決戦兵器の制御コアにされた俺のパイロット候補が全員ヤンデレで依存してくる   作:なっくる@2作品書籍化

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第21話 二人の衝突

 つかの間の休暇が終わって数日。

 実機が改修とオーバーホールで使えないため、基礎トレーニングとシミュレーター訓練を中心に行っている最中にその事件は起きた。

 

「ちょっと美嘉さん! 無駄弾を撃たないでくださいって言いましたよね!」

 

 弐号機のシミュレーターから出るなり、美嘉に詰め寄る莉乃。

 形の良い眉はきりりと吊り上がっていて、相当ご立腹の様だ。

 

「え~、テキちゃんは全部倒したんだから~、いいじゃん」

 

 対する美嘉は面倒くさそうに、サイドテールを人差し指にクルクルと巻き付ける。

 

「良くありませんっ! そもそも、フリゲート級は平均して10機の艦載機を積んでいるんですから、1機落とすのに3発も使っていては、弾切れになってしまいます!」

 

「ん~、そうなん? そんなん知らんし」

 

「ブリーフィングで博士が説明したでしょう!」

 

 ばんっ!

 

 興味なさげな美嘉のそぶりに、苛立った美嘉がシミュレーターのコンソールを叩く。

 

「シミュレーターと実戦は違うんです!」

 

 ……莉乃の言葉通り、今日の訓練で俺たちが相手をした敵の艦載機は3機。

 

 だが、先日撃墜したフリゲート級の残骸を解析することで分かった事実がある。

 奴らの艦艇の中でも小型のフリゲート級すら、最大10機の艦載機を搭載しているのだ。

 この事実をシミュレーターに反映できればいいのだが、性能的な限界があるらしい。

 

「そーいわれてもぉ、めっちゃ素早く動くせんとーきに当てるのは難しいんだぜ? あ~、のーきんオタクには分からんか~」

 

 ピキッ

 

 煽りを含んだ美嘉の言葉に、莉乃の額に青筋が浮く。

 

(ひとまず、後でフォローしておくか)

 

 少々感情的になっているが、パイロット同士の意見交換である。

 そう判断した俺は、壱号機のスペック表を眼前に展開する。

 

(こればっかりは、なぁ)

 

 壱号機の携行可能弾薬数は強装薬の超長距離弾が3発、先日開発された特殊弾倉を装備することで中距離弾を携行することが可能になったのだがそれも最大で10発。

 フリゲート級が全艦載機を展開してきた場合、百発百中の精度が求められる。

 

「ともかく! ゆう……博士が改修した射撃支援プログラムのお陰で、中~長距離レンジの射撃精度は向上しているんです。次回もこうだと困りますよ?」

 

 いつの間に印刷していたのか、射撃支援プログラムのスペック表を美嘉に手渡す莉乃。

 

「はぁ。テキちゃんがけーさん通りに動くわけないじゃん? ウチのセンスで……当てるんよ」

 

「それじゃダメです。敵の行動パターンを解析すればもっと射撃効率が上がるはずです」

 

 理論派の莉乃と感覚派の美嘉。

 中々そのギャップは埋まりそうになかったが……。

 

「……あ~、もしかして莉乃っち。ウチに嫉妬しとるん~? ゲキツイすーはウチがあっとー的だもんねぇ。制御コアちゃんのデータも、どんどんウチに最適化されとるし~♪」

 

 にやり。口角を上げた美嘉が、シミュレーターの横に置かれた制御コアの子機(※俺)にもたれかかる。

 

「……はぁ?」

 

 その途端、莉乃の纏う空気が硬化した。

 

(や、ヤバい!)

 

 制御コア(俺入り)を巡るマウント合戦。二人の喧嘩を止めたいが、対面で会話している時に声を掛けるわけにはいかず……。

 

「そんなわけないでしょう? 生体系AIモジュラーの知識もないくせに、適当なこと言わないでください。そもそも、サブフレームの調整は私も手伝っているんですから、脳味噌マシュマロ美嘉さんなんかより圧倒的に私の存在が制御コアに刷り込まれています」

 

「あぁ!?」

 

 今度は、美嘉の纏う空気が硬化した。

 いつものふわふわっぷりはどこへやら。これじゃ姫○のヤンキーである。

 

「……いんや~、”パパ”のために我慢しとったけど~、やっぱ眼鏡陰キャちゃんがウチの舎弟ってのは無理あるんよねぇ」

 

「……人類を救う剣が身体が豊満なだけの『馬鹿』ってのはやはり問題ですね。納税者への返礼品として性的消費されたらいかがですか? 私がいくらでも動画を作りますよ?」

 

「ほほ~? ウチのえろーす動画をネットに流しとる癖にそういう事言う? ま~、ちんちくりん眼鏡陰キャはじゅよーがなくて楽じゃねぇ」

 

 ビキビキビキッ!

 

 お互い後に引けなくなったのか、罵声の応酬の後、二人の視線がぶつかり火花を立てる。

 

『シミュレーターの再調整のため、本日の訓練は終了します。お疲れさまでした』

 

 このままじゃ殴り合いの喧嘩になるかも……そんな空気を吹き払ってくれたのは、シミュレーター室に響き渡るアナウンス。

 

「「ふんっ!」」

 

 ガンッ×2

 

 それぞれ手近な壁を蹴った二人は、反対方向の出口から去っていく。

 

「お、おおお……」

 

 どうやって二人をフォローすべきか。

 俺は思わず制御コアの中で仮想体の頭を抱えるのだった。

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