決戦兵器の制御コアにされた俺のパイロット候補が全員ヤンデレで依存してくる   作:なっくる@2作品書籍化

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第12話 俺のメンタルケアをしよう

「……いやぁ! 素晴らしいよサンマタ君! 正直、うわコイツいたいけな高校1年生にここまでやるかとドン引きしていたのだが、メンタル位相の振れ幅が凄まじいじゃないか!」

 

 その日の夜、博士と仮想空間内で反省会を兼ねたブリーフィング。

 ……なぜか今日は博士の距離が少し遠い気がする。

 

「いや、俺も少し『メンタルケア』をやりすぎたとは思っていますが……七割くらい博士の仕込みでしょう?」

 

 今回は博士の全面協力で、莉乃を仮想上で罠に嵌めたのだ。博士の責任割合の方が大きい、絶対。

 

「はっはっは! さすがのワタシもあそこまでするとは思っていなかったがね! これで美嘉君と莉乃君……ちゃんと責任を取りたまえよ?」

 

「う”っ!?」

 

 博士のサンマタ呼ばわりを笑えなくなってきた。胃がキリキリと痛む幻覚を感じる。

 こ、こういう時はメンタルリセットである。俺は自分の内面と向き合うことにした。

 

 ☆★☆  ☆★☆

 

『あははっ、おにいちゃん! やりすぎると、いつか本当に刺されちゃうよ?』

 

 俺は会社員時代、複数の地下アイドルグループのプロデューサーを務めていて、多感な彼女たちのメンタルケアに勤しんでいた。

 そんな俺の様子を職場見学で目の当たりにした真彩から頂戴した言葉がこれである。

 

「こ、ごめん真彩! 今回は仕方ないんだ。人間に戻ってお前を探すため……あと人類を救うために!」

 

 脳内に現れたイマジナリー真彩に弁明を試みる。

 

『そんなこと言って、本当は結構楽しんでたでしょ? まあ、おにいちゃんは所かまわずスパダリムーブするけど、複数の子に手は出さないって真彩信じてるもん♪』

 

「そ、それは真彩に誓って絶対しないっ!」

 

 そもそも、担当アイドルに手を出すプロデューサーなぞ、言語道断である。

 それはカグツチ弐型のパイロットの少女たちに対しても同様だ。

 あくまでも彼女たちのメンタルケアをして、気持ちよく仕事に向かえるようにする……心がけていたポリシーを、改めて反芻する。

 

『そうだよね、あのこわーい博士さんがやれって脅してきたんだもんね。かわいそうなおにいちゃん……』

 

「だろ? 真彩を取り戻すためには、やるしかなんだ……見守ってくれるか?」

 

『うんっ! さっすがわたしのおにいちゃん! 訓練も頑張ってね!』

 

「ああ、真彩もいい子で待っているんだぞ」

 

『は~いっ♪』

 

 にぱっと笑った真彩の頭を優しく撫でる。メンタルリセット完了。

 

 ☆★☆  ☆★☆

 

「ふぅ、もう大丈夫だ」

 

 イマジナリー真彩との会話を終え、大きく深呼吸。

 

「ああうん、もういいかね? 三俣君」

 

 いつの間にか、仮想空間の端に移動してこちらを見つめる博士。俺の名前を正しく呼んでくれたし、何かあったんだろうか?

 

「……ひとまず、美嘉君と莉乃君という別ベクトルの精神的揺らぎが揃ったことでオムニゲート機関の逆位相、仮称ヤンデレシフトを安定して発動させる目途が立った」

 

「ヤンデレ、シフト……」

 

 もう少しネーミングは何とかならなかったのか……そう抗議したいが最上位権限で封じされる。

 

「そろそろ成果を出せと上からもせっつかれていてね。近いうちに……一度実戦で試したい」

 

「!!」

 

 博士の赤銅色の瞳がギラリと光る。

 どうやら本番が迫ってきたようだ。

 

 

 ***  ***

 

「やれやれ、真人間はワタシだけかね?」

 

 制御コアの中核をなす優史が仮想空間からログアウトし、休眠状態に入ったことを確認した満里奈はココアを入れ直すと私室の椅子にその小さな体を落ち着ける。

 ……正直ちょっと怖かった。今夜はとっときのクマちゃん二号を使うべきだろう。

 

 カタカタ

 

「出来れば、機体制御を担当する彼にはまとめ役として安定して欲しいのだが……いや、以外にイケるのか?」

 

 ココアを啜りながら、先ほどまで測定していた優史の脳波の位相を確認する満里奈。

 

「ふむ」

 

 プローバーの攻撃で瀕死の重傷を負い、脳だけになった三俣優史。

 しかも巨大な人型兵器の制御コアにされたのである。普通なら錯乱しても可笑しくないが、彼の精神は安定していてパイロットの少女たちにメンタルケアと称してスパダリムーブをかます余裕もある。

 

「やはり、鍵は彼の妹か」

 

 行方不明となっている三俣真彩。

 彼女がプローバーにさらわれた可能性を示唆したのは正直方便だっが、あそこまで彼がそのことを信じているのならこの状況を活用すべきだろう。

 

「……地獄に一度堕ちたくらいでは足りないな」

 

 デスク横のサイドボードに置いた写真を見やる満里奈。

 フォトフレームの中ではさらさらの赤銅色の髪を持った少女が、人好きのする笑みを浮かべていた。

 

「さて、慣性制御システムの改良……明日までに必ず仕上げよう」

 

 満里奈はココアを一気に飲み干すと、彼女の戦場で戦うべく、PCに向かうのだった。

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