決戦兵器の制御コアにされた俺のパイロット候補が全員ヤンデレで依存してくる   作:なっくる@2作品書籍化

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第17話 初めての共同作業(禍根アリ)

「……………」

 

 ダダダダダダッ

 

 僅かに揺れる弐号機のコックピットの中で、莉乃は一心不乱に私物のタブレットの画面に両手の指を叩きつけていた。

 

「えっと……莉乃?」

 

 一体何をしているのだろうか。戦闘機動中の人型決戦兵器の中で。

 思わず回線を切断したくなったが、立場上そういうわけにもいかない。

 

「…………あ、すみません優史さん。秘匿回線を繋いでいただいたのに、気付きませんでした」

 

 ぎらり

 

(ひえっ)

 

 こちらを振り向いた莉乃の瞳は、赤く充血している。

 眼鏡越しの瞳は大きく拡大され、普通に怖い。

 

「つ、次は君の出番だけど……何をしていたんだ?」

 

 恐る恐る問いかける。

 

「あ、いえ……ちょっと配信の準備を」

 

「配信?」

 

 この戦闘の様子は政府による確認の後、各種動画サイトに配信される予定だ。

 リアルタイムで中継する必要はないはずだが……。

 

「大丈夫です。配信するのは戦闘の様子ではなく……あのパパ活クソビッチ女の露出行動になります」

 

 ちらりと見えたのは、実写と見分けのつかない美嘉のフェイク映像。ロングコートを身に着け、素足にそのままローファーを履いている。

 とろんとした目をした美嘉は、行きずりの中年男性に向けてコートをはだけて……。

 

「ちょっと待ったああああああああああっ!?」

 

 投稿ボタンが押される寸前、俺は莉乃の回線を遮断することに成功したのだった。

 

 

 ***  ***

 

「まったく……なんか静かだと思ったら」

 

「ぷぅ。あの脳味噌マシュマロ女は、私を煽り散らしてきたんですよ?」

 

 フェイク動画のアップを辞めさせ、動画を削除した後。

 やけに可愛くぷりぷりと頬を膨らませる莉乃をなだめること数分。なんとは莉乃を落ち着かせることに成功した。

 

『敵フリゲート級、速力低下。接敵まであと3分』

 

 オペレーターの報告が、俺の耳に届く。

 よし、まだ時間はある。何とか莉乃をやる気にさせないと。

 

「それどころか、優史さんの撃墜バージンを横取りして……私が破りたかったのに……」

 

(こ、こいつら! 同じようなことを言いやがる!)

 

 これが気性難(ヤンデレ)の系譜か……背中を戦慄が走る。

 

「あの女、優史さんとお話しすることも出来ないくせに、大事な優史さんのハジメテを……」

 

 莉乃もまた、俺の仮想体と話せるのは自分だけだと思っている。

 ていうか、なんで俺が二人の攻略対象みたいな扱いになっているんだ……。

 

「フリゲート級の艦速は、カグツチ弐型より上だからな。まずは壱号機を使って脚を止める必要があったんだ」

 

「む~」

 

 理屈では理解していても、納得はいかないのか頬を膨らませたままの莉乃。

 何とか彼女の気を惹かないと……俺は”秘密”のキーワードを出すことにした。

 

「ここだけの秘密なんだけど……壱号機は最初に作られたこともあり、出力が弐号機より劣る」

 

「……む、つまり?」

 

 案の定、秘密というキーワードに莉乃の興味がこちらを向いた。

 

「カノン砲は艦砲からの流用で、弐号機のパイルバンカーの様に専用に開発された武装じゃない」

 

 ウソである。パイルバンカーは海底トンネル用のシールドマシンを改造したものだそうだ。

 

「……なるほど。壱号機の武装は傷ものの中古という事ですね。美嘉さんと同じく」

 

 中々に酷い言いぐさである。だが、莉乃の機嫌が良くなってきた。

 

「だから、フリゲート級にとどめを刺すには、弐号機のパイルバンカーが必要なんだ」

 

「確かに、優史さんの撃墜バージンはまだ破れていません。つまりあのマシュマロ女は、事前準備として『壁』を軟らかくしただけ……とんだ道化師ですね♪」

 

 あーうん、意味深な会話はやめようか。

 頭痛が酷くなる。

 

「それに、本命は最後にやってくる……ここで君の力が必要なんだ!」

 

 もう何が何やら。俺は半ばやけくそで莉乃の士気を鼓舞する。

 

「分かりました、私の王子様!」

 

 がこんっ

 

 機体の背面に背負われた巨大なパイルバンカーが、弐号機の右腕に移動する。

 

「行きます! 優史さんっ!」

 

「弐号機、エンジン出力最大!」

 

 こうなったらもう彼女に合わせるしかない。

 俺は弐号機の熱核バーストエンジンを全開にすると、フリゲート級に向けて突進させる。

 同時に壱号機も上昇させ、弐号機の直掩にする。

 

『フリゲート級、急速接近。敵艦発砲!』

 

 壱号機の狙撃が武装の過半を破壊したのか、フリゲート級から放たれた光線は僅かに二条。

 

「やらせるかっ!」

 

 その一つを躱し、一つを壱号機の防壁で弾く。

 

「ふ、ふふふふふっ。私と優史さんの共同作業のため、お膳立てありがとうございますっwwww」

 

 特大の草スタンプが壱号機に送られた直後、パイルバンカーの先端がぐにゃりと歪む。

 

『壱号機から弐号機に対し、レベルBの逆位相発現。行けるぞっ!』

 

「優史さんのハジメテは、私がいただきますっっっっ!!」

 

(あ、ああ……)

 

 仮想体の頭痛が限界を超え……どこか遠くなった意識の向こうで。

 

 ザクッ……!!

 

 弐号機のパイルバンカーがフリゲート級の装甲に深々と突き刺さり。

 

 ドガアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

 

 真っ二つになったフリゲート級は、大爆発を起こし四散する。

 

 こうして俺のプローバー撃墜バージンは、見事莉乃がゲットしたのだった。

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