モテたい小路   作:エゴエロエゾロン

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 20話、双眼鏡の価格を10→2に変更しました。

 10ポイントって高すぎだよね。


22. 理系組

 2日目。昼前の活動時間。

 

 オレはBクラスのベースキャンプへ足を運んでいた。

 

「あれ、清隆くん」

 

「麻子、帆波はいるか?」

 

「うん。帆波ちゃーん!」

 

 麻子の声に振り向いた帆波が、同時にオレにも気付く。

 

「清隆くん。どうしたの?」

 

「ちょっと頼みたいことがあってな」

 

 オレはAクラスに与えた、例の覗きやすいスポットのことを話した。

 

「暫く接触せず油断させたい。だからBクラスもなるべく、Aクラスが占有しているスポットには近付かないでくれ」

 

「うん。それは分かったけど、うちも1人に監視させるくらいはいいよね?」

 

 Bクラスに一方的に近付くなと言えば、BクラスはAクラスのリーダーを知る機会を失うことになる。帆波の要求は当然のものだ。

 

「そこは帆波を信用している。お前なら油断させる必要性には気付いているだろうから、無茶なことはしないとな」

 

「ありがとっ。それで、監視するだけかな? 何か作戦とかあったりして」

 

「作戦というほどのものじゃないが、6日目頃にAクラスを驚かせて乱れを狙ってみるつもりだ」

 

「驚かす?」

 

「単純に大声とかでな」

 

「そっか、じゃあそのタイミングも共有しようよ」

 

「なら6日目早朝の更新タイミングにしよう。それまでは、くれぐれもAクラスを警戒させる行動はしないように。人選も慎重にしてくれ」

 

「分かってるって!」

 

 この作戦を、堀北には伝えない。

 

 堀北もAクラス生徒たちの近くにいるわけだから、突然そばで大声を出されたら、6日目になってさらに弱っている堀北は驚かずにはいられないだろう。

 

 機会を逃した後で、それが千載一遇のチャンスだったと後悔に苛まれることになる。

 

 そしてもちろん、こんな成功率が曖昧な策に全てを賭ける気は毛頭ない。

 

「Aクラスのリーダー情報は共有しよう」

 

「そうだね。Aクラスを落とすことは共通の目標だし」

 

「それと、驚かす役はBクラスに任せたいんだが」

 

「うん? 別にいいけど、なんで?」

 

「オレにはDクラスで隠密行動のできそうな生徒の心当たりがない」

 

 驚かすためには、大声の直前に足音などを立ててはいけない。つまり隠密行動能力が必須となる。

 

 だが、そんなのは嘘だ。本当の理由は堀北に察されることを防ぐため。

 

 加えて、大声役が見つかった時にDクラスが警戒されることのないように。

 

「おっけー、分かったよ」

 

「ああ、ありがとう……ところで、あいつは?」

 

 オレの視線の先には、Cクラスの金田がいた。一見、真面目に手伝いをしているようだ。

 

 昨日行った偵察で、既に存在には気付いていたが。

 

「ああ、金田くん。Cクラスで揉めちゃったみたいでね。たまたま見つけたから保護してるの」

 

「気を付けろよ」

 

「分かってるって。リーダーがバレるようなことにはしないよ」

 

「警戒心を忘れていないならいい」

 

 手を振って帆波と別れる。

 

 さて次は……そうだな、Cクラスの方に行くか。

 

 椎名がまだ残っているといいんだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……楽しそうだな」

 

 Cクラスの生徒たちは、浜辺でバカンスを思う存分満喫していた。

 

 昨日の午後からテンションは変わっていない。今日か明日には龍園以外客船へ戻るだろう。

 

 椎名は、ぱっと見では見当たらない。

 

「おい、なんだてめぇ」

 

 堂々と姿を見せてCクラスの様子をキョロキョロと見回していると、波打ち際から少し離れた場所で寛いでいた龍園に睨まれた。

 

「椎名を探しに来たんだ。いるか?」

 

