モテたい小路   作:エゴエロエゾロン

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25. 5日目

 5日目4時の更新を終えた後、流石に体力が不安なので仮眠を取ることにした。

 

「ちょっと男子。集まってもらえる?」

 

 その篠原の声で、オレは目を覚ます。

 

 体感、一瞬しか過ぎていない。オレもそれなりに疲労しているらしいな。

 

 オレは欠伸をしながらテントを出た。

 

「あ、綾小路くん。大丈夫?」

 

 篠原は男子全体に呼びかけた時よりも少し優しい声音でオレに話しかけてくる。

 

 彼女とはそこまで親しくしているわけではないが、それなりの信頼は稼げているらしい。

 

「眠いが、どうせ点呼で起きるんだ。何かあったのか?」

 

「うん、それは……全員起きたら言うね」

 

「そうだな、二度手間だ」

 

 まあ、下着盗難の件だと分かっているのだが。

 

 とっとと終わらせてまた昼前まで仮眠を取りたいオレは、平田に協力して男子を起こし、女子の前へ集めた。

 

「今朝、軽井沢さんの下着が無くなってたの」

 

 篠原の言葉で、男子たちがざわめく。

 

「平田くん。なんとかして犯人を見つけてもらえないかな?」

 

「でも、男子が盗ったという証拠があるわけじゃ……」

 

「取り敢えず、男子の荷物検査をさせてほしいの」

 

 その発言を待っていたオレは、そこで手を上げた。

 

「ちょっといいか」

 

「何、綾小路くん?」

 

 この件で、伊吹に疑いの眼差しが向くことは避けなければいけない。彼女には堀北を追い詰めるため動いてもらう必要があるからだ。

 

「仮に男子の誰かのリュックから下着が見つかったとして、そいつが犯人なのか?」

 

「そうに決まってるでしょ?」

 

「いや、むしろ違うに決まってる。女子の下着を盗み、そのまま自分のリュックに入れておくなんて間抜けなこと、池や山内でもしないぞ」

 

「「お、おい。綾小路?」」

 

「何が言いたいの?」

 

「つまり、荷物検査では盗まれた下着は見つかるかもしれないが、犯人の特定には繋がらない。むしろ誰かが冤罪をかけられてしまう可能性の方がずっと大きいんだ」

 

「……」

 

 平田の次くらいに信頼されているオレが相手だからか、篠原は少しは冷静に聞けているようだ。

 

「とは言ってもだ。例えばオレのリュックから見つかったとして、女子のヘイトがオレへ集まるのは避けられないだろ?」

 

「そう、かもね?」

 

「だから提案したい。荷物検査には賛成だ。しかし平田主導で、男子だけでやらせてもらう。下着が見つかったら素直に返還するが、どこにあったのかは開示しない。そして犯人捜しも男子に任せてもらいたい」

 

「……えっと、何の意味があるの?」

 

「まず、冤罪を避けられる。どこから見つかったのか分からなければ、冤罪をかけようがないだろ? 犯人捜しについては、女子に責められると分かっている状況ではまず名乗り出てくることはない。だから見つかったら、軽井沢へ個人的に謝罪・賠償させる。これで手を打ってくれ」

 

「冤罪の回避と犯人捜しのためってことね……」

 

 オレの言い方は、男子が犯人である前提に立っている。

 

 こうすることで、伊吹が疑われることを避けることができる。

 

 篠原は振り返って、女子たちと相談し始めた。

 

「ありがとう綾小路くん。本当に助かったよ」

 

「いや。結局、誰か個人への疑いを男子全体への疑いにすり替えただけだ」

 

 篠原はすぐに向き直った。

 

「分かった。綾小路くんの提案に乗るわ」

 

「ありがとう」

 

 ということで、男子全員で輪になって、1人内側に入った平田が全員の荷物を1周して検査する。

 

 もちろん山内のリュックに入っていたのだが、それについて騒ぎ立てることはせず、平田が代表して返還した。

 

 提案した者として『自分が犯人だからそんなこと言ってるんじゃないの?』と言われた時にシロを証明できるように山内のリュックに入れておいたのだが、必要無かったな。

 

 それから暫くして、目元を赤くした軽井沢が出てきた。

 

「下着泥棒と一緒の空間なんて耐えられない!」

 

 そういう要求の下、女子のテントを男子テントから離すことに。

 

 その作業は女子だけでは大変なので、平田とオレが助っ人として徴用されてしまった。

 

 おいおい、もしかして伊吹はオレの消耗を狙って下着を盗んだとでも言うのか? だとしたら大成功と言わざるを得ないが。

 

 テント移動終了後、占有更新までのたった数十分を仮眠を取って過ごす。平田も同じく4時の更新作業をしていたので、並んで寝た。

 

「時間だよ、清隆」

 

「ん……ああ」

 

 松下に起こしてもらいスポット巡りへ……行く前に、オレは伊吹へ接触した。

 

「伊吹、ちょっといいか」

 

「何?」

 

「焚火用の枝拾いを頼めないか。予報では明日から危ういらしいんだ」

 

「……まあ、それくらいなら」

 

「ありがとう。あっちの方に枝がよく落ちてるから、行ってみてくれ」

 

 それだけお願いして、三宅、小野寺、平田と一緒にスポットを巡る。

 

 オレがベースキャンプに戻ってきた1時間後に、Aクラスの監視へ赴いていた堀北も帰ってきた。

 

「ほら」

 

「ええ」

 

 キーカードを渡す。

 

 その瞬間を、伊吹はしっかりと見ていた。

 

 直前に行動範囲を指定することで、自然とキーカードの管理者が誰かを彼女へ伝えることができたのだ。

 

 それからオレは、19時頃まで熟睡。

 

 20時の点呼前にスポット巡りを済ませると、櫛田から昨日頼んだ購入物を受け取り、少しの間ベースキャンプを離れた。

 

 それは手鏡だ。

 

「……この辺りでいいか」

 

 オレはこの手鏡を例の覗きやすいスポットデバイスの上に配置して、更新の瞬間を真上から覗けるようにした。

 

 もちろんこんなことをすれば、通常は陽光の反射などでバレてしまうだろう。しかし明日8/6は天気が荒れると予報されていたので、気付かれない可能性が高い。

 

 まあ、これでも確実性に乏しいことは確かだ。なので、もう1つの策も準備は進んでいる。

 

 そして5日目夜中。オレは22時頃になっても起きていた。

 

 伊吹がシャワーを浴びるタイミングを待っていたのだ。

 

 彼女は人を待たせるのは気分が悪いと言って、毎回こんな夜に1人でシャワーを浴びている。

 

 その意味するところは、伊吹が唯一荷物を手離す瞬間だということだ。彼女はテントを使っていないので、就寝時でもリュックを抱えているのである。

 

 そうしてオレは、伊吹のリュックからオレの壊したデジカメを入手した。

 

 その直後、パラパラと雨が降り始めた。

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