決戦兵器の制御コアにされた俺のパイロットが気性難(ヤンデレ)女しかいない   作:なっくる@2作品書籍化

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第1話 俺の上司とパイロットが気性難過ぎる

『敵の直衛戦闘機を確認。機数は1……距離は27000だ』

 

 少し高い女性の声とともに、敵機の位置を示す3Dマップが俺の視界に投影された。

 

「了解です、博士。訓練通りに壱号機の狙撃を使います」

 

『うむ。今日は実弾だ。間違えないように』

 

 女性……俺の直属の上司である博士の言葉と共に、全武装のロックが解除される。

 とはいえ、俺が操る試作人型決戦兵器、カグツチ弐型壱号機の武装は一つしかないのだが。

 

『くくく……対プローバー特殊徹甲弾の価格は、十万人分の配給食に匹敵するからねぇ。外したら納税者が黙っていないぞぉ?』

 

 その納税者の税金を湯水のように使っているのは誰ですか。

 俺の毒舌は、上位権限により封じられた。

 

(……博士も緊張しているのかな)

 

 博士の声が、僅かに震えていた。まあ仕方ない。

 博士が開発し、国家予算の三割近くをつぎ込んだ決戦兵器が銀の短剣なのか、なまくらなのかがこれで分かるのだ。

 

(ただ、その命運を託す相手が……)

 

 そう、敵の直衛戦闘機を撃つのは俺じゃない。

 火器管制を担当する為、カグツチ弐型壱号機のコックピットに座っているのは……。

 

『や~、あんま美嘉を放置せんでよ~、優っちぃ♡』

 

 秘匿通信を繋いだ途端、甘えたというには少々あざとすぎる少女の声がマイクから聞こえる。

 

 ヴンッ

 

 コックピット内のカメラが捉えたのは、ごついパイロットスーツを身に着けた小柄な人間。

 

『ウチ放置プレーは趣味じゃないからぁ……ってもぅ、ヘルメットあっついし!』

 

 ぽいっ

 

 ヘルメットを脱ぎ捨てた途端、豊かな金髪のミディアムボブがふわりと広がる。

 垂れ気味の緑の瞳が湿り気を帯びている。

 

「……戦闘機動中にヘルメットを脱ぐのは危ないぞ?」

 

 一応常識的な注意をしてみる。

 慣性制御装置を搭載しているカグツチ弐型は、全力起動を行っても殆ど揺れない。

 とはいえ、まだまだ開発途上な部分も多いのでパイロットスーツを着ていた方が安全である。

 

『そんなことより優っち。カグツチちゃんのしんどーをおまたに感じていたら~、ちょ~っとこーふんしちゃって。パパのドリルで慰めてよ。にひっ』

 

 びりりっ

 

 少女はパイロットスーツを脱ぎ捨て、コックピット内で下着姿になる。

 

「お、おいっ!?」

 

 ぽふっ

 

 そのままシート前に設置された制御システムに抱き付く。

 

「こら、美嘉。秘匿回線とはいえ今は戦闘中だぞ? それに、俺にはドリルは付いてない」

 

 奔放すぎる少女……美嘉の振る舞いに既に頭痛がしてきたが、努めて優しく。ASMR音質で呼びかける。

 

『あ~、そっかぁ。ウチらが活躍したら、博士ちゃんが作ってくれるんだっけ』

 

「そうだ。何度も説明したぞ?」

 

『ふんふん、その為に頑張んなきゃか』

 

 少々癖のある金髪を、指にくるくると巻き付ける下着姿の美嘉。

 太めの眉をハの字にして、こちらをチラチラ見てくる。これは……。

 

(はぁ、仕方がない……)

 

 自分の声色をさらにしっとりに調整する。

 

「そう、美嘉だけが頼りなんだ……君をこの手に抱くために」

 

『♪♪』

 

 美嘉の金髪がふわりと広がり、ふにゃりと口元が緩む。これだけ見ればスパダリムーブに喜ぶ少女なのだが……。

 

