決戦兵器の制御コアにされた俺のパイロット候補が全員ヤンデレで依存してくる   作:なっくる@2作品書籍化

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第6話 美嘉の秘密(?)を探ろう

「おはよ~、サラち! ニナちゃんも!」

 

 翌朝、学園に登校する美嘉を監視カメラを通じて観察する。

 校門で同級生とおぼしき数人の少女と合流した美嘉は、校舎に向けて歩いていく。

 

「きょーの訓練は遅番だからさ、ガッコが終わったら駅前のカラオケいこ。すーがくのせんせーも誘ってさ!」

 

 楽しげに談笑する美嘉。彼女がこの学園に来てまだ1週間ほどだが、すでにたくさんの友人がいるみたいだ。

 

(それにしても……)

 

 謎の機械生命体の攻撃にさらされているにしては、少女たちの表情は明るい。

 学園から見える山の向こうには、巨大なクレーターが遠望されるものの、博士の開発したオムニゲート機関が生成する防壁のお陰でもう半年以上()()()()犠牲者は出ていないとテレビのニュースで報じていた。

 

「それはいいけど。美嘉が狙っていた数学の山田は、もうウチが食べちゃったよ?」

 

「え~!? そうなのいつの間に!!」

 

(お、おいおい)

 

 問題は、少女たちの会話の内容である。

 これも博士から聞いた内容だが、学園の生徒たちの間ではパパ活や円光の類が蔓延していた。

 政府の影響力が強い但馬直轄市ですらこうなのだから、疎開用の地下都市が建設された岐阜県や長野県ではもっと酷いらしい。

 博士曰く、この爛れた風紀が有望なパイロット候補を生むらしいが……ホントかよ。

 

(もっとも……)

 

 プローバーの攻撃で8千万近い人口を失った日本政府は人口を回復させるためなのか、このような風紀の乱れに対し懸念は示すものの実際には野放しにしていた。

 

「ぜったい真彩には見せられないな……」

 

 もし無事に真彩を救出できたとして、こんな風紀がディストピアな学園に妹を通わせることは出来ない。

 噂では上流階級だけが通うことが出来るまともな学校もあるそうなので、そこに真彩を入学させようと心に決める。

 

 ……っと、思わず考え込んでしまった。

 意識を美嘉の観察に戻す。

 

「ちっ、それじゃ別の”パパ”を探さんとダメか」

 

 笑顔で友人の背中に飛びついていた美嘉だが、

 その顔がすっと真顔になる。

 

「……やっぱ今日のカラオケはなしね」

 

「え、美嘉!?」

 

 そのまま彼女は、友人たちを放って校舎に駆けこんでしまった。

 

 

 ***  ***

 

「う~ん、なるほど?」

 

 自分の仮想空間の中で、俺は唸り声をあげていた。

 美嘉の『観察』を始めて数日……彼女について、分かったことがある。

 

『じゃあね、”パパ”。ばいばーい!』

 

 再生しているのは、街頭カメラの録画映像。

 美嘉が最近駅前にできたオムライス屋から三十代くらいとおぼしき男性と出てきて、手を振って別れる光景が映っている。

 

『さて……次は』

 

 スマホのスケジュール帳を確認した美嘉は、次の現場に向かって走る。

 

『ごめんね”パパ”、待たせちゃった?』

 

 駅裏にあるホテル街で彼女を待っていたのは、一見真面目そうなサラリーマン。年齢は40代だろうか。

 

『一番いい部屋を予約してるから、行こ~』

 

 そのままサラリーマンと腕を組み、目の前のラブホテルに消えていく。

 

「おっと」

 

 俺は、映像をラブホテル内の監視カメラに切り替える。

 ……ていうか、なんで室内に監視カメラがあるんだよ。

 

『よっしゃぁ! 美嘉の勝ち~!!』

 

 美嘉とサラリーマンは、オンラインのボードゲームに興じている。

 

『くっ、やられてしまった! ……ああ、でも。あの子が生きていたらこの位の歳か。ふぅ、癒されるな』

 

「ぬぬぅ」

 

 たまにテンションが上がってボディタッチをする美嘉だが、それ以上の行為に及ぶ様子はない。

 サラリーマンも、まるで自分の娘を見るような目をしている。

 

(……そうか)

 

 敵の攻撃で、日本の人口は三分の一に激減した。

 美嘉と『パパ活』しているこのサラリーマンも、プローバーの攻撃で家族を喪ったに違いない。

 

「まさかの、美嘉はリアル清純派説!」

 

 パパ活と称し、心に傷を負った大人を助けているのでは。

 思わず彼女のことを見直した俺だが、別の監視カメラの映像を見てその考えに疑問が生じることになる。

 

『はぁ、別にお金なんていらんのだけど』

 

 ラブホの裏口でサラリーマンと別れた美嘉。

 その手には数枚の一万円札が握られている。癒しをありがとう、とサラリーマンから手渡されたものだ。

 

『なんで、一度しか甘えさせてくれないん』

 

 ぴんっ

 

 ぞっとするほど真顔になった美嘉は、手にした一万円札を側溝の中に捨てる。

 

『はぁ、次のパパをさがそ』

 

 泥水に沈んでいく一万円札には目もくれず、スマホを見ながら立ち去る美嘉。

 彼女ぐらいの歳でパパ活をしている子なら、あり得ない行動だ。

 

「美嘉が求めているのは、本当の意味での”パパ”なのか?」

 

 彼女の経歴は、博士から送られてきている。

 個人情報なのであまり積極的に見る気はしなかったが、彼女のおかしな行動に思わず経歴書を開く。

 

「出身は岡山県。17年前、女癖の悪い父親と不倫相手の水商売の外国人女性との間に生まれる。親権は父親。実の母親と父親の再婚相手はプローバーの攻撃で行方不明。生後すぐから育児放棄され、5年ほど前から一人暮らし……ってエグイな」

 

 気が滅入るほど複雑な身の上である。

 

「カグツチ弐型のパイロット候補には父親が応募、保証金は全額父親が受け取っている……って、何だこりゃ」

 

 とんでもない毒親である。彼女が”パパ”を求めるのも、当然かもしれない。

 第一印象で脳みそふわふわパパ活女だと思ってしまった自分を戒める。人は見た目に寄らないのだ。

 

「とはいえ……」

 

 愛情の飢えを、パパ活で埋めるのはいかにも危なっかしい。

 一応無難そうな相手を選んでいるみたいだが……そんな俺の危惧は、数日後に的中してしまう。

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