決戦兵器の制御コアにされた俺のパイロット候補が全員ヤンデレで依存してくる 作:なっくる@2作品書籍化
「ああもう、疲れた……疲れたよ真彩」
プローバーのフリゲート級を撃墜した数日後。
俺はプライベートの仮想空間でイマジナリー真彩との脳内会話を嗜んでいた。
『あ、あはは……おにいちゃん本当にお疲れさまっ』
真彩の可愛い声が全身に染みる。
『おにいちゃんたちが頑張ったから、みんな大喜びなんでしょ?』
「それはそうだけど……俺は機体を操縦していただけだしな」
プローバーの攻撃を、耐え凌ぐしかなかった人類。
小型の戦闘機タイプならともかく、フリゲート級を撃墜したのはこの戦役が始まってから初めて。
パイロットである美嘉と莉乃の攻撃センスも抜群だった。
今回の戦闘は大々的に報道され、設計主任である満里奈博士はテレビやネットで引っ張りだこだ。
当のカグツチ弐型はオーバーホールと改修のため、しばらく実機訓練はお休みで俺も久方ぶりの連休である。
……まあ、脳だけで仮想体の俺は特にやることも無いんだが。
『そんなことないよ! おにいちゃんだからこそカグツチさんをあんな綺麗に操縦できて、女の子たちのメンタルケアもばっちりだったんだよっ!』
「ま、真彩~」
妹の優しい言葉が、俺のメンタルを癒していく。
ああ、早く真彩に会いたい。
『……んっ、わたしは大丈夫だから。二人をちゃんとケアしてあげてね? 大変な戦いの後なんだから、ね』
「真彩……」
先に二人の心配をするなんて、何て優しいのだろう。
本当に妹を……今すぐ取り戻す手段はないのだろうか。
『それじゃ、頑張ってねおにいちゃん』
ぱあああああっ
イマジナリー真彩の姿が薄くなっていく。
「……ふぅ」
俺は仮想体の目を開き、その身体を起こす。
ああ、分かっている。真彩はここにはいない。これは俺のメンタルの安定させるための儀式に過ぎない。
「…………絶対に助け出してやるからな」
可能性は低くとも、その為に俺は戦い続ける。
「取り急ぎ、真彩の言う通り二人のケア……だな」
未成年であることを理由に、美嘉と莉乃に対する取材は制限されている。
だが、二人が奮闘する映像が日本中に配信されたことで、二人の人気は急上昇していた。
人類を救う女神だと無責任に持ち上げるメディアもある。
「配信に慣れている莉乃はともかく、美嘉は大丈夫だろうか」
特に適度にむちむちした美嘉に対しては、少々過激なコメントも散見され、ダークウェブには彼女のAIエロ画像も溢れている。
……一部は某電脳少女が撒いたものかもしれないが、毎日俺の演算能力でお掃除しても追いつかない。
ギイッ
その時、俺の本体に設置されたセンサーが扉の開閉音を検知した。
「……誰だ?」
俺の本体が設置されている、中央指令室内の小部屋。
ここに入ることが出来るID持ちは、博士を除くとパイロットの二人と整備主任しかいない。
コツコツコツ
博士のヒールと異なるローファーの足音。
莉乃はスニーカー履きを好んでいるから、これは……美嘉か。
俺は小部屋の近くに誰もいないことを確認すると、マイクとカメラをオンにする。
「美嘉、お疲れ様。ゆっくり休めているか?」
予想通り、俺の視界に美嘉の姿が映る。
いつもの制服姿ではなく、丈の短い肩だしのワンピースに少しヒールのついたコインローファー。
色眼鏡をおでこに乗せていて、いつもより大人っぽいファッションだ。
「ん~、テレビ出演はけっこー大変だったけど面白かったよ?」
ん?
いつもより美嘉のテンションが低い気がする。
昨日放送された報道番組では、いつものハイテンションでインタビューに答えていた。もしかして、疲れているのか。
「そんなことよりも~、優っち?」
ぽふっ
俺の本体に設置された圧力センサーが反応する。
美嘉が俺の上に腰かけたようだ。
「み、美嘉?」
いつもふわふわしている美嘉だが、今日の彼女からはどこか圧を感じる。
機嫌が悪い?
取材で遅くなったから、おやすみのボイチャが出来なかったせいか。
「優っちのゲキツイばーじん、莉乃に取られたんじゃけど」
みしり
「ぐえっ!?」
俺の本体が格納された、チタン製のケースが軋む。もちろん美嘉の体重で壊れるわけないのだが、彼女の緑色の瞳が異様な光を放っている。
「美嘉と言うモノがありながら、ひどぉい」
(し、しまった!)
美嘉は執着心の強いタイプで、特に一番という言葉に弱い。
俺との初撃墜に並々ならぬこだわりがあってもおかしくない!
「す、すまん。あの時、壱号機は弾切れだった。補給に戻っていたら敵を取り逃がしてしまうし……何より、君を危険に晒したくなくて」
慌ててフォローを試みる。
くそ、フリゲート級の撃沈後、博士と研究センターの連中がお祭り騒ぎに突入したせいで美嘉と会話する時間を取れなかったのがマズかった。
今朝のボイチャでは普通だったから、油断していたっ!
「うんうん。優っちの優しさは分かるけどぉ、美嘉を一番にしてくれなきゃ」
ばちっ
「うおっ!?」
美嘉の右手が、俺の本体に繋がるACアダプターをコンセントから抜く。
もちろんバッテリーがあるのでシャットダウンはされないが、自動で省電力モードになるのでどこか息苦しくなる。
カチッ
「み、美嘉まてっ!」
「ふっふっふ、やめな~い」
ぱちっ、カチッ
ぞくりとする笑みを浮かべ、ACアダプターを抜き差しする美嘉。
こやつまさか、隠れSか!
(うおおおおおおおっ、つーかなんで俺の本体の電源がACアダプターなんだあぁああああっ)
この省電力プレイ(?)は、俺が彼女とのデートを了承するまで続けられるのだった。