モテたい小路   作:エゴエロエゾロン

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23. アニメでBクラスがベースキャンプにしてたところ

 3日目。

 

「綾小路くん、一緒に食べ物探しに行こ」

 

「ああ」

 

 オレを食料調達に誘ってくれたのは、松下、愛里、みーちゃんの勉強会組だった。

 

 Dクラスが占有するスポットの中で食料確保に有用な場所はいくつかあるが、それだけで1週間は乗り切れない。

 

 森の中を探索し、地道に見つけていく必要がある。これはその誘いだ。

 

「清隆くん、疲れてない?」

 

「平気だ愛里。体力には自信がある」

 

 愛里に心配そうな眼差しを向けられながら、4人でベースキャンプを離れていく。

 

 昨日の三宅と長谷部との交流も心地良い体験だったが、付き合いの長い彼女たちと共にいると、また別の(くつろ)ぎを得られた。

 

「あれ? いつから名前呼びしてるの?」

 

「あっあっ、これは……」

 

 みーちゃんが気付き、愛里がわたわたと慌て始める。提案したのは愛里の方からだったので、それが恥ずかしいのだろう。

 

「オレから言ったんだ」

 

「へぇー、意外。佐倉さんが勉強会のご褒美で勇気出したのかと思ったんだけど」

 

「あぅ……」

 

 松下の鋭すぎる想像に、愛里は観念したように肩を落とした。

 

「参った、正解だ」

 

「じゃあご褒美に、ほら」

 

「……千秋、と呼べばいいのか?」

 

「そうそう。みーちゃんもみーちゃんだし、私だけ苗字って遠い感じするでしょ?」

 

「確かに、そうかもな」

 

「これからはそう呼んでね、清隆」

 

 てっきり、名前呼びでもくん付けは変わらないと思ったのだが、そうではなかったようだ。

 

 なるほど。苗字→名前と同じく、くん付け→くん外しも関係性の変化・親密さの上昇を感じられるかもしれない。

 

「佐倉さん……いいや、こっちも愛里って呼んじゃお。愛里が清隆くんだからさ。私は変えてみたわけ。新鮮でしょ?」

 

「そうだな。帆波と麻子も清隆くんと呼んでいるから、かなり新鮮さがある」

 

「あの、わ、私も下の名前で呼んでいい?」

 

 みーちゃんのお願いに快く頷く。

 

「もちろんだ」

 

「もう面倒だから、この4人皆下の名前か渾名(あだな)にしようよ」

 

「う、うん。分かった……千秋さん」

 

「さんなんていらないって」

 

「千秋ちゃん……えへへ」

 

「この子可愛すぎない?」

 

 はにかむ愛里にメロメロになった松下がぎゅうと抱き着いた。

 

 そして仲間外れは嫌だとばかりに、みーちゃんも参加して愛里を挟み潰そうとする。

 

「あわわわっ」

 

 愛里が友人に囲まれているその光景を見てオレは、何と言うか、優しい気持ちになった。

 

 女子3人の仲睦まじい様子を横目にしながら、オレはその後ろをついていく。

 

 島内のある程度の地形とスポットの場所、そしてそれぞれのスポットに何があるかは把握しているが、どこに果物が生っているのかなどはオレも詳しくない。

 

 なので特に目指すべき場所も無く、オレたち4人はただふらふらと森の中を進んだ。

 

 やがて、1つのスポットに出る。

 

「わ、滝だ……」

 

 愛里が呟く。

 

 Dクラスが占有している、水の豊富な滝と川、河原のスポットだった。

 

「ちょっと遊んでく?」

 

「別にいいが、滝壺は危険だから近付くなよ」

 

「はーい」

 

 千秋の提案で、川で遊ぶことに。

 

 靴と靴下、そして遊んだ後の着替えのためにジャージを脱いでおき、半袖半ズボンの体操服姿で清流に入っていく。

 

