決戦兵器の制御コアにされた俺のパイロット候補が全員ヤンデレで依存してくる   作:なっくる@2作品書籍化

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第13話 初陣

 ピピピピピピッ!

 

『極東管区対宙レーダー基地から報告。プローバーの艦艇とおぼしき飛翔体が、高高度地球軌道(HEO)を離脱』

 

「ふむ……予想進路をメインモニターに出せるか?」

 

『はい、すぐに投影します』

 

 ブンッ

 

 博士の指示と同時に、幅10メートルはある巨大なモニターに複数のウィンドウが表示される。

 

「なるほど……奴らめ、こちらの動きに気付いたか?」

 

 ココアを入れたカップを手に持つ博士の表情は、いつもより厳しい。

 

(ごくっ……いよいよ実戦か?)

 

 俺が莉乃の王子様になり、彼女が正式にカグツチ弐型のパイロットとして登録されてから二週間。

 俺は早朝から警戒警報により叩き起こされていた。

 

『予想進路更新。飛翔体、さらに降下……高度3,000㎞を突破。ここ半年ほどみられなかった動きです』

 

「高精度オムニゲートレーダー起動。敵艦の詳細な情報が欲しい」

 

 ズウウウウンッ、ガコンッ

 

 博士の指示と同時に、腹に響く駆動音が外から聞こえてくる。

 

 研究センターの各所には巨大な箱型の特殊なレーダーが設置されている。

 空間防壁で守られているプロバーの艦艇は、通常のレーダーではおおよその位置しか分からず、艦型の判別にはオムニゲート機関を使ったレーダーが必要なのだと博士がドヤ顔で語っていたことを思い出す。

 

「念のため、壱号機と弐号機に火を入れておく。熱核バーストエンジンの予備運転開始」

 

『了解。地下核融合炉、1番から3番まで全力運転。但馬直轄市全域に10%の節電要請伝達済み』

 

 モニターの情報が更新され、研究センターに供給される電力が上昇していく。

 同時に、市内の街頭モニターや街灯の電気が落とされる。

 オムニゲート機関はとにかく電力を馬鹿食いするモノらしい。

 

「研究センター中央ビル、対空襲シフトへ移行。念のため、直轄市防災センターに避難指示発令要請を伝えてくれたまえ」

 

 ドドドドドッ、ガコンッ

 

 僅かな揺れと共に、中央センタービル本体が地下に格納されていく。

 

(やべぇ、アニメみたい!)

 

 昔のSFアニメを彷彿とさせる光景……現実だとは信じられない。

 

『政府民政局よりホットライン。敵は1隻であり、性急な避難指示は必要ないと判断する。上位権限にて高齢者避難準備要請に変更……以上です』

 

「ちっ、平和ボケしているねぇ」

 

 オペレーターの返答に、舌打ちをする博士。

 とはいえ、政府の判断も分かる気がする。絶対的な防壁を手に入れた日本政府は、人口の回復と経済の復興に全力を傾けているらしい。

 研究センターの立地する但馬直轄市はそのモデルケースになっており、経済活動が本格化する月曜の朝から全面的な避難指示を出したくないのだろう。

 

「敵が低軌道まで降りてきたのは、10カ月ぶりなんだぞ? もし近接攻撃を仕掛けられたら……」

 

 忌々し気に吐き捨てる博士。その内容が気になった俺は、博士に秘匿メッセージを繋ぐ。

 

『ちょっと質問なんですけど……オムニゲート機関の防壁は鉄壁じゃないんですか?』

 

 俺がカグツチ弐型の制御コアになってからも、何度も高高度衛星軌道上から敵の攻撃はあったが、その全てを防壁が弾いてくれている。

 博士は何を懸念しているのだろうか。

 

「ふむ。せっかくだから説明しておこう」

 

 渋い表情を浮かべていた博士が、きらりと目を光らせる。

 しまった、いらんことを言ったかもしれない。

 

「まず、オムニゲート機関の動力源は莫大な電力。基本的には各地に設置された核融合炉から供給されるのだがね」

 

 白衣を羽織ったまま、椅子に腰かけ脚を組む博士。

 ポケットからモノクルまで取り出し、すっかり解説モードだ。

 

「莫大なエネルギーを帯びた電子の流れに、ヒトの意思の力……ワタシが仮称霊子と呼ぶタキオン粒子に近い性質を持った波動で干渉するんだ」

 

「な、なるほど」

 

 既によく分からない。大学時代文系だった俺に講義をしても、左耳から右耳に抜けていくだけである。

 

「ヒトの防御本能はとてもシンプルでね。高エネルギーを保ったまま容易に防壁状に展開できるというワケさ」

 

『敵艦を高精度オムニゲートレーダーで捕捉。全長87メートル、フリゲート級です!』

 

 オペレーターの声とともに、

 大型モニターの情報が更新され、敵艦の姿が映し出される。

 僅かに赤みがかった球体のブロックがいくつも組み合わさった、葉巻型の艦体。

 

『敵艦高度、2635.237㎞……敵艦発砲!』

 

「!?」

 

 オペレーターの報告に息をのむ。

 次の瞬間、真っ白な光の柱が一直線に地上に向かって撃ち降ろされる。

 

「ああ、フリゲート級の攻撃程度なら、全く問題ない」

 

『攻撃落着地点を予測、オムニゲート防壁の自動展開を確認』

 

 ピピッ

 

 小さなアラート音と共に、サイドモニターの情報が更新される。

 研究センターのはるか上空に、八角形の光の盾が具現化していく。

 

 ばしゅんっ

 

 光の柱は、盾にぶつかりあっさりと吹き散らされた。

 

「……今見てもらったように、防壁は高度5万メートルに展開されるようになっている。低高度成層圏は、航空機が使っているからね」

 

「ということは、敵がそれより下に降りてきたらマズいってことですか?」

 

 例えば、ビームは防げても体当たりのような物理攻撃を直接受けると弱いとか……パリーンと割れるバリア的な。

 

「いや、防壁はミサイルのような物理攻撃についても有効だ。展開高度も自由に調整できる……あまりに低空過ぎたり、高空過ぎると効率が落ちるがね」

 

「なら……」

 

 何か問題なのか、そう問おうとした俺の声をオペレーターの報告が遮る。

 

『敵艦、増速。現在の高度2233㎞! 艦影を望遠カメラでも捉えました。博士、もう一度避難指示の要請を出しますか?』

 

「……いや。予定より少し早いが……カグツチ弐型改で迎撃する!

 美嘉君と莉乃君をハンガーに呼び出してくれ。15分後にブリーフィングだ」

 

 椅子から勢いよく立ち上がる博士。その表情はきりりと引き締まっている。

 

「続きは後だ。まずは制御コアを戦闘モードに」

 

「りょ、了解しました!」

 

 俺は博士の指示にしたがい、仮想体をカグツチ弐型の子機に接続するのだった。

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