決戦兵器の制御コアにされた俺のパイロット候補が全員ヤンデレで依存してくる 作:なっくる@2作品書籍化
「と、いう事で……試験期間が終わったら、参号機の実戦投入。中ボスさんを倒すらしいぞ」
『ふんふん』
十分後、会話の内容はカグツチ弐型をはじめとした、俺の仕事のことに移っていた。
「ついでに、防御面の改修もするらしい」
ヴンッ
改修案の詳細を、空中に投影する。
『ほえ~』
博士からは、毎日のように膨大な資料が送られてくる。
殆どは、俺と接続している制御コアのサブAIに学習させるのだが、俺自身もある程度理解しておく必要がある。
イマジナリー真彩との『会話』は、内容の整理にとても役立っていた。
『補助エンジンを追加して、出力を大幅アップ。バリヤーさんを、攻撃の時にも貼れるようになるんだね』
「その通り!」
かなりの理系女子だった真彩。
資料は概要ベースだが、一目で内容を把握したようだ。天才かな?
「ま、補機だから頼りすぎるのも危ないけどな」
熱核バーストタービンエンジンとオムニゲート機関の補機を搭載することで、攻撃の際にも防壁を貼れるようになる。
三機一体の運用が基本だが、攻撃と防御を同時にできるのは大きい。
『すっご~いっ! そしてそれを動かしているのがおにいちゃん! 人類の救世主だねっ!』
「こらこら、真彩。大げさだぞ?」
プローバーを撃破する為には、美嘉たちパイロットのヤンデレシフトが必須だし、機体の整備や改修は博士や研究センターのスタッフがやってくれている。
俺はある意味ゲーム感覚で機体を操っているだけに過ぎない。敵に直接対峙している分、美嘉、莉乃、礼奈子の方が大変だろう。
『そんな事ないよ! おにいちゃんは女の子たちのメンタルケアもしてるし、本当に凄いよっ!』
「そ、そうか?」
真彩はいつも俺のことを肯定してくれる。
地下アイドルのプロデューサー時代、グループ内の人間関係に悩んだ時も励ましてくれたっけ。
「……今のことろ、三人に優しい言葉をかけて依存させる悪役ホストだけどな」
博士のサンマタ君呼ばわりを笑えない俺。
『そうしなきゃいけない理由があるんでしょ? それにおにいちゃんなら……絶対最後には女の子たちを笑顔にするよ!』
「真彩……」
妹から、特大のプレッシャーが飛んで来た。
全てが終わったら、ちゃんと三人に向き合わなくては。改めてそう心に決める。
『それじゃ、そろそろ時間だから……またねっ!』
気が付いたら、数時間が経っていた。
イマジナリー真彩との会話はCPUリソースを沢山食うので、名残惜しいが終了した方がいいだろう。
「そうだな。真彩……絶対助けてやるからな」
『うんっ、待ってる!!』
ぱああ
真彩の姿が薄くなっていく。
(んっ?)
姿が消える直前、真彩の姿が一瞬大きく見えた。
まるで、莉乃と同じ、高校生1年生くらいになったような……。
眼を擦ると、その幻影は消えてしまった。
「……ま、気のせいか」
俺はソファーに横になると、軽く目を閉じた。
*** ***
「微弱な精神感応波を検知……」
赤銅色の瞳を細め、モニターの画面を見る満里奈。
「三俣君が覚醒していて、本人の私室で休息している時に見られる波形だな」
そう言うと、テーブルに置いたココアをひとくち。
飛び切り甘いココアが、満里奈の思考を加速させる。
「やはりアレか。彼の妹か」
ピピッ
三俣優史のログを呼び出す。
制御コアとして、人間としての膨大な思考ログ。
彼は自分のメンタルケアと称し、自分のイマジナリー妹と脳内で会話をしているそうだ。
『ウチの真彩は最高に可愛いんですよ!』
聞きもしないのに、耳にタコができるくらい聞かされていた。
「兄妹仲が良くて結構なことだ……正直、ワタシとしては怖いのだが」
妹のことを語りだすと優史は饒舌になり、視線は何もない中空を見つめる。
「まったく、制御コアに気性難は求めてないんだがねえ……よし」
ダウンロードした膨大な思考ログを、AIでフィルタする。
残ったものは完全に優史のプライベート。制御コアの能力で高度に暗号化されている。
「……さて」
一瞬、満里奈の指が止まる。
もちろん、制御コアにの優史に対して絶対的な上位権限を持つ満里奈だ。
幾ら暗号化されていようと彼の思考を覗くことはたやすい。
「まあ、いまさらだな」
彼の脳を改造し、カグツチ弐型の制御コアにした。
さらに、気性難のパイロットを集め彼にメンタルケア……ぶっちゃけ三股させているのだ。
「ふぅ、いつか報いは甘んじて受けよう……おお!」
ため息一つ、優史の思考ログを復号化した満里奈は、驚きの声を上げる。
「これがイマジナリー妹君か……まるで本物の仮想体だな」
優史の仮想体とそん色ない、高精度の仮想体イメージ。
しかも会話も、本物の人間の様に流暢だ。
「いやはや、ガチのシスコンは怖いねぇ……」
会話の内容も、日常のことやカグツチ弐型での訓練のこと。
たわいのない内容が多い。
「やれやれ、コレじゃワタシがただの盗聴魔じゃないか」
普段パイロットたちや政敵の通信を傍受しまくっているマッドサイエンティストとは思えないセリフを口にし、ログを閉じようとした満里奈だが。
「……ん?」
微かな違和感を感じ、手が止まる。
「これは、通信波……か?」
ノイズとも判断できそうな、微弱な通信波が放たれた記録がある。
そのタイミングで、優史はネットに繋いでないし、無線通信を利用した形跡もない。
「ふむ……」
何か気になる。
そう思った満里奈は、優史のログ監視レベルを一段階上げるのだった。