 愛里はメガネも外していた。

 

「つめたっ……!」

 

「ほら、愛里っ」

 

「わひゃっ!」

 

 千秋の掬い上げた冷水が、愛里の顔を直撃する。

 

「こ、このっ」

 

 愛里もやり返す。2人は楽しそうに笑っている。

 

 それを傍から見ていたオレはと言えば、何が楽しいのか理解できず、ただあまり服を濡らさない方がいいんじゃないかと考えていた。

 

 流石に空気が読めていないことは察せられるので、口にはしなかったが。

 

「き、清隆くんっ」

 

「うわ」

 

 どこに楽しみを見出しているのかを考察していたら、みーちゃんが同じように水をかけてきた。

 

 川水は流れがあるからかなり冷たいな。そしてこの真夏の日差しの中だと、結構気持ちいい。

 

 なんとなくだが仮説が立ったぞ。何が楽しいとかではない。ただテンションが上がっているから笑っているんだ。

 

 そして残念なことに、オレはこの遊びではしゃげるほどテンションが上がらない。

 

 だが、他の3人を萎えさせるのも避けたい。

 

 ここは向こうの愛里と千秋を参考にして、オレもみーちゃんへやり返した。

 

「きゃあっ!」

 

 悲鳴を上げるが、表情は笑っている。これで正解だったようだ。

 

 しかしこれは、結構体力を使うな。水の中に立っていることはもちろん、掬うために毎度屈まなくてはいけないのが疲れる。

 

 まあ問題は無いだろう。スポット巡りは既に6回行っている。体も森の中を走ることに慣れてきた。

 

 そうして遊んでいると、次第に4人の乱戦になってきて、いつの間にかオレ対女子3人という構図になっていた。

 

「おりゃっ!」

 

「えいっ」

 

「あははっ!」

 

 どうしてオレは狙われているのか。

 

 4人なら2対2になるものじゃないのか?

 

「はぁ、はぁ……清隆、全然濡れないじゃん……」

 

 松下の言葉で納得がいった。

 

 確かに3人と比べると、オレは濡れていない。濡れているのは腕と下腿のみ。

 

 避けられる水は避け、そうでないものは防いでいたからな。なるほど、この遊びは勝負でもなんでもないのだから、オレも同程度に被害を受けておくべきだったか。

 

「あ、やっぱり清隆くんだ! よく会うね!」

 

 女子3人が肩で息をしながら少し休んでいたタイミングで、森から帆波率いるBクラスの生徒たちがやってきた。

 

 彼女の言った通りよく会うな。今日で3日目だが毎日顔を見ている。

 

「どうしてここに?」

 

「近く通ったら、なんか楽しそうな声したからさ。ちょっと見に来ただけだよ」

 

「そうか」

 

 オレは偶然起こったこのイベントを機に、休憩に入ろうとした。これ以上の体力消費は望ましくなかったからだ。

 

「よし、私も加勢するよ!」

 

 だが、帆波は自分も参加するつもり満々のようだ。

 

 まあ加勢してくれるのなら負担も減るか……と思ったのだが、

 

「なあ、なんでそっちなんだ?」

 

「清隆くん濡れてないから」

 

「……そうか」

 

 帆波、どころか一緒にいた他の女子たちまで、オレの敵に回った。

 

「どこまで避けられるか見ものだねっ!」

 

 そう言いながら帆波が放った水を躱し、オレは思考を巡らせる。

 

 彼女の今の発言のせいで、オレが簡単に負けては面白くないという状況になってしまった。

 

 しかし、前方及び左右を取り囲まれたこの状況下、本気で濡れないようにすればBクラスにオレの実力が露呈してしまう。

 

 参加していないBクラス男子たちの目もあることだし。というかオレに加勢してくれ。

 

 女子たちを楽しませつつも、あまり実力を見せないように。

 

 難題だ。

 

「えいっ!」

 