『だよねぇだよねぇ。やっぱ美嘉が優っちの一番じゃん? ぷぷぷ、博士かわいそぉ~。どんだけ頭が良くても、オバちゃんだし? 処女だし? 彼氏いないし?』

 

 ダダダダッ

 

 私物のスマホで、煽りスタンプを博士に送りまくる美嘉。

 

 ビキビキビキビキッ

 

 質量を持ったと錯覚するほどの怒気が、背後から通信回線を通じて伝わってきた。

 

『……あ~、サンマタ君? カグツチ弐型のエンジンを切りたまえ。少々お仕置きが必要だな』

 

「現在戦闘機動中なので、無理です。あとミマタですから」

 

『なんかハカセ怒ってる? へっへ~、優っちが美嘉にぞっこんなのを知らないんだよね~? いえ~い』

 

 秘匿回線だと思って博士を煽り散らす美嘉だが、会話の内容はすべて博士にモニターされている。

 

『は~、さいっこう♪ パパがいないオバちゃんは哀れだな~』

 

 限界を超えた煽りに、博士が強制停止モードを作動させかけた時、それは起きた。

 

 ぐにゃり

 

 ヴウウウウウウウウウウンッ

 

 カグツチ弐型が背中にマウントした長大なカノン砲。その先端の空間が僅かに歪む。

 

『!! 来た! ヤンデレシフトの位相を確認!』

 

 血相を変え、巨大なコンソールに飛びつく博士。

 

『美嘉君! そのままカノン砲を発射するんだ!』

 

 俺と美嘉の通信回線に割り込んできた博士が、美嘉に向けて緊急の指示を出す。

 

『サンマタ君は姿勢制御! 強装薬射撃の反動は物凄いぞ』

 

「了解です」

 

 カグツチ弐型の各所に設置されたスラスターを全開にし、機体の姿勢を安定させる。

 

『え~、どうしよっかなぁ……でも、ここでウチがテキちゃんをげきついしたらぁ、優っちの指一本分くらいになるよね。あは♪』

 

 些か物騒なセリフと共に笑った美嘉のしなやかな指が、火器管制用のコンソールの上を踊る。

 

 ドウッ!

 

 次の瞬間、数十メートルはある長大な砲身から巨大な爆炎が噴き出した。

 

「くっ!?」

 

 マッハ5以上で飛行中の機体から150口径砲の全力射撃。俺は必死に機体の姿勢を制御する。

 

『目標まで20000……10000……5000……今ッ!』

 

 ドオオオオオンッ!

 

 はるか上空で、真っ赤な花火が炸裂し、()()()()()()を粉々にした。

 

『空間湾曲率67%、評価点173! せ、成功だよサンマタ君!』

 

 博士の歓声が、スピーカーを貫通して聞こえる。

 

『ふっふ~ん! さすが美嘉だし! あ~、やっば! ガチでムラって来たんじゃけど!』

 

「おいこら」

 

 コックピット内でナニをしようというのか。

 俺は緊急用の催眠ガスをコックピット内に噴射し、美嘉を眠らせた。

 

『ふ、ふふふふふっ! これでワタシは! ふははははははっ!』

 

 そしてモニターの向こうでは、白衣姿の博士が狂気を孕んだ笑い声をあげている。

 

「やべぇ女しかいない……」

 

 思わず頭を抱える。

 マッドサイエンティストな上司に、ふわふわパパ活少女のパイロット。

 

「どうしてこうなった……」

 

 俺、三俣 優史(みまた ゆうじ)27歳は地球に侵攻してきた機械生命体、通称プローバーに対抗すべく生み出された決戦兵器

 カグツチ弐型の生体制御コアユニットだ。

 

 自動帰還モードになったカグツチ弐型の制御システムの中で、

 俺はプライベートの記憶ストレージにアクセスするため、仮想体の目を閉じた。

 

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