「残念だったな。あいつは体調不良でとっくに船へ戻ったぜ」

 

「そうか……邪魔したな」

 

「ふん」

 

 椎名のことだから、龍園の戦略を早々に看破し、本を読むためさっさと戻っていってしまったのだろう。

 

 オレは肩を落として踵を返した。

 

 後すべき行動は、5日目からだ。

 

 この2、3、4日目は、素直にサバイバルと楽しむとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オレはリーダーとして1日3回島中を駆け回っているため、手伝いのほとんどは免除されている。

 

 だからこそ、勝手にベースキャンプを離れて島を探索したり、Bクラスへ遊びに行ったりできたわけだ。

 

 しかしこの非日常、女子と何の関わりももたず過ごすのはあまりに勿体ない。

 

「平田、何か手伝うことはないか」

 

「綾小路くんは休んでいてもいいんだよ? スポット占有で頑張ってくれているから」

 

「いや、何もしないのは逆に気が引けてな。何かしたい」

 

「……綾小路くん。クラスのことを考えれば、今小さな手伝いをしてくれるよりも、体力を温存してもらってスポットを確実に押さえてもらう方が大切なんだ」

 

「分かっている。だが体力は問題無い」

 

「……分かったよ。じゃあ───」

 

「綾小路、なら俺たちと一緒に来てくれ」

 

 話を聞いていたのか、後ろから声をかけてくれたのは三宅だった。

 

 今朝2人で行動したことで、少し仲良くなれたらしい。

 

「ああ。分かった」

 

 三宅についていくと、その先では長谷部が待っていた。

 

「綾小路くんも一緒に行くの?」

 

「ああ、いいだろ?」

 

「別に気にしないけどね」

 

 2人にならって、支給の青いリュックを空にした。

 

 3人でベースキャンプを出発する。向かう先は北東。

 

「どこに行くんだ?」

 

「向こうに果樹園みたいなスポットあるだろ? そこから食料調達だ」

 

「なるほど、大量に運んでも保存しておけないから、この少人数か」

 

 今のところDクラスは、島中のスポットを広く活用することで、Sポイントの消費を最低限に抑えられている。

 

 具体的には、仮設トイレとシャワー室で計40ポイントのみ。釣り竿や調理器具は用意されているスポットがあったのでそこを利用。水と食料に関しても、まだ1ポイントも使っていない。

 

「三宅は体力の方、大丈夫なのか?」

 

「俺の手伝いはこの果物集めだけだからな。他は寝てる。綾小路もさっき言ってたろ、手伝わないと気が引けるみたいなこと。同じだ」

 

「そうか。長谷部は?」

 

「私はそんな動いてないから、体力的にはなんともない」

 

 長谷部波瑠加という女子は、堀北のように会話を拒絶こそしないが、ボールを投げ返してまではくれない子のようだ。

 

 あまり友人付き合いをしない長谷部とは、この機会に話せる程度の関係を築いておきたい。

 

「しかしあれだな、初日に大量のスポットを獲得できたのは大きかったな」

 

「たしかに。上手くいけば1週間、食料と水にポイントを使う必要はなくなるだろう」

 

「それでいくら節約になんの?」

 

 意外なことに、長谷部も会話に入ってきた。クラスポイント事情の話題だったからだろうか。

 

「120ほどだな」

 

「120って……それすごく大きいんじゃないの?」

 

「すさまじくな」

 

「プライベートポイントにすると月に12000か」

 

「綾小路くん、大手柄だ」

 

「オレは回収しただけで、見つけたわけじゃない」

 

「じゃあ誰が?」

 

「堀北だ」

 

「へぇ~」

 

「上陸前に島を1周した時、色々気付いたらしい」

 

「じゃあ、他のクラスのポイントはどうなるの?」

 

「リーダーを当てられなければ、Dクラスがトップだろう。生活でどれほど節約できているかは分からないが、スポットの数はA~Dで5、1、0、22だ」

 