 みーちゃんの水を腕で防ぎながら、オレは敵勢力の分析をした。

 

 そして、遠慮無く大量にぶっかけてくる千秋と帆波の攻撃だけ躱し、他は防ぐという方針を固めた。そのうちオレもぐしょぐしょに濡れているだろう。

 

「私のこと警戒してるでしょー!」

 

「帆波は容赦がないからな」

 

 体力的に考えて、何分も続けるのは避けたい。

 

 オレは数十秒ほど耐えた後、横から松下の攻撃をモロに食らって、分かりやすく敗北した。

 

「やったぁ!」

 

 普段はあまり大きな声を出さない松下が喜んで、仲間の女子たちとハイタッチしている。

 

 その笑顔こそオレの勝利の証明。楽しんでくれたのならオレは負けていない。

 

「あー楽しかった。って、あ。ここDクラスのスポットじゃん! やば……」

 

「大丈夫だ、許可する。今だけだけどな」

 

「ほっ、危なかったー。ありがとね清隆くん。じゃ、ばいばーい!」

 

 帆波たちBクラスはさっさと立ち去っていった。

 

「疲れた。流石に休もう」

 

「そうだね」

 

 川から上がり、焼けた河原の石に悲鳴を上げながら、木陰へ避難する。

 

 オレは3人から少し離れ、濡れた体操服の上下を脱いで絞った。

 

「ええええ!? きっ、清隆くん!?」

 

 愛里が悲鳴を上げる。男の下着なんて、水着と何も変わらないだろうに。

 

「3人も着替えた方がいいぞ。オレは向こうを向いているから」

 

 休憩しているうちに体操服は乾かしておこう。

 

 オレは背後からの衣擦れの音を聞きながら、河原に体操服を広げた。

 

「もういいか?」

 

 音がしなくなってから声をかける。しかし返事がない。

 

 返事を受けないうちは振り向けないので、そのまま背中を向けていたら、近付いてくる微かな足音を聞き取った。

 

「───わっ!!」

 

「……悪いが、足音が聞こえてたぞ」

 

「うう、失敗しました……」

 

 驚かせてきたのはみーちゃんだった。

 

「それで、もういいのか?」

 

「うん、大丈夫だよ」

 

 やっと振り向いて、3人のそばに座る。彼女たちも同じように体操服を干していた。

 

「思ったよりサボっちゃったね」

 

「そうだな。でも、まだ少し時間はある」

 

 時刻は10時過ぎ。オレにはスポット更新の仕事があるので、あと1時間ほどで戻らなくてはいけない。

 

 そのまま10分ほど休憩し、オレたちは再び食料探しへ出発した。

 

 そして数分後、トウモロコシを発見する。

 

 また、ほとんど同時にAクラスの葛城と戸塚が姿を見せた。

 

「綾小路か」

 

「あっ! お前のせいでAクラスのポ───」

 

 戸塚が、オレがスポットを大量占有していることの不満を発散しようとしたが、葛城に口を塞がれていた。

 

「なんでもない。弥彦が失礼したな」

 

「いやいい」

 

「ここは君たちが見つけたものだ。横取りするつもりは無いから安心しろ」

 

「いや、その必要は無い。Dクラスの食料はある程度余裕があるからな。持ち帰れる分は持ち帰るし、戻ったらクラスに報告もするが、独占するつもりは無いからAクラスも好きにしてくれ」

 

 実際は、AクラスはCクラスからの物資提供で潤沢な食料がある。しかし、こちらがそれに気付いている素振りを見せるのは愚策だ。

 

「甘いな。こちらに利する行動をする必要は無いだろう」

 

「ケチだと思われたくないんだ」

 

「そうか」

 

 葛城が横にどく。

 

 オレたちは4人で持てるだけの数を抱え、ベースキャンプへと戻った。

 

 残りを回収しに行った池たちによると、葛城は自分で言った通り1つも持って行かなかったらしい。

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