決戦兵器の制御コアにされた俺のパイロット候補が全員ヤンデレで依存してくる   作:なっくる@2作品書籍化

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第27話 妹の夢を見た

『うわぁ! 100個限定のラッコちゃんポシェット! これが欲しかったの!』

 

 ラッコを模したもふもふのポシェットを手にして、歓声を上げる真彩。

 明石海峡を渡ってきた潮風が、少し癖のあるふわふわの真彩の後ろ髪をたなびかせる。

 

『ホントおにいちゃんのお陰だよ! ありがとう、おにいちゃんっ♪』

 

 きゅっ

 

 ゴキゲンの真彩と、手を繋ぐ。

 その手は少ししっとりとしていて、感じる体温もまさしく本物。

 

「真彩のためなら、いくらでも頑張れるからな! さあ、ラッコを見に行こう」

 

『うんっ!』

 

 そのまま、リニューアルオープンした水族館の中へ。

 

(ああ、なんだ)

 

 謎の機械生命体の攻撃なんて、ウソだったんだ。

 あれは、俺がプロデュースしている地下アイドルのメンバーに勧められて見始めたアニメのお話。

 その内容を夢に見ていただけに過ぎない。

 だって真彩はここにいるじゃないか!

 

 ウィーン

 

『ラッコたちがついに帰還!!』

 

 そう書かれた自動ドアをくぐり、水族館のメインフロアへ。ここには、明石海峡を模した巨大水槽が……。

 

「……あれ?」

 

 目の前に広がるのは、水槽ではなく明石海峡の光景。右手奥側に、巨大な明石海峡大橋が見える。

 

「物販は9時半からだから、それまで近くの店で休憩しよっ♪」

 

 いつの間にか真彩は俺の手を離しており、向こうに見える海に面したカフェテリアに向かって掛けだす。

 

 おい、真彩、どこに行くんだ?

 

(…………え?)

 

 なぜか声が出ない。

 それに今真彩が言った言葉は、俺の台詞じゃなかったか?

 

「どう した の、おにい ちゃん? 早く こっちに」

 

 真彩の姿がぶれる。

 駄目だ、そっちに行っちゃ……。

 

 全てが終わってしまう。そう思った瞬間、一条の閃光が目の前にそびえる明石海峡大橋に直撃した。

 

 カッ!!

 

 無音。ただ光だけが炸裂したと感じた直後、轟音と衝撃が俺の全身を打つ。

 

「きゃあああああああっ!? おにいちゃんっ!」

 

 微かに聞こえた真彩の悲鳴と、こちらに迫ってくる橋の巨大構造物。

 

 ドガアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

 

 

 ***  ***

 

「う、うわああああああああああああああっ!?」

 

 絶叫と共にベッドから飛び起きる。

 

「ゆ、夢?」

 

 全身に汗をかいていて気持ち悪い。

 周囲を見回せば、8畳ほどの何の変哲もない洋室。

 窓の外は真っ暗で、電気も付いていないので室内は薄暗い。

 とりあえず電気をつけなければ。

 

 ぱっ

 

 そう思った瞬間、室内の蛍光灯が付いた。

 

「……ああ」

 

 ようやく思い出した。

 俺は三俣優史……対プローバー決戦兵器であるカグツチ弐型改の生体制御コア。

 ここは仮想空間内に構築した、俺の私室だ。

 肉体を持たず、脳だけが制御コアに接続された俺は、思考制御で仮想空間を制御できるんだった。

 

「今日の日付は……」

 

 西暦2030年6月22日。

 参号機の超電磁砲試射テストが成功裏に終わり、参号機の実戦参加が決定して10日ほど。

 そして……。

 

「定期テスト期間だから、俺は休みか」

 

 そう、カグツチ弐型改の三人のパイロットはみな高校生である。

 彼女たちは学生の一大イベントの一つである定期テストに挑んでいた。

 

「非日常と日常の差で頭がおかしくなりそうだぜ……」

 

 昨日は人類存続のためヒト型決戦兵器の操縦訓練をし、今日は学園の定期テスト。極力日常を維持するという政府の方針とはいえ、温度差で風邪を引きそうだ。

 

「今は三人とも試験中か……」

 

 つまり、メンタルケアをする必要もない訳で。

 

 ぱしゅん

 

 俺は服装を普段着に切り替えると、仮想空間内に設置されたソファーに腰かける。

 

「俺のメンタルケアをしよう!」

 

 そう、三人のパイロットのケアをし、人類を勝利に導く俺のメンタルも大事である。俺は大きく深呼吸すると……イマジナリー真彩と会話をすることにした。

 

 

 ***  ***

 

『おにいちゃん! 毎日頑張っているみたいだねっ!』

 

 真彩の柔らかな声が耳に届く。

 

 ぱああっ

 

 同時に、真彩のイメージが俺の目の前に現れる。

 くりくりとした大きな瞳に、少し癖のある茶髪。

 ……分かっている。このイメージは俺の脳が制御コアの演算能力を使って創り出した幻影。

 でも、相変わらず俺の妹は可愛いなぁ。

 

「まーな。パイロットの子たちが個性的で困ってるけどな」

 

『あははっ♪ 聞いたよ~、今度はオトナなお姉さんなんだよねっ!』

 

(……んっ?)

 

 真彩の言葉に、首を傾げる。

 俺は三人目のパイロット、礼奈子のことをイマジナリー真彩に話しただろうか?

 

(まあ、元が俺の妄想なんだから、そんなこともあるか)

 

 そう思い直した俺は、真彩との会話を続ける。

 

「普段はいいんだけど、酒癖が悪いのがね。それに打ち上げと称してしょっちゅう俺のコックピットに……いや、これは駄目駄目。真彩にはまだ早い!」

 

 礼奈子の”打ち上げ”はヤバい。R-18である。数日前なんて、チーズと(ピー)をコックピットに持ち込んで……。

 

『え~、気になるなぁ。教えてよおにいちゃんっ。礼奈子さんにも会ってみたい~』

 

 両手を合わせ、可愛くお願いされてもダメである。

 万が一、真彩を礼奈子に会わせる未来が来たら、博士に倫理バリアー(?)を作ってもらえるようにお願いしよう。

 

「そもそも礼奈子はいま試験中だからな? それより真彩はどうなんだ? 英語を頑張らなきゃ目標の六甲女子に入れないぞ?」

 

『うえ~!? それを言うのはずるいよおにいちゃん!』

 

 俺と違って成績優秀な真彩だが、英語だけは比較的苦手だった。

 俺はなおも礼奈子に興味を示す真彩を、お勉強ネタに話題をずらして誤魔化すのだった。

 

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