「どうなってるんだ?」
教室で目を覚ましてから、とりあえず玄関ホームに来てみたけど──外に出るための玄関はゲートに閉ざされて、さらには機関銃なんて物騒なものまで設置されてる。
「僕だけなのか?」
僕の最後の記憶は、希望ヶ峰学園の玄関ホールに入った瞬間に気を失ったところまでだ。
その後は教室で目を覚まし、外に出るためにここに来た。
ここに来るまでの道中、窓は全て鉄板で塞がれていて、外を見ることさえできなかった。なんだ、これは。僕は今、何かヤバい犯罪にでも巻き込まれたのか?
「ダメだ、意味がわからない」
カツッ、カツッ
音が響く。誰かがここに近づいてきてる。誰だ。僕をここに閉じ込めている誰かか?
いや、もしかして──僕と同じで軟禁されている人間がいるのか?向かってきているのが誰かわからない以上、警戒した方がいい。
現れたのは、意外な人物だった。
「えっと.......セレスさん?」
「──あら、お久しぶりですわね。」
セレスティア・ルーデンベルク。僕たち家族がやっている喫茶店とフレグランスショップ、マッサージサロンの常連だ。
ちなみに、フレグランスショップと喫茶店は道路を1本挟んだ向かい側で、マッサージサロンはフレグランスショップの隣にある。
「あなたも希望ヶ峰学園に招かれてたのですね」
「一応、【超高校級の調香師】なんて呼ばれてるからね。まあでも、知り合いがいて少し安心したよ」
こんな異常な空間だとしてと、知り合いがいると少しだけ気が楽になる。
「うふふ、改めて自己紹介をしてさしあげましょう。私はセレスティア・ルーデンベルク。【超高校級のギャンブラー】ですわ」
「あ、聞いたことがあるかも」
負け知らずの超高校級のギャンブラーで、ゴスロリ服を愛する事以外の素性がすべて嘘のベールに包まれている謎の女子高校生。
へぇ、そんな彼女がうちの店の常連だなんて結構すごくない?すごいよね。ふふん、僕の作品は最高だから当然だけどね。
「お望みであれば、カードゲームを教えて差し上げますわ」
「お金を賭けないのであれば、是非お願いしたいね」
楽しそうだよね、超高校級のギャンブラーとカードゲームなんて。お金をむしられたくないから賭けは絶対嫌だけど。
「あら、痛みを伴って人は成長するものですわ」
「僕はこの上なく成長してるからね。残念ながら、もう限界値なんだよ」
次に玄関ホールに来たのは──
「初めまして、舞園さやかです。これからよろしくお願いします」
「神崎冬です。よろしくお願いします」
それにしても、見れば見るほど綺麗だ。肌なんて、まるで人形みたいに透き通ってる。
「人形じゃありません。生きてますから」
「え、声にでてた?」
ん?この香り──僕が調合した香水だ。へー、芸能人も御用達なんだ。
道理でお父さんがEC分の香水を増やしてくれって、頻繁に泣きついてくるわけだ。
「エスパーですから」
「ついでにサイコキネシスが使えるタイプだったりしない?」
ゲートをドゴーンっと破壊してくれたら嬉しいんだけど。
「ふふっ、ちょっとやってみますね」
「出来るの?」
思わず聞いてしまった。そんなことできるはずがないのに。
「ふふ、冗談です」
「君がテレビで引っ張りだこな理由がよくわかったよ」
こういう人が芸能界で生きていけるんだろうなぁ。知らないけど。
そこからは、続々と人が集まってきた。超高校級の風紀委員。超高校級の暴走族。超高校級の同人作家なんかもね。
『えー、新入生の皆さん.....今から、入学式を執り行いたいと思いますので至急、体育館までお集まりくださ~い.....って事で、ヨロシク!』
こんなふざけた放送だとしても、今は状況把握のために行くしかないか。
まとめるまでもなく簡単な話だ。この学園の外に行きたいのであれば、誰かを殺す必要がある。
それが、モノクマとかいう悪趣味なぬいぐるみが伝えてきたことだった。こんな状況でなければ、冗談だって鼻で笑っていたと思う。
実際に大和田紋土がモノクマに暴力を振るって爆発するところを見せられると、流石にドッキリや冗談なんていえない。明らかに度を超え過ぎているからね。
選択肢は2つ。
この学園内で『期限のない共同生活』を送るか、『仲間の誰かを殺して』この学園から出ていくか。こんなの、実質一択に等しい。
「冷蔵庫の中にもたくさん食料がありますね。ただ、16人もいるのでどれほどもつかは....」
「節約しながら使うしかなさそうだね。できるだけ日持ちしない食材から使うよう報告の時に伝えよう」
ああ、今僕たちは各々で施設内を調べてる。僕は偶然舞園さんと同じ場所──食堂にたどり着いた。
『──うぷぷぷ。食材は毎日追加するから好きに使えばいいよ』
「へぇ、誘拐犯にしては随分手厚いんだね」
餓死とかではなく、純粋に僕たちを殺し合わせたいのか?そんなことをしてなんの意味があるんだか。まあ、食べるのに困らないならとりあえずはいい。
「だーかーらー、君たちは自ら望んでこの学校に来たんじゃないの?どうしてボクのせいにするのかなー?うぷぷぷ」
モノクマはそれだけ伝えてそそくさといなくなった。監視カメラで僕たちを監視しているからか、随分とタイミングよく現れる。
「モノクマさんの目的は何なんでしょうか...?」
「狂人の考えることはわからないね。僕はあとは食堂でのんびり他の人が集まるのを待つけど、君はどうする?」
「私は苗木くんを呼んでこようと思います」
「そっか」
苗木誠。
【超高校級の幸運】として入学したはずなのに、初日から大和田紋土に理不尽に殴られて気絶した可哀想なやつ。
幸運とは一体なんなのだろうか。まあ、僕には関係のない話だから別にいいけど。
「よかったら、神崎くんも一緒に行きませんか?」
「......そうだね。まあ、他にやることもないし。ついて行こうかな」
今の段階で、協調性がない厄介な奴だと思われるのは得策ではない。あまり非協力的な姿勢を見せて、いざ重要な情報が入った際に仲間外れにでもされた元も子もない。
各々が調べた結果を報告しあったけど、めぼしい情報はなかった。むしろ、ここから出ることは出来ないことが再確認できただけだ。
それと、校則とは関係なく僕たちの中だけでのルールが追加された。【夜時間の外出禁止】だ。
まあ、こんなのを律儀に守る必要はないけど、率先して破る理由もない。
コン、コン、コンとドアが3回ノックされる。
ん?今はもう夜時間なんだけど。流石にこの時点で誰かが僕を殺しにくるなんてことは考えにくい。
まだそこまで切羽詰まっている人がいるようには見えなかった。なにより、人を殺すことをそう簡単に決心できる人間はいない。
......ドアを開けようか。
「──夜分遅くに失礼しますわ」
そこに居たのは、夜時間のルールを提案した張本人、セレスティア・ルーデンベルクだった。
「えっと、なんの用かな?」
「中に入っても?」
そういいながら、既に半身が室内に入っている。本当になんの用だろうか。
セレス
舞園