日本の00ナンバーサイボーグたちが共同生活している家で、「レイナ」003の声がした。009-7は反射的に嫌な予感がした。 「なに?」 003が手招きしていた。その表情を見て確信した。(説教だ) 最近よくある。 「ちょっと来なさい」 「私は何もしていないよ」 「だから来なさい」 有無を言わせなかった。リビングでは002と009が察して距離を取っていた。 「また始まった」 002が呟いた。 「今回は何だろうな」 009が紅茶を飲んだ。004は本を読みながら言った。 「十中八九、服装関係だな」 正解だった。003は雑誌を広げた。「これ」 写真だった。先日のイベント、親衛隊との交流会。009-7本人が写っていた。 「何か問題ある?」 「下着」 「下着?」 「下着よ」 003の額に青筋が浮いた。 「服によっては透けるのよ!」 009-7は首を傾げた。 「今日は透けてないよ?」 「今日はね!」 003は机を叩いた。 「今日は!」 009と002が吹き出した。 「そこ笑うところじゃない!」 003の怒声が飛んだ。二人とも静かになった。 「レイナ」 「はい」 「もっと気を付けなさい」 「そんなに見たいものかな」 沈黙が来た。003が固まった。002が噴き出した。009は咳き込んだ。004は本を閉じた。嫌な予感しかしなかった。 「見たいやつには見せておけば?」 003のこめかみが震えた。 「というか」 009-7は真面目に考え込んだ。 「見て気持ち悪くないのかな」 完全におっさんだった。あまりにもおっさんだった。003が両手で顔を覆った。 「だめだこの人」 「何が?」 「全部よ!」 003は立ち上がった。
「鏡の前に来なさい!」 「なぜ!?」 「いいから!」 連行された。洗面所の大きな鏡。003が009-7を鏡の前に立たせた。 「見なさい」 「見てる」 「ちゃんと見なさい」 「見てるってば」 鏡の中には、銀髪、赤い瞳、整った顔立ち。映画スター、モデル、アイドル。そう言われて納得する姿が写っていた。 「何が見える?」 「私」 「そう」 「私だよね」 「そうじゃない!」 003が頭を抱えた。 「世間がどう見てるか考えなさい!」 「?」 「あなた、自分がどれだけ目立つかわかってる?」 「戦場なら」 「戦場じゃなくて日常!」 003の苦労は尽きなかった。 「あなたがコンビニに行くだけでニュースになるの!」 「そんな馬鹿な」 「本当よ!」 実際そうだった。009-7は有名人すぎた。しかも本人にその自覚が薄いのだ。 「だから身だしなみも大事なの」 「女は大変だなあ」 「そうよ」 「面倒だよ、私はジャージでいい」 「だめ」 「ランニングシャツと短パン」 「もっとだめ」 「楽なのに」 「だめに決まってるでしょ」 003は即答した。 009-7は心底うんざりした顔をした。 「おっさんの頃は楽だったのに」 「今は違うの」 「なぜ」 「女だから」 「面倒だなあ」 「そういうものなの!」 003は叫んだ。
002が笑いを堪えていた。 「003も大変だな」 「母親みたいだ」 009が苦笑する。004は静かに紅茶を飲んだ。 「むしろ今まで放置されていた方がおかしい」 全員納得した。一時間後、ようやく説教が終わった。疲れ切った009-7がリビングへ戻った。 「終わった?」 009が聞いた。 「女は面倒だよ」 ソファに倒れ込んだ。「私は戦争の方が楽」 「それはどうなんだ」004が呟いた。003も戻ってきた。 「聞こえてるわよ」 「本当だよ」 「聞こえてるわよ」 再び説教が始まりそうになった。009-7は加速装置を使って逃げたくなったが必死に我慢した。その様子を見て、002と009は腹を抱えて笑った。004は静かにコーヒーを飲み、003は再び頭を抱えた。009-7は日常生活では003に勝てないのだ。