10人目のサイボーグ   作:れぷとん

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第116話 009-7改造計画

 スーパー銭湯事件の翌日、003は怒っていた。静かに怒っていた。それが一番怖かった。 「座りなさい」 009-7は正座した。002が小声で言った。 「終わったな」 009も頷いた。004は新聞を読んでいた。だが耳は完全にこちらを向いていた。 「何年女性やってるの?」  003が聞く。 「えーと」 「何年?」 「数年」 「数年よね?」 「はい」 「なのに男湯?」 「申し訳ありません」 即座に謝罪した。003は深いため息をついた。 「問題はそこじゃないの」 「?」 「あなた、自覚が無いのよ」 009-7は首を傾げた。 「自覚?」 「美少女である自覚」 そこにいた全員が頷いた。 「お前は無い」 002が断言した。 「無いな」 009も断言した。 「無い」 004まで言った。009-7は納得いかなかった。 「そんなにか?」 「そんなによ」 003が即答した。 「外出するとき何着てる?」 「ジャージ」 「何色?」 「黒」 「他は?」 「紺」 「他は?」 「灰色」 003が額を押さえた。 「おっさんじゃないの!」 「元おっさんだからな」 「そういう問題じゃない!」 説教第二ラウンドが始まった。

 

 そして、003は決意した。 「教育する!徹底的に」 「待て」 「待たない」 こうして、009-7銀の魔女改造計画が始まった。第一段階 マナー講習。数日後、一流ホテルで元外交官、元客室責任者、元王室アドバイザー、意味不明な講師陣が集まった。 「なぜこんなことに」  009-7が呟いた。 「観念しなさい」 003が笑顔で言った。怖かった。まず姿勢。 「背筋を伸ばしてください」 「こうか?」 「もう少し優雅に」 「優雅?」 次は歩き方「足運びを」 「戦場では必要ない」 「今は戦場ではありません」 次は座り方「膝を」 「こうか?」 「完璧です」 講師が驚いた。009-7はもともと頭が良い。身体能力はサイボーグなので非常に高い。一度理解すると早かった。第二段階 ファッション。003が本気を出した。百貨店、高級ブティックの試着室。 「次」 「まだあるのか」 「ある」 延々と続いた。最初は嫌そうだった009-7も「これは動きやすい」 「でしょう?」 「ポケットもある」 「そこなの?」 見る視点が違った。しかし、少しずつ変わっていった。髪型、服装、姿勢、仕草、表情。全部洗練されていった。 第三段階 美容。これが一番大変だった。 「化粧品の成分は」 「成分解析禁止」 「まだ何もしてない」 「顔を見れば分かる」 003は見抜いていた。 009-7は研究者だった。 美容液を見ると分析したくなる。 成分を見ると研究したくなる。 結果、講師に止められた。 「使う側になってください」

 

 数か月後のホテルのパーティー会場。003と009-7が並んで歩いていた。周囲が静かになった。 「誰だ?」 「王族か?」 「映画女優?」 「モデル?」 ざわめきが広がった。003は優雅に微笑んだ。009-7も自然に微笑んだ。立ち姿、歩き方、会話、所作。全てが洗練されていた。もはや、セレブ。それ以外に表現できなかった。遠くから見ていた002が呟いた。 「すげえな」 009も頷いた。 「別人みたいだ」 004も珍しく感心していた。 「完璧だな」 その時、003は満足そうだった。「どう?」 009-7は少し考えた。 「悪くない」 「でしょう?」 「だが」 「?」 「ジャージも捨てがたい」 003の笑顔が固まった。数秒後、「没収」 「待て」 「全部没収」 「やめろ」 「黒いジャージは禁止」 「横暴だ!」 世界最強の電子戦サイボーグは、ミサイルも止められる、衛星も落とせる、国家も守れる。だが、003には勝てないのだ。

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