決戦兵器の制御コアにされた俺のパイロット候補が全員ヤンデレで依存してくる 作:なっくる@2作品書籍化
「どうも。カグツチ弐型のパイロット候補として採用されました、陰野 莉乃(いんの りの)です」
俺が美嘉の”パパ”になり、美嘉がカグツチ弐型壱号機の火器管制パイロットとして訓練標的を初撃墜してから数日後。
我らが研究センターは二人目のパイロット候補を迎えていた。
「年齢は15歳。高校1年生です。怪しげな敵の攻撃で吹っ飛んだ愛知県の児童福祉施設もとい孤児院の出身です。まあ、今となってはどうでもいいことですが。パイロット候補には、生活費のために応募しました」
自己紹介を終え、深々と一礼する莉乃。
長袖のジャンスカタイプの制服にひざ丈スカート。高デニールのタイツがすらりとした両脚を覆い、足元はノンブランドの白スニーカー。
肩幅に切りそろえられた黒髪に、赤ふちの眼鏡。身長の低さも相まって、中学生くらいに見える。
(……ていうか、なんかつんつんした子だな)
「私のような避難民は薄暗い地下都市でつつましく暮らしているというのに、この辺りは節電要請もされていなくて税金を無駄遣いしているなあって……あ、今のは個人的感想なのでお構いなく」
口調は丁寧で、所作も礼儀正しいのだが言葉の節々に棘がある。
眼鏡の奥の顔は整っているが、僅かにひそめられた眉がその印象を打ち消している。
「はっはっは! 湯水のように税金を使っているワタシとしては耳が痛いがね。1年前にワタシが開発したオムニゲート機関が生み出す防壁で、我が国はずいぶん安全になったろう?」
「…………それは認めます。ただ、出来れば先に地下都市の待遇改善を実施して欲しいのですけど」
ばちばちっ
博士と莉乃の視線がぶつかり、火花を散らす。
(まるで、子猫とリスのケンカみたいだな~)
例によって俺は喋っちゃダメなので、のほほんと失礼なことを考える。
「ワタシの管轄ではないが、今年度の補正予算で地下都市の修復と、松本市の辺りに大規模団地が建設されるという噂だぞ?」
「……ウソだと思いますが。役人は適当なことを言いますから」
心底不愉快そうに吐き捨てる美嘉。
これは中々拗らせている子である。
確かに、プローバーの攻撃により甚大な被害を受けた都市部の放棄に伴い国内難民となった人たちは、面積の広い岐阜県や長野県にまとまって住んでいる。
(目が覚めたら日本がディストピアになっていた……あんまし実感できないけど)
何しろ、俺はこの研究センターから動けない。
以前と同じように維持されているネットやテレビで伝えられる他県の情報は、どこか非現実的に感じられる。
「あと、これだけは言っておきます」
胸の前で組んでいた腕を解いた莉乃が、改めてこちらに向き直る。
「ここで開発されているカグツチ弐型が役立たずであったり、多額の税金を消費しているにもかかわらず貴方や他のパイロット候補が問題を起こした場合。私の全てを使ってその事実をネットにばら撒かせていただきますので」
「……心しておくよ」
脅しともいえる莉乃の言葉に、博士はにやりと笑みを浮かべたのだった。
*** ***
「いやぁ! いいねえ莉乃君! まるで昔のワタシを見ているようだよ!」
「うわ、まさかの同類」
莉乃が研究センター内の寮に帰った後、俺と博士はいつもの仮想空間で莉乃に対する感想戦を繰り広げていた。
「ていうか博士。莉乃のどこがヤンデレなんですか。あれはただの拗らせっ子でしょう?」
シニカルなムーブをしつつ、正義感を振りかざす。彼女の年齢からすると中二病の残滓と評してもいいかもしれない。
「ふふふ、彼女のアレは自分や周囲への苛立ちからくる麻疹のような反抗心! ああいう人間こそ、一皮剝けばデレ、優しくしてくれた相手に依存するモノさ。その落差が素晴らしい感情の揺らぎに繋がるのだ」
「…………まるで自分のことのように言いますね」
まさか、博士も一皮剝いてスパダリムーブを食らわせればあっさり陥落するのだろうか。
一瞬試してみたくなったが、博士に依存されるととんでもないバケモノに改造されそうなので自重しておく。
「いやいや、ワタシはあれほど分かり易くはないぞ? なにしろ隙を見せないからな!」
ふふんとドヤ顔を浮かべる博士だが、俺は知っている。
徹夜の実験明け、同じフロアにある博士の私室からクマちゃんクッションを持って来て研究室のソファーで『くまくま~』と寝ぼけながらすやすやと寝ていた姿を。
なにこれ可愛い。
この秘蔵映像は、無茶な要求をされた時の切り札として俺のプライベートストレージ内に保存してある。
「と、いうことで。君の使命は彼女が機密漏洩行為をしないか監視する事と……彼女の裏垢を暴きまくり、本性を把握することだ!!」
「……えぇ」
かくして俺は、パイロット候補の少女を政府公認で?ネットストーキングすることになった。