003のCM騒動、映画の大ヒット、世界的スター化。その余波は思わぬ場所にまで届いていた。日本のとある大学の昼休み。学食では、「おいしいね」「そうだな」 009-7の甥っ子の拓也と詩織がいつもの昼食を取っていた。大学では有名だった。 仲が良すぎる、距離感がおかしい。バカップル。そう呼ばれていた。 「また一緒だ」 「羨ましい」 周囲の学生たちは慣れていた。だが、その日は様子がおかしかった。
女子学生たちが近付いてきた。 一人、二人、三人、もっと増えた。 「え?」 拓也と詩織は固まった。 「ちょっと聞きたいんだけど」 「はい」 「君」 女子学生が指を差した。 「009-7さんの甥なんだよね?」 「……はい」 しまった、と言った瞬間に思った。最近、ネットで少し話題になっていた。009-7の甥、中東自由連邦の建国の英雄の親戚、世界的有名人の身内。女子学生たちの目が輝いた。 「じゃあ、003さんとも知り合い?」 「知り合いだけど」 大歓声が上がった。 「本当だ!」 「やっぱり!」 「すごい!」 詩織はむすっとして機嫌が悪くなった。 さらに「会わせて!」 「写真!」 「サイン!」 「紹介して!」 「友達になりたい!」 収拾がつかなくなった。 甥っ子は困った。 「いや、そんな簡単に……」 「お願い!」女子学生の圧力は怖かった。 非常に怖かった。 拓也は観念した。
「ちょっと待って」 スマホを取り出して電話を発信した。 女子学生たちは見守った。まさか本当に電話するのか?数秒後『はい』 聞き覚えのある声がした。009-7だった。 「伯母さんというか伯父さん?」 『どうしたの?』 「ちょっと困ってる」 『また?』 「大学で」 『うん』 「003さんに会いたい人がたくさんいる」 周囲が静まり返っていた。 『なるほど』 009-7は少し考えた。 『学園祭いつ?』 「来月」 『フランソワーズ』 電話の向こう。 『なあに?』 003の声がした。女子学生たちは小さな悲鳴をあげた。 『学園祭行かない?』 『面白そうね』 『行く?』 『行くわ』 即答だった。女子学生たちは硬直した。拓也も硬直した。 「え?」 『じゃあ行くわね』 『楽しみ』 通話終了。沈黙の後「ええええええええ!?」 学食が揺れた。
一か月後の学園祭は大学始まって以来の人出だった。警備強化。テレビ局や報道陣が来た。屋台も来た。大混雑だった。理由は003と009-7の来校。世界的スターが二人。大学側も半分パニックだった。 「本当に来るんですか?」 「来ます!」そして来た。003は白いワンピースで優雅な笑顔。現れた瞬間、周囲が静かになった。あまりの美しさに声が出なかった。そして隣には009-7。銀髪、赤い瞳、気品、存在感。こちらも異常だった。学生たち「本物……」 「本物だ……」 「テレビより綺麗……」 女子学生たちは感動していた。003は微笑んだ。 「こんにちは」 悲鳴が校舎中に響いた。
詩織は009-7の隣にいた。009-7が耳元で囁いた。 「彼、人気者ね」 「困ります」 「嫉妬?」 「少し」 009-7は笑った。 「大丈夫」 「?」 「彼」 拓也を見た。女子学生に囲まれているが目線はずっと詩織だった。 「ちゃんと見てるよ」 詩織は少し赤くなった。拓也は女子学生たちに囲まれていたが、心の中では(助けて)だった。その様子を見た003は、くすっと笑った。 「ジョーみたい」 「確かに」009-7。
学園祭は伝説になり、大学史に残ることになった。