10人目のサイボーグ   作:れぷとん

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第133話 ファッションブランド騒動

 高級ブランド本社の役員会議室では重役たちが勢揃いしていた。その中央に、003と009-7がいた。役員たちは内心緊張していた。 「本日はありがとうございます」 社長が頭を下げた。 「こちらこそ」 003が微笑んだ。隣の009-7はコーヒーを飲んでいた。いつも通りだった。 「実際に着用していただいた感想をぜひ」 まず003が語り始めた。 「縫製が素晴らしいですね」 「素材も良いです」 「シルエットも綺麗」 「特にジャケットは完成度が高いです」 デザイナーたちが感動した。 「わかってくれる……」 職人たちが涙ぐんでいた。続いて009-7。 「着心地が良い」 役員たちが頷いた。 「ありがとうございます」 「ポケットが便利、肩が凝らない」 「ありがとうございます」 「走りやすい」 「ありがとうございます?」 途中から反応に困り始めた。しかし、009-7は本気だった。 「服なんて着心地が一番だよね」 その言葉にデザイナーたちは妙に納得した。この人は本当に着ている。広告塔ではなく生活している。だから説得力があった。

 

 会議後にはデザイナーとの交流会があった。ここで予想外のことが起きた。003とデザイナーが盛り上がった。 「このラインが美しいの」 「わかります!」 「ここを少し絞ると」 「そうなんです!」 完全に意気投合していた。一方、009-7はデザイナーたちに囲まれていた。 「本物だ……」 「信じられない……」 「綺麗だ……」 「人類なのか……?」 最後はちょっと失礼だった。 「人類だよ」 009-7が答える。さらに感動された。 「声も素敵だ……」 意味がわからなかった。そして、ある若いデザイナーが言った。 「この人専用のブランドを作れないでしょうか」 会議室が静まった。社長が振り返った。 「続けて」 「ただの広告ではなく、009-7のためのブランド」 「機能性、美しさ、活動性、戦場でも街でも使える」 003の目が輝いた。 「面白いわね」 「でしょう!」 盛り上がった。009-7だけ置いていかれた。 「何の話?」 誰も聞いていなかった。数時間後には正式決定した。新ブランド。 『REINA』 銀の魔女をイメージした新ライン。社内はお祭りになった。

 

 その日の夜、娘へ電話した。「今日ね」 「うん」 「私専用ブランドができるらしい」 「え?」 「よくわからんが、服作るんだと」 娘は頭を抱えた。 (また何か始まった) 嫌な予感しかしなかった。翌日の女子大学で昼休み。案の定だった。 「ねえ!」 囲まれた。 「何!?」 娘が叫んだ。 「新ブランド本当!?」 「え?」 しまった。知っている顔だった。つい「うん」 言ってしまった。沈黙の後、「きゃあああああ!」爆発した。 「本当なの!?」 「いつ!?」 「どこ!?」 「何が出るの!?」 娘は後悔したが、もう遅かった。情報は光速で拡散された。SNS『娘さんが認めた』 『新ブランド確定』 『REINAライン』 数時間でトレンド入りした。

 

 ブランド本社の広報部「なぜ漏れた!?」 困惑していた。一方、女子大学では「少しでも早く買えない!?」 「予約できない!?」 「先行販売は!?」 娘は追い詰められた。その夜、009-7へ相談した。 「どうしよう、予約したいんだって」 「予約くらいできるんじゃね?」 軽かった。娘はそれを伝えた。翌日、「予約できるらしい!」 同級生A「本当!?」 「娘さん情報!」 同級生B「確定情報だ!」 同級生C、さらに拡散した。友達、先輩、後輩、他大学、SNS、親衛隊、ファッション誌、インフルエンサー。全員が動いた。三日後のブランド本社では電話回線が死んだ。 「予約したい!」 「予約まだですか!」 「娘さん情報を見ました!」 広報部長が絶叫した。 「娘さん情報って何だ!」 社長も頭を抱えた。 「まだ何も決まってない!」 デザイナーは青ざめていた。 「まだ描いてません!」

 

 009-7はリビングでジャージ姿だった。テレビを見ながらみかんを食べていた。 「なんか騒がしいな」 003がゆっくり振り返った。 「あなたのせいよ」 「なぜ?」 「全部あなたのせい」 その時、ブランド社長から電話が入った。そして、ファッションブランドの新ラインが、 正式発表前に予約でいっぱいになるという伝説が生まれるのであった。

 

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