人型決戦兵器に改造された俺氏、美少女(但しヤンデレ)パイロット達のお世話をしながら世界を救う 作:なっくる@2作品書籍化
「まずは、鬼島の周辺を洗ってみましょう」
「了解だ。くれぐれも慎重にな」
「ふふ、優史さんがいるから安心ですよ」
翌日夜。
二人の秘密の仮想空間に集合した俺たちは、さっそく準備を開始していた。
「緊急時の復元ポイントを設定。パーソナルファイアウォールをレベルSGに設定」
「侵入経路のかく乱と、ログの消去は俺に任せてくれ」
「ありがとうございます。さすが三機のカグツチ弐型を操る優史さんの演算能力はダンチですね」
演算能力は高くとも、専門知識はさっぱりな俺を莉乃がサポートしてくれる。
こういう電脳諜報(?)活動を行うには、俺と莉乃は良いコンビと言えた。
「よし。制御コアを待機モードにして……一部プロセッサを分離」
ヴンッ
俺の脳を中心としたカグツチ弐型改の制御コアは、数百に及ぶサブCPUを持っている。そのほんの一部を周囲から切り離し、俺の仮想体を移動させる。
これで俺は、電子の海の中で『個』として活動できる。
「プローバーからの逆浸食対策に準備された緊急モード……でしたっけ。こういう用途に最適ですね」
A級機密に属する内容を、いつの間にか知っている莉乃。
さすがの手管だが、どこから手に入れたのやら。
「そのかわり、アンチウイルスに取り付かれてしまえば、本体にダメージを受けるけどな」
博士に悟られないためには、この手段を取るしかない。
久々に仮想空間で『独り』になったので、少々心細くなる。
「ふふ、私が守りますよ。それでは行きましょう」
きゅっ
穏やかな笑みを浮かべ、俺の手を取る莉乃。
その温かさに、ふと母性のようなものを感じてしまう。
(……ふぅ、優史さんの眼差し、堪りませんね。ああ、コアから独立しているのならこのまま私の秘密領域に連れ込んで飼う事も? いや、いけません。やはりリアルで触れ合わないと。(ピー)で私の(ピー)の奥を)
「…………」
無駄に高性能な俺の仮想体のセンサーが、莉乃の心の声を拾ってしまう。
ぎゅいっ
万力のように強くなった莉乃の手を握り返し、俺たちは電子の海に飛び出した。
*** ***
「戦略自衛隊航宙軍研究センターのネットワークを離脱。政府統合ネットワークの認証情報を取得、省庁系の分散システムへの侵入開始」
「偽装済みのデコイの位置を特定できた。莉乃、文科省のネットワークを使えば迂回できそうだぞ」
「了解です。さすが優史さんですね」
一時間ほど経っただろうか。
それなりの権限を持っている戦略自衛隊航宙軍研究センターの電子鍵を使い、政府系の統合システム内の攻勢を調べ終えた俺たちは、いよいよシステムへの侵入を開始していた。
「流石に外務省のシステムは、統合システムからある程度独立していますね」
苦もなく最初のファイアウォールを通り抜け、外務省の分散システム内に入り込む。
途端に、周囲の電脳空間の雰囲気が変わる。今までは没個性なオフィスのような白い床に白い壁の空間だったのだが、今や壁にはセンサーボットが埋め込まれ、自立式のアンチウィルスボットが無数に遊弋する広い空間に変化している。
広大な空間の終わりは見えず、自身との境目すらあいまいだ。相当高レベルの暗号化がされているみたいだ。
「各国の政府系情報システムと有機的リンクを確立する為……らしいけどな」
「ふふん、いかにも鬼島らしい言い訳です。経産省のシステムなら分かりますが、外務省にそこまで多数のシステムと連携する必要などないでしょう。まあ、国家機密を売り渡すための方便でしょうね……っと、部外秘情報の位置を特定しました!」
ピンッ
莉乃の声と共に、部外秘情報とやらのアドレスが示された。
この仮想空間の更に下方。鬼島外務大臣の私的エリア内に存在するようだ。
「ちっ、私たちの税金で整備した政府系システムのセンター内にプライベート領域を作るだなんて……度し難い小役人ですね」
シニカルに毒を吐いた莉乃の目前に、砲台型のオブジェクトが現れる。
巡回中のアンチウイルスだが、他のオブジェクトより一回り大きい。
「はあっ!」
武装を取り出すのが一瞬遅れた莉乃を守るため、右腕からビームを放つ。
ズドオンッ!
直撃を受けたアンチウイルスが粉々になる。ついでにログを改竄しておく。
「ふぅ、ありがとうございます」
安堵のため息をつき、右手に具現化していたパイルバンカーをしまう莉乃。
「流石に武装オブジェクトの展開速度は制御コア直結の俺の方が早いな」
「ふふ、そうですね。さすが私だけの優史さん♡。これはもう、作戦後はアレですね」
ここぞとばかりに独占欲を見せる莉乃を微笑ましく(?)思いながらアンチウイルスの残骸をサーチする。
コイツがもし、鬼島大臣が個人的に配置したものなら……。
「……あった!」
他とは異なる、今では使われていないかなり古いタイプの電子鍵。
私物なので更新がされていないのか、あえてのハッキング対策か。
「こいつを使えば……」
人類史上最強の処理能力を持つ(博士談)制御コアの能力を使えば、古かろうが何だろうが電子鍵の複製はたやすい。
「いくぞ、莉乃」
「はいっ」
俺は莉乃の手を取り、鬼島の私的領域に飛び込んだ。