決戦兵器の制御コアにされた俺のパイロット候補が全員ヤンデレで依存してくる   作:なっくる@2作品書籍化

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第10話 莉乃を罠に嵌めよう

――― 数日後、研究センター内訓練場

 

『美嘉さん、ちゃんと遠くの敵を狙撃してください!』

 

二機のカグツチ弐型を操る俺の耳に、莉乃の苛立った声が届く。

火器管制システムの基礎課程を終えた莉乃は、今日初めて僚機となる美嘉との訓練を行っていた。

 

『え~っ? 近くのテキちゃんから狙った方がよくな~い?』

 

『私の弐号機は近接戦闘用なんですから、ちゃんと役割分担をしないと!』

 

『ん~?』

 

ドンッ、ドンッ、ドンッ

 

そんな莉乃の忠告を聞いているのかいないのか、壱号機に乗った美嘉は背中のカノン砲を連射、標的用のドローンを粉々にした。

 

『美嘉さん!? ああもう、博士! 弐号機にも遠距離武装を付けてください!!』

 

自身の倒すべき標的がいなくなり、抗議の声を上げる莉乃。

莉乃の乗る弐号機の武装は、近距離攻撃用のパイルバンカー。ちなみに博士の趣味だ。

 

「はっはっはっ! 熱核バーストタービンエンジンの出力の大半を、防御用のオムニゲート機関に回さなくてはいけないからねぇ! 推力的な問題もあって武装は一つが限界なのさ」

 

『そんなの、欠陥機じゃないですか!!』

 

バンッ!

 

火器管制用のコンソールを台パンする莉乃。

訓練中も俺にチャットしまくる美嘉に比べ、莉乃の訓練姿勢は真面目だ。座学の覚えも良いだけに、いい加減な二人が許せないのだろう。

 

【コンソール1台につき、数億円の税金が投入されています。大事に扱ってください】

 

制御コア用のコンソールに警告メッセージを出してみるが、莉乃にガン無視される。

 

『全く! ふわふわパパ活女にクソ機体を作るマッドサイエンティスト! 本当に日本を救う気があるんですか?』

 

通信用のマイクを切ると、コックピットの中で毒を吐く莉乃。

あの~、俺に丸聞こえなんですが。

 

「寮のネットは遅いし、いくつかの裏アカに繋がらなくなりましたし!」

 

ガンッ!

 

イラついているのか、左足で俺の子機を蹴る莉乃。

 

【制御コアの子機が故障すると、墜落の危険があります。注意してください】

 

「ぷんっ!」

 

俺のメッセージに、やけに可愛く頬を膨らませる莉乃。

俺と博士で手分けをして彼女の通信をフィルタリングし、いくつかのダークウェブにはアクセス制限を掛けた。

そのせいでイライラしているのだろう。

 

「研究センターの中央サーバーは強固なDMZ(電子防壁)で守られています。絶対あの中にヤバい機密やスキャンダルが入っていると思うんですが……」

 

『莉乃君が最初に敢えてワタシを挑発してきたのは、機密情報を防壁内のサーバーに隠させるためさ。そこに敢えて誘い込む……愉しいねぇ!』

……とのたまった博士の術中に、すでに莉乃は嵌っている。

 

「こうなったら、裏ルートから手に入れたアレを使うしかありませんね……」

 

ぼそりと呟いた莉乃の眼鏡がきらりと光る。

その反応に、俺は博士の予想が正しかったことを悟るのだった。

 

――― 訓練終了後、莉乃の私室。

 

「これで良しです」

 

入念に対電波、対盗聴対策をする莉乃。

 

「ネットダイブ可能な第二世代仮想ブラウザ。これを使えば……」

 

彼女が押し入れの奥底から取り出したのは、ネックピローのような白い物体。各所に電極が取り付けられており、頭に巻くタイプの端末のようだ。

 

「限定的ではありますが、思考制御と仮想体を使って直接アタックを仕掛ければ、あのDMZを突破できるはずです」

 

(へ~)

 

鼻息荒くネックピロー型の端末を頭に巻く莉乃を、彼女のPCのWebカメラから覗き見る俺。

博士から貸与されたネットワークの最上位権限を使えば、こんなことも可能になる。

 

(それにしても、ネットダイブか)

 

技術的には、俺の仮想体と同じような物だろう。

 

(技術が進歩しすぎていて草)

 

俺が人間だったころは、近未来小説の中にしか存在しなかった技術である。

人類に降りかかったピンチと言うモノは、かくも技術を進歩させるのか。

 

「あとは意識を低覚醒状態にして……」

 

ぽふん

 

睡眠薬を半錠だけかじった莉乃は、量産品のベッドで横になる。

 

(よし、今だ!)

 

彼女がウトウトし始めたことを確認した俺は、仮想体に意識を移すのだった。

 

***  ***

 

「寮のネットワークに潜入成功、外部ネットワークと繋がるゲートウェイをハッキング……緊急時の脱出用VPN接続を確立」

 

薄暗い仮想空間を、沢山の光が流れている。

その中を制服姿の仮想体となった莉乃は、泳ぐように進んでいく。

 

「すごいな、この子……」

 

この研究センターは、人類の反撃のかなめである。

敢えて博士がすこし隙を作っているとはいえ、セキュリティは最上級レベル。

絡み合う電子の枷を、苦も無く莉乃は潜り抜けていく。

 

「センタービル内のネットワークに侵入成功、復元ポイントをダミー含め3カ所設定。レベルBのセキュリティボットを確認、デコイ射出!」

 

(はえ~)

 

莉乃の手管に感心する。

博士謹製の俺の仮想体は仮想空間内でこういうことをしたいとイメージするだけで機能が発動するので、技術的な所はさっぱり分からない。

 

(確かに、博士に似ているかも)

 

どこか楽しそうに、防壁を突破していく莉乃。

その様子を、遥か上層から観察する。

 

「さて、そろそろ……」

 

莉乃が研究センターの中央サーバーに到達する。

そこには博士が準備した防壁が存在するはずだ。

 

キシャアアアアアアアアアッ!

 

……などと考えていたら、中央サーバーに続く電子回廊の前に巨大なドラゴンが出現した。そう、ドラゴンである。

 

「えぇ……」

 

まさかのファンタジーモンスター。いつの間にゲームの世界に迷い込んだのか。

 

「くっ、仮想体タイプのDMZですか! 手強いです!」

 

……自然に順応している莉乃。

高度なネットダイブってこういうものなの?

 

「プロセスをキルする為の武装は……カグツチ弐型から拝借したアレを使いましょう」

 

ヴンッ

 

莉乃の右腕に、巨大なパイルバンカーが出現する。

弐号機と同じ武装を再現……莉乃はこんなことまで出来るのかよ!

 

「行きます! はああああああああっ!」

 

巨大なパイルバンカーを構えた制服姿の莉乃が、ドラゴンに向かって突撃した。

これほどのスキル(?)を持つ莉乃である。すぐに片付くだろうと思っていたのだが……。

 

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