モテたい小路   作:エゴエロエゾロン

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2. 2日目とか一之瀬とか

 さて、やることが増えた。

 

 まず、櫛田と堀北の仲を取り持つこと。

 

 次に、みーちゃんの恋の応援だ。

 

 最優先は櫛田だな。彼女と仲良くしておけば、交友関係を広げる近道になる。

 

「なあ堀北。クラスメイトと仲良くするつもりはないのか?」

 

「ないわ」

 

「そうか」

 

 堀北の考えを変えるには、何かしらの必要性を要するな。

 

 櫛田と仲良くしなければいけない。もしくは、その方が明確に得だ、という状況。

 

「えーっと、これから食堂に行こうと思うんだけど、誰か一緒に行かない?」

 

 昼休み、平田がクラスメイトへ声をかける。

 

 あいつの思惑としては、友人作りに取り残されている生徒へのきっかけ作りだったのだろうが、その声に反応したのはもっぱら女子ばかりだった。

 

 オレも立ち上がり、見送る姿勢だった櫛田へ声をかける。

 

「櫛田、少し話があるんだ。行かないか?」

 

「え? あ、うん。分かった!」

 

 平田と彼を囲む女子たちの後ろを、櫛田と並んで歩く。

 

 初めて来た食堂で、オレは先輩方の様子とメニューを見て確信した。

 

「綾小路くんは何にしたの?」

 

「山菜定食。無料だ」

 

「え、どうしてそれを?」

 

「味が気になってな。それに節約するつもりだから」

 

 オレと櫛田は、平田ハーレムの端に隣合って腰を下ろす。

 

「それで、話って?」

 

「堀北と仲良くなる方法の1つの案として、櫛田の有能さを見せて付き合うに足る相手だと思わせる、というものを思いついた」

 

「なるほど、行けるかもね」

 

「その有能さを披露するため、またクラスのために、櫛田にはやってもらいたいことがある」

 

「何かな?」

 

「これはオレの推測なんだが、恐らく来月以降、貰えるポイントは10万から減少する。根拠はコンビニや食堂に用意されている無料商品と、周りでオレと同じように山菜定食を利用している先輩の数だ」

 

「言いたいこと分かったよ。それに気付いたのが私ということにして、ついでにクラスメイトの皆に節約を呼びかけるんだね?」

 

「そういうことだ。理解が早いな」

 

「でも、いいの? 気付いたのは綾小路くんなのに、功績を奪うようなことをして。友達がたくさん欲しいって言ってたのに」

 

「オレは目立つのが得意じゃない。それに、友達は櫛田と仲良くなれれば自然と増えていくと予想している」

 

「つまり……私と仲良くなりたいから、協力してくれるの?」

 

「有り体に言えばそういうことだな。櫛田や平田、あとは軽井沢か。交友関係の中心に近い生徒と仲良くなれれば、その輪に入れてもらうことで友達を増やせるんじゃないかと思ってる」

 

「そっか! じゃあ私も、綾小路くんの友達作りに協力するよ!」

 

「ありがたい。でも、櫛田にも付き合いがあるだろうから、無理はしなくていいぞ」

 

「うん。じゃあ早速、昼休みの終わり際くらいに皆に声かけてみるね!」

 

 

 

 

 

 

 その後、櫛田からクラスメイトへの声かけがあったものの、堀北にはあまり響いていない様子だった。

 

 元々浪費はしていないのだろう。

 

 放課後になると、生徒たちの何人かは体育館へ向かって行く。昼休みのうちに放送で案内のあった部活動説明会に参加するのだ。

 

「綾小路くん、説明会行く?」

 

 声をかけてきたのは松下だった。

 

「ああ」

 

 連れたって教室を出る。

 

 隣から視線を感じたので、振り向くと、松下はなんだか不服そうな表情でオレを睨んでいた。

 

「どうした?」

 

「櫛田さんにも、頭いいことバラしてるんだな~って」

 

 昼休みの時、松下は近くの席にいた。

 

 会話は小声でしていたが、聞かれていたか。

 

「聞いてたなら、分かるだろ? 友達作りのため、櫛田とは仲良くなりたいんだ」

 

「理屈は分かるけどね。なんか浮気されたよーな気分」

 

「不愉快にさせたなら謝る。でも、言いふらしそうな相手にまで見せるつもりはないぞ。せいぜい数人だ」

 

「ちなみに、私が初めて?」

 

「もちろん。能力を見せると言っても、その場がないといけないからな」

 

 正確に言うなら、みーちゃんの方が先だ。

 

 しかし、そもそもどこからが能力を見せたことになるのかは曖昧な部分。どうにでも誤魔化せるだろう。

 

「ふーん。まあいいや」

 

 体育館へ着く。

 

 見渡してみると、意外なことに堀北も来ていた。

 

「綾小路くんはどこかに入るの?」

 

「いや……どうしようかな。友人作りには入った方がいいんだろうが、逆に放課後の時間を取られるとも言える。それに、オレは活躍して目立つつもりは無いから、そうすると底辺という印象を与えて足枷になるかもしれない」

 

「まるで、本気を出せばレギュラーになれるって言ってるみたい」

 

「身体能力は、低い方ではないと自負している」

 

「そうなの?」

 

 松下が上腕をツンツンとつついてくる。そのくらいの接触では何も分からなくないか?