 このままスポット事情に変動が無ければ、最終的にはDクラスが得るスポット占有のボーナスポイントはちょうど400になる。

 

「圧倒的じゃん。ていうかなんでそんな詳しく分かってるの?」

 

「スポットの総数が28なことと、その全ての位置は既に分かっている。それぞれ確認すれば各クラスの占有数は簡単に分かる」

 

「え、もうそんな調べてあるんだ」

 

「もうと言うが、何より重要な情報だろ」

 

「いや、まだ丸1日すら経ってないんだけど」

 

「昨日オレは半日自由だったからな。早めに島を回っていたおかげで土地勘も育ったし、堀北の命令で探索していたんだ」

 

「堀北、人使い荒いんだな」

 

「ホントにな」

 

 話しながら、目的のスポットへ辿り着く。

 

 長谷部は来月からのクラスポイント増加という希望を見て、少しテンションが上がっているみたいだった。

 

「このくらいでいいか?」

 

「ああ。十分だろう」

 

「重い……」

 

「まあ、20個だからな」

 

 1食1人1個として、今日の昼夕の分で78個(担任は含まない)。オレと三宅が29個ずつ持ち、長谷部には20個持ってもらっている。

 

「腰がイカレそう……よく大丈夫ね」

 

「まあ、運動部だしな」

 

「体力には自信がある」

 

「うへぇ」

 

「ジムにでも通ったらどうだ。最近は愛里も頑張っている」

 

「愛里って佐倉さん? ジムなんて行ってるんだ」

 

「オレが誘った」

 

「付き合ってんの?」

 

「いや」

 

「ジムか。ちょっと興味あるな」

 

「是非来てくれ。男子の知り合いがいなくて寂しかったんだ」

 

「佐倉さん以外にも誰かいんの?」

 

「Bクラスの帆波と麻子がいる」

 

「女子ばかりだな」

 

「断っておくが、意図した状況ではない」

 

 重いものを運ぶという苦労を共有しているせいだろうか。

 

 互いの垣根が低くなっていっている実感がある。会話に参加すること、話題を出すこと、相手に質問することの精神的ハードルが低下している。

 

「それを聞いた後だと、俺が入会したら女目当てみたいにならないか?」

 

「みやっちが女子目当てにジム入会とか、ウケる」

 

「ウケないぞ」

 

「なあ、2人はもともと仲が良いのか?」

 

 オレと他の女子の話題から三宅のことへ話題が移ったタイミングで、気になっていたことを聞いてみる。

 

「ああ、たまたま声をかけられる機会があってな」

 

「なんとなく孤独組同士、雰囲気が合うっていうか。そんな感じ」

 

 へえ。友人が少ないからこそ出来た繋がりか。だとすると、今2人と話す機会が訪れたのは、結構幸運だったのかもしれないな。

 

「綾小路は友人が多いよな」

 

「友達が欲しかったからな。中学ではボッチだった」

 

「なんか納得。綾小路くんは孤独組じゃないけど、みやっちと同じ感じするし」

 

「そうか?」

 

「平田とかと話してると、なんと言うか、コミュ力の差が大きすぎて噛み合わないんだよな。綾小路にはそういうのを感じない」

 

「それ分かる。嫌なわけじゃないけど、なんかズレてるの。綾小路くんはそんなことない?」

 

「いや、どうだろうな。友達が欲しかったオレとしては、話しかけてくれる2人は単純にありがたかったし嬉しかった」

 

「そうか、俺たちは別に友達が欲しいとは思っていなかったからな」

 

「よく友達増やせたねー」

 

「ほとんど櫛田や平田を仲介して得た繋がりだ。自分から話しかけにいったことなんて無い」

 

「なるほどな」

 

 でもそうか。確かに、この2人とは話していて少し心地良さがある……のかもしれない。

 

 少なくとも、櫛田や平田と話している時とは違う感覚なのは確かだ。

 

 オレは新たな関係と感情に好奇心を刺激されながら、2人と一緒にベースキャンプまで戻った。

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