映画『戦場の天使』。最初は誰もここまでになるとは思っていなかった。宝塚とAKB劇場、その延長線上の企画のはずだった。ところが、公開から数か月後には興行収入は記録を更新し続けていた。アジア、ヨーロッパ、南米、中東、どこでもヒットした。そして、アメリカ。映画会社の幹部たちが震えていた。 「また一位だ」 「今週も?」 英語吹き替え版がまさかの大ヒット。しかも、予想外の層に刺さった。特殊部隊経験者、退役軍人、消防士、警察官。誰かを護る危険な職業の男たち。ネット上では『あれは演技じゃない』 『本物だ』 『戦場を知っている目だ』 『映画俳優じゃない』 『本当に仲間を守る人間だ』 絶賛の嵐だった。元特殊部隊員の人気配信者が言った。 「戦場映画は腐るほど見てきたが、この映画だけは違う。本物だ。」 数百万再生された。
別の問題が起きた。女性だった。SNS、動画サイト、ニュース、あらゆる場所で009-7の話題が出ていた。 『理想の女性リーダー』 『強くて優しい』 『男性に頼らなくても戦える』 『それでいて思いやりがある』 009-7は頭を抱えた。 「またか」 アメリカでもだった。しかも、規模が大きい。運動家、大学教授、ジャーナリスト、社会活動家、様々な人々が009-7を語り始めた。ある有名評論家は言った。「009-7は新時代の象徴である!」 別の評論家「現代女性の理想像」 大学の講義「009-7現象について」 009-7は首をひねった。「何それ」 ある運動団体の巨大集会では、壇上に009-7の巨大写真、横断幕『BE LIKE 009-7』 009-7はコーヒーを吹いた。 「何、これ!」 002が笑い転げた。 「お前、思想になってるぞ」 004は真顔だった。 「完全になっているな」 「やめろ」 さらに、アメリカの有名雑誌の表紙が009-7。タイトル『21世紀のジャンヌ・ダルク』 翌週の別の雑誌『世界を変える女性100人』 一位 009-7。 翌々週、ドキュメンタリー番組『009-7の哲学』 「そんなものないよ」009-7は本気で困惑していた。
最も困ったのは、本人が全くそんなつもりではないことだった。インタビューで司会者が言った。 女性たちへのメッセージを」 009-7「え?」 「理想の女性像として」 「女性解放運動について」 「リーダー論について」 司会者が困った。009-7も困った。しばらく考えて「好きなことを頑張ればいいんじゃないか?」 それだけ言った。翌日、SNS『好きなことを頑張ればいい』 名言扱いになった。世界中に拡散した。009-7は絶望した。 「なんでだ?」 ギルモア邸で009が笑った。 「もう何を言っても名言になるんだね」 003も笑っていた。002は腹を抱えていた。007はネット記事を読み上げた。 「009-7の簡潔な言葉には深い哲学がある」 「ないよ」 「現代社会への鋭い批判である」 「そんなわけないよ」 「新しい時代の精神的指導者」 「絶対にない。」 004は静かに結論を出した。 「手遅れだな」 009-7は天井を見上げた。ブラックゴーストの世界規模の陰謀より 「偶像化される方が怖い」 それが本音だった。その頃、アメリカのどこかで巨大なファンクラブが設立されていた。名称【Sisters of 009-7】 会員数二百万人突破。009-7本人はまだ知らなかった。