決戦兵器の制御コアにされた俺のパイロット候補が全員ヤンデレで依存してくる   作:なっくる@2作品書籍化

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第22話 三人目を探そう

「さて三俣君。君を呼び出したのはほかでもない。カグツチ弐型のパイロットである美嘉君と莉乃君だが……少々不仲じゃないかね?」

 

「今さらそれを言うんですかアンタはああああああああっ!!」

 

 美嘉と莉乃の衝突事件から数日後。

 もうすぐ弐型のオーバーホールと改修が終わるタイミングで、俺は博士に呼び出された。

 開口一番かけられた言葉に、思わず俺は全力で突っ込む。

 

「あれから、大変だったんですよ!」

 

 寮の自室に戻った莉乃は、徹夜で大量の美嘉のエロ動画を作りネットにばら撒き、熱心なフォロワーを扇動して美嘉の醜聞(=パパ活歴)をSNSに書き込みまくった。美嘉は美嘉で、基地の知り合いや昔の”パパ”の伝手で莉乃のネット工作を通報しまくる。

 

 さらに美嘉は人好きのする甘え上手なので基地の厨房を預かるオバちゃんたちと仲が良く、莉乃の食事に彼女の苦手なピーマンを大量に仕込むという嫌がらせまで仕掛けていた。

 

「はっはっは、火消しご苦労だねぇ」

 

「全く……」

 

 数日にわたるネット工作の甲斐あって何とか掃除は完了したのだが、いまだ二人の冷戦は続いている。

 

「……別に二人が仲良しこよしである必要はない」

 

 ニヤニヤと俺の反応をカメラ越しに見つめていた博士だが、すっと真面目な表情になる。

 

「ヤンデレシフトの為には嫉妬や対立といった負の感情も大事だからねぇ」

 

 ヤバそうな薬品が並ぶ保冷庫からココア缶を取り出した博士は、アイスココアを作ると椅子に腰かける。

 

「とはいえ、大きすぎる感情の振れ幅はリスクにもなりうる。将来的に……例えば奴らの本拠地を攻める時などには長期間の作戦行動も想定されるのだが。その最中に深刻な仲違いをして”折れて”しまえば、そこで終わってしまう」

 

「どういうことですか?」

 

「うむ! そもそも、オムニゲート機関に影響するヤンデレシフトとは……」

 

 ……そのあと10分ほど講義を聞かされたが、プローバー艦艇の撃破が可能なヤンデレシフトもとい逆位相を発生させるためには、嫉妬・依存・マウントなどの感情の揺らぎが必要で、それが俺やライバルに向けられることでハレーションが発生し、効果が増大するとのことだ。

 

「だけど、お互いが”拒絶”してしまえば感情の壁が揺らぎの発生を止めてしまう……それではヤンデレシフトは発生しないという事ですか?」

 

「その通り! この微妙なニュアンスが分かるとは、流石だねぇ!」

 

 なんとなくわかる話である。

 例えばお互い嫉妬・怨嗟・依存などが渦巻く地下アイドルグループでも、その感情をぶつけあいながら切磋琢磨していけばチームとして向上していく。

 だが、コイツのことはもういい、理解するつもりもない、などと壁を作ってしまえばチームは空中分解する……そういう事だろう。

 

「流石にワタシも美嘉君と莉乃君の仲を全部君に取り持たせるのは、少々きついんじゃないかと思い始めてねぇ」

 

「もっと早く気づいて!?」

 

 ここ数日、全く気の休まる暇のなかった俺である。

 幾ら電脳コアとはいえ、本体は人間の脳である。睡眠時間も必要なのだ。

 

「そこで、三人目のパイロットをワタシたちのチームに迎えたい。ちょうど、先日の戦闘で得られたデータにより、参号機を使えるめどが立ったことだし」

 

 ヴンッ

 

 博士が仮想体の右手を振ると、空中に試作機の姿が投影された。

 美嘉たちが乗る壱号機、弐号機より一回り大きく、円筒形のごつごつしたパーツと、機体長の倍以上ある長大な砲が目に入る。

 砲は火砲と異なり、クリームを抜いたウエハースのように2枚の板が向い合せに並ぶ変わった形をしている。

 

「これはまさか?」

 

 数年前にニュース映像で見たことがある。

 当時の自衛隊が、初めて護衛艦に装備したという……。

 

「そう、大出力の超電磁砲(レールガン)さ!」

 

 博士の赤銅色の瞳が、ギラリと光る。

 

「こいつは遠距離射撃ではなく、38㎝の大口径砲弾を零距離でぶち込む脳筋装備だ。奴らの装甲を破砕する事を目指した野心作だったのだが、そもそもそこまで近づけなくてね。美嘉君たちが発生させたオムニゲート機関の逆位相で

 サポートすれば、安定して発射できるに違いない」

 

「な、なるほど」

 

 つまり、三機一体で放つ必殺武器、という事だ。

 ロボット物のお約束である。

 

「で、あるからして。試作機……参号機のパイロットには、そこまで気性難(ヤンデレ)は求められない。むしろ、美嘉君と莉乃君の緩衝材となるような人材を探そうと思う」

 

「……本当でしょうね?」

 

 疑いの視線を博士に送る。

 博士のことである。ふたを開けたら過去五人くらい刺している超気性難女が出てくるとか……。

 

「おいおい、信用がないねぇ? このワタシが過去、君に対して適当な事を言ったことがあったかい?」

 

 ええ、沢山。

 そもそも名前をちゃんと覚えてください。

 

 至極まっとうな抗議の声は、最上位権限で封じられた。

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