た時からイリスが持っていたお盆。
ご飯かとも思ったが我が家では食事はリビングでとるという決め事があるため多分違うのだろう。
イリスは少し複雑そうな表情を浮かべたものの手に持っているそれについて説明を始めた。
「先ほども説明させていただいた通り、レヴィ様の肉体の殆どは灰になってしまっていました。なんとか灰を殆ど回収し無事だった左胸に合わせて回復させていたのですが、その……」
そこまで言って言葉を詰まらせる。
何か問題があったのだろうか。
無事におれの意識は回復してるし、体も問題ないと思うのだが……。
そう思い自分の身体を見てみると以前よりも手足が短くなっていることに気づく。
そして短くなった手足の代わりか、髪は伸び腰にかかるというくらいの長さになっている。
これは一体どういうことだ??
手足が短くなったのは体が灰になったせいでまだ再生が十分じゃないとかそんな感じだろうか。
髪は勇者に負けた後ずっと眠っていたから伸びてきたと考えれば不自然じゃないだろう。
そんなふうに、なぜか女性物の寝巻を着せられているという明らかにおかしな点から目を背けていると。
「その……股間の部分の灰を回収するのを忘れていて、そのまま再生が完了してしまったため今のレヴィ様は、その、」
「吸血鬼の女の子として復活してしまいました!!」
……。
…………は?
「ごめん、イリス。もう一回言ってもらえない?」
普段よりも甲高くなった声でイリスに聞き返す。
「今おれが女の子になったって聞こえたんだけど……?」
おれの質問に対してなぜか顔を赤らめたイリスが答える。
「その通りです。今ではレヴィ様はこの吸血鬼の国でもトップクラスの美少女になってしまいました。以前のお姿も可愛らしさと格好良さを兼ね備えた私好みのお方でしたが今のレヴィ様は私の好みドストライクのロリ吸血鬼、いや吸血姫です」
いや、いやいやいやいやいや。
ちょっと待ていろいろおかしいだろ!
なんで股間失っただけで性転換してんのおれ!?
今まで灰の状態から再生に成功した吸血鬼の事例は聞いたことがないため生き返れてるだけ儲けものではあるのだが!
ある意味命よりも大切な物を失ってしまっている!
ぐおおおおお!! と頭を抱えるおれ(女体化した影響か、前よりも髪がサラサラしてて手触りがいいな)に対してイリスは。
「安心してくださいレヴィ様。私が今持っているこのプレートに乗っている物こそが、その股間部分の灰でございます」
「おお! でかしたイリス!」
じゃあそれを股間に合わせて再生すれば元通りだ!
早速男に戻ろうとイリスから灰を受け取ろうとすると。
スイッとプレートが持ち上げられ、俺の小さくなった手が空を切る。
……。
再びそれを取ろうとするとまたしてもスイッと交わされてしまう。
「おいイリス」
「何でございましょう」
「今すぐその灰をおれに渡せ」
「お断りします」
そう言ってイリスは今の小さくなったおれではジャンプしても届かない、自身の頭の上にまで灰の乗ったプレートを持ち上げる。
こ、このアホメイド……!
「おい! 今すぐそれ返せ! おれの男の象徴だぞ!!」
「嫌です! 今のレヴィ様の方が愛らしくてこんな美少女があんな幸薄そうな男に戻るなんて残酷すぎて耐えられません! こんなロリを失うなんて世界の損失です!!」
こいつ! さっき以前のおれも私好みの方とか言ってたくせに!
というかロリって言うな!
「今から世界が損失する物よりもおれが損失した物の方が重大だバカ! さっさとそれ渡せ!」
「ああ、激高して真っ赤になった瞳も揺れる度に甘い香りを振りまくその金の長髪も可愛らしくて愛おしい……。眠っている顔もキュートでしたが怒った顔も可愛いですねグヘへへ」
「ひぃっ!?」
あまりの気持ち悪さに思わず後ろに退く。
なんだこいつ、数年前最後に会った時はこんなんじゃなかっただろ!
いつものクールな雰囲気で凛としている姿からは考えられないほどの変態ぶりに心の底から恐怖する。
勇者から聖剣を向けられた時でさえここまでの恐ろしさは感じなかったぞ!?
「ああっ。離れてしまったのは残念ですが怯えた表情も愛いですねぇ。私が着せたピンクのパジャマもお似合いですよ」
これ着せたのお前かよ!
どうやらおれが一番に戦わないといけなかった相手は勇者でもブラック労働を強いる魔王でもなく実家で雇っている幼馴染メイドだったらしい。
「さあレヴィ様、魔王軍も死亡扱いで脱退させませたし時間はこれからいくらでもあります。ついでに時間だけでなく、可愛らしいお洋服も沢山用意したのでいくらでもあります。さあどれからお召しになりますか!?」
鼻息を荒くしながら数着の女物の普段着やドレス、果てにはコスプレ衣装までを持ってイリスがにじり寄って来る。
「や、やめろ……こっちに来るな! いや、いやだ、来ないでぇっ!!」
「グヘ、グヘへへへへ!!」
「いやぁぁぁぁぁぁ!?」
これは勇者に敗れ、(股間が)灰になった吸血鬼の物語。
これはおれが
TS娘は一人称がおれだと嬉しい派閥の人間です。
“俺”じゃなくておれ派です。
よろしくお願いします。