決戦兵器の制御コアにされた俺のパイロット候補が全員ヤンデレで依存してくる 作:なっくる@2作品書籍化
「う、うむ。礼奈子君からは、丁重な謝罪と彼女の生い立ちを聞いたぞ」
二時間ほど後。
俺と博士は、いつもの仮想空間で向かい合っていた。
「なんというか、予想の斜め上だったな」
ちなみに、俺に対しても丁寧な謝罪が届いた。
お恥ずかしいところを見せてしまった。経歴の説明を博士に依頼するとの言葉を添えて。
「清家 礼奈子(きよか れなこ)、出身は奈良県。旧家である清家家の三女として生まれ、兵庫県の全寮制ミッション系一貫校に通う」
ここだけ聞くと、良いところのお嬢様だ。
彼女の自己紹介とも矛盾がない。
「だが、彼女が高校三年生になった春。突如ホストにハマる」
「えぇ……」
ほら、雲行きが怪しくなってきた。
説明を続ける博士の声色がだんだん疲れてくる。
「最初は清家家から送金されるお小遣いの範囲で遊んでいたのだが……だんだんとそれだけでは足りなくなり、家のクレカでこっそり支払っていたらしい。目的は彼女が担当(ダーリン)と呼ぶ駆け出しのホストをNo1にする為だったらしいな」
「うわぁ」
あまり詳しくはないが、業界で禁じ手ともいわれる色恋営業だろう。
俺が担当していた地下アイドルグループの中にも、同様にホストにハマったメンバーがいたことを思い出す。
「ある日実家にそのことがバレ、彼女は末子だったという事もあり清家家から勘当された」
「で、でしょうね」
それなりの名家ともなれば、身内のスキャンダルには敏感だ。
特に後継ぎでもない末っ子となれば……。
「だが礼奈子君は、実家から支給された手切れ金すら担当につぎ込んでしまう。まるで枷から解き放たれたように」
「うげぇ」
彼女を縛る要素が無くなり、更にのめり込むようになった……最悪のパターンである。
「流石に資金が尽き、ホストのグループが運営しているキャバクラに体験入店したその日、プローバーの初攻撃があった」
『災厄』とも称される、超高高度軌道からの一斉攻撃。
俺がこんな姿になった要因でもある。
「神戸市の繁華街で働いていた彼女は、たまたま地下に飲み物を取りに行っていて難を逃れたらしい」
当時の被害状況を投影する博士。
彼女の働いていた店は爆心地から少し離れており、周囲の地形が防壁になったのか地下室は無事だったそうだ。
「だが彼女の担当は周囲の街ごと消滅……一人生き残った礼奈子君は戦略自衛隊の軍属として働きだすことになる。当面の生活費の工面と……借金の返済のためにな」
「……借金?」
まさかホストのツケだろうか?彼女が通っていた店は吹き飛んだのに?
「たまたま運営会社の社長は生き残っており、ツケは引き継がれたらしい……まあ、そいつはウチの予備会計で精算したがね」
「そ、そうですか」
聞いてみると、なかなかの波乱万丈人生である。
気性難というか、苦労人と言うべきか……半分くらい自業自得ではあるけど。
「とまあ、そのせいかどうかは分からないが……それから酒を飲むと”担当”の姿が見えるようになったらしい」
「……え?」
「三俣君。彼女の担当の姿は、君に似ていてユウジという名前らしい……都合の良いことにな」
「……えぇ?」
なにその迷惑過ぎる奇跡。世の中には3人自分とうり二つの人間がいるとはいえ……。
「そこでだ」
どこか憐れみを含んだ視線で俺を見てくる博士。
なんだ、このマッドサイエンティストは俺に何をさせようとしている?
「礼奈子君は定期的にアルコールと担当成分を補充しないと禁断症状が出て手が震えるらしい。
つまり、君は礼奈子君の担当として、彼女のケアを行えば……礼奈子君はほかの二人を”ある程度”統率してくれるだろうし、三機一体で超電磁砲も使える。君の負担も減って一石三鳥! ああ、なんて完璧なんだワタシ!!」
「いや、絶対俺の負担は増えますよねえええええっ!!」
博士の無茶な提案に、思わず絶叫する。
幾らまともモードの礼奈子とはいえ、美嘉と莉乃のメンタルケアを全て任せることはできないだろう。
むしろ二人が嫉妬する分、ケアの頻度を増やすことになるかもしれない。
「大丈夫さ。カグツチ弐型のパイロットチームの安定度は、間違いなく増す」
「俺のメンタルの安定度はああああっ!?」
「…………頑張ってくれたまえ」
俺の抗議は最上位権限で封じられる。
かくして、俺が操るカグツチ弐型のパイロット陣にとびっきりの気性難……というか二重人格?が加わるのだった。