 

「まあ、他の人次第だな。松下がどこかに入ると言うなら、一緒に行ってもいいかもしれない」

 

「私もあんまり入る気無いんだよねー……」

 

 オレは様々な部活動の紹介を耳に入れながらも、周囲を見渡して他の生徒の反応を観察する。

 

 すると、平田がいた。やはり女子に囲まれている。

 

「まあ、入るなら平田と同じところかな」

 

「友達作りを考えたら、それが無難かもね。サッカー部に入るらしいよ」

 

「サッカーか……サッカーや野球みたいな大人数の競技は、代表に選ばれても目立たなそう……か?」

 

「先輩もいるから、1年のうちは目立っちゃうでしょ」

 

「それもそうだな」

 

 いや……そうか。こんな簡単なことを失念していた。

 

「部活動を決める前に、他クラスの情報収集だな」

 

「ああ、確かに部活は他のクラスや学年の違う生徒と交流できる数少ない機会だもんね」

 

「そういうことだ。他クラスの交友の中心人物を探り、そいつと同じ部活になるのがいいだろう」

 

 まだ入学2日目。オレには他クラスの知り合いなんて1人もいないが。

 

「櫛田を頼ってみようか」

 

「櫛田さんなら、もう他クラスの友達がいてもおかしくないよね。平田くんは?」

 

「今は部活のため、男子の情報が欲しいからな。なら櫛田だろ」

 

「確かにね」

 

 やがて、部活動紹介を終えた先輩が舞台を下りていき、檀上には1人の男が残される。

 

 体育館が静寂に包まれた時、そいつはようやく声を発した。

 

「私は、生徒会長を務めている、堀北学と言います」

 

 それを聞いて、オレは堀北鈴音の方を見た。

 

 彼女は、檀上の男へジッと強い眼差しを向けている。

 

「ねぇ、堀北って……」

 

「ああ、あいつの兄なんじゃないか?」

 

 生徒会長は厳しい文言で生徒会を紹介し、静かに姿を消した。

 

 それから入部受付が開始される。重要な情報なので、オレはその様子を注視することにした。

 

 同時に、櫛田へ電話をかける。

 

『綾小路くん、どうしたの?』

 

「櫛田って、もう他のクラスに友達がいたりしないか?」

 

『いるよ? あんまり多くないけど……』

 

「部活動を決めるに当たって、他クラスの交友関係が知りたいんだ。協力してくれないか?」

 

『そっか、部活動は他のクラスの子と仲良くなるチャンスだもんね。分かったよ! 今日他のクラスの子を誘ってみるから、そこに綾小路くんも呼ぶね!』

 

「ありがとう。こっちも一応情報を渡しておくな」

 

『情報?』

 

「生徒会長は堀北の兄みたいだ。たまたま生徒会紹介の時に堀北の様子が見れたんだが、妹の方はかなり兄に思うところがあるようだぞ。こんな情報が何の役に立つかは分からないが」

 

『へー、やっぱりそうだったんだね。ありがとう、すっごく助かったよ! 放課後の詳細はすぐに送るね』

 

「ああ。ありがとう櫛田」

 

 電話を切る。

 

「よかったね」

 

「ああ、櫛田はすごいな」

 

「……ふーん」

 

 オレが櫛田を褒めると、松下が脇腹に指を突き刺してきた。

 

「痛っ。な、何するんだっ?」

 

「別になんでもない」

 

 

 

 

 

 

 その後、体育館から教室に戻る頃には、櫛田から連絡が来ていた。

 

 時間には余裕があるので、一度寮に戻って荷物を置く。

 

 集合場所には、既に1人の女子がいた。

 

「あ、綾小路くんかな?」

 

「ああ」

 

 Dクラスから参加する男子はオレ1人なので、相手も分かったのだろう。

 

 しかしBクラスから参加する女子は複数いるので、オレからは判別がつかない。

 

「初めまして、一之瀬帆波です。よろしくね」

 

「綾小路清隆だ」

 

 差し出された手を取り、握手を交わす。

 

 これが、オレと一之瀬の初対面だった。

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