人型決戦兵器に改造された俺氏、美少女(但しヤンデレ)パイロット達のお世話をしながら世界を救う   作:なっくる@2作品書籍化

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第34話 秘密の二次会と優史の決意

『ちょっと博士! さっきのはどういうことですか!』

 

 パーティがお開きになった後、博士は二次会の会場へと向かっていた。

 

『せっかく三人の関係は安定していたのに、更に焚き付けるなんて!』

 

「そんなに大きな声を出さずとも、聞こえているさ」

 

 右耳に装着したイヤモニを押さえ、囁く博士。

 俺はカグツチ弐型の制御AIの仮想人格として二次会への参加を命じられたのだが、会が始まるまでの時間を利用して博士に抗議を試みていた。

 

「安定か……確かにそうなのだが、当分の間これ以上カグツチ弐型を増産できない以上、我々が相手取れるのは敵の星型戦闘機やフリゲート級、全力出撃しても旗艦級にとどまる」

 

 ヴンッ

 

 俺の視界に、敵……プローバーの勢力図が投影される。

 先日撃墜した旗艦級の識別番号は、37。地球の周回軌道には、ベースを中心に63隻の旗艦級が配置されており、月面の敵本拠地には少なくともその10倍以上が確認されているという。

 

『そ、それは……確かに』

 

「”上”の連中は、ワタシたちのカグツチ弐型を使って軌道上の旗艦級をある程度減らす。そうすればオムニゲート防壁は鉄壁なのだから、人類社会の復興を優先すべき……と主張する者が多いんだ」

 

『なるほど……』

 

 彼らの主張も分からなくもない。

 敵であるプローバーは軌道上から攻撃するだけで、地上軍を派遣して来たことはないそうだ(そもそも、奴らの艦艇を操る『個体』とのコンタクトすら出来ていないが)。

 オムニゲート防壁で完璧に攻撃を防げるなら、無視して地上を復興する……宇宙には出られないが、人口の8割以上を喪った人類に宇宙など不要という事だろう。

 

「ワタシとしては、家畜の安寧なぞ、まっぴらごめんなのだがね」

 

 ぱたん

 

 博士は専用の更衣室に入ると、羽織っていた白衣を脱ぎ、ロッカーからパンツスタイルのスーツを取り出した。

 

『ちょ、博士!?』

 

 俺と会話中にもかかわらず着替え始めた博士に慌てて目を閉じるものの、思ったより成熟したボディーラインがイヤモニに仕込まれたカメラを通して目に入ってしまった。

 

「ふふふ♪ まあ、人類が動物園の見世物として生きる選択をしたとして……現実的な課題もあるんだがね」

 

 どこか楽しそうな声色で、説明を始める博士。

 微かに聞こえる衣擦れの音が落ち着かない。

 

「以前も言ったように、行き過ぎた安心感はオムニゲート防壁の防御力に悪影響を及ぼす。それに」

 

 ヴンッ

 

 新たなグラフが、俺の視界に投影される。『極秘』と書かれたそれは、とある資源の消費見込みを表しているようだ。

 

「核融合炉の燃料となるヘリウム3は月面にしか存在しない。プローバーの攻撃前に回収した分を使い切ってしまえば……もちろん合成は可能だが、エネルギー収支は必ず赤字となる。つまり」

 

 ピピッ

 

 じりじりと右肩下がりのグラフが伸びていき、ヘリウム3の保有量が0になるのは、およそ10年後。

 

「10年もあれば、革新的な技術が開発されるだろう。それより、復興と人心の安定を優先すべき……支持率のみを気にした、無責任な政治屋の言葉さ」

 

 ばたん

 

 着替えを終え、姿見に映った博士の姿は、いつものマッドサイエンティストではなく……。

 

「さて、行こうか。もう一つの戦場へ」

 

 人類の未来を憂う、若手科学者の物だった。

 

 

 ***  ***

 

「はぁ~、疲れたよサンマタくぅ~ん」

 

 ぽふっ

 

 二時間後。

『二次会』を終えた博士は、私室のソファーにダイブする。

 

 しゅるるっ、ぽんっ

 

 胸元のスカーフを緩め、ヒールの付いたシークレットシューズを放り投げる。

 普段の博士の様子とは異なる子供っぽい所作だが、サンマタくん呼ばわりを突っ込む気はない。

 

『お疲れさまです。いや、マジで』

 

「なんだい~? やけに労わってくれるじゃないか」

 

 冷蔵庫からアップルシードルを取り出し、グラスに注ぐ博士。

 

『そりゃ、あの様子を見ていたらそう思いますよ』

 

 博士が出席した”二次会”は、最初のパーティとは全く違うものだった。

 

(出席者がガチすぎたぜ……)

 

 研究センター内に存在する貴賓室で催されたそれは、戦略自衛隊統合幕僚長……つまり制服組トップの挨拶から始まり、内閣防衛大臣、防衛産業集合体の理事長、外務大臣などなど、対プローバー戦役のトップが顔をそろえていた。

 

(それどころか)

 

 会の後半では、内閣総理大臣を伴った皇太子殿下のご臨席を賜り、博士は今後の対プローバー戦略の概要を国のトップに対して説明したのだ。

 

『博士って、凄い人だったんですね』

 

「おいおい、今さらかね?」

 

 グラスを手に、おどけた態度を取る博士。

 壇上の博士は堂々と、それでいて分かり易く。カグツチ弐型の更なる改修プランと逆位相変換攻撃(流石にヤンデレシフトとは呼んでいなかった)を用いた敵補給基地の破壊計画を披露した。

 その様子は、普段人を食ったような態度の博士を知っている俺でも、見惚れるくらいだったのだが……。

 

『……意外に、反対意見も多かったですね』

 

「まあね。特に外務省と財務省だ」

 

 不機嫌そうに、鼻を鳴らす博士。

 がりっ

 ロックアイスを嚙み砕く音が、私室の中に響いた。

 

「外務省は我々の技術を諸外国にもっと提供するよう主張し、財務省は膨張を続ける軍事費にケチをつけ、民事再生に重点を置くべきと主張する」

 

『総務省は賛成なんですね』

 

 民事再生を重視するなら、総務省も反対に回りそうなものだが……政治の世界には疎い俺だが、なんとなしに疑問を口にする。

 

「彼らは資源に余裕がなく、先細りであることを把握しているからね。余裕があるうちに攻勢に出るべきと支持してくれている。特に厄介なのは外務省さ。今の総理は外務省出身のア○ポチだからねぇ」

 

 ぽふん

 

 問題発言を放った博士は、グラスを一気にあおるとソファーにうつぶせになる。

 

「殿下はなるべく早く補給基地を破壊して欲しいとおっしゃるし財務省はしょっちゅう監査を仕掛けてくるし外務省に至っては密入国させた産業スパイを放ってくる始末……なんでワタシがここまで苦労しなきゃならないんだ。○メポチ本家とクソ姉め…………ぐぅ」

 

 そのままぶつぶつと愚痴を漏らしていた博士は、いつのまにか穏やかな寝息を立てていた。

 

『………………』

 

 博士には博士の、大変な苦労がある。

 生活支援ロボに毛布を持ってこさせ、博士に掛けてやる。

 

(俺の方でも動いてみるか)

 

 俺たちの将来のためにも、博士を支援した方がいい。

 なにより、一人政治の世界で戦う博士をなにかサポートできないか。

 俺は自身の仮想空間に戻り、思案を巡らせるのだった。

 

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