10人目のサイボーグ   作:れぷとん

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第136話 秋葉原再訪

 数日前、秋葉原で大騒ぎになった。009-7は反省しているように見えた。しかし、反省していなかった。 「今度は上手くやればいいだろ」 003は頭を抱えた。 「何もわかってない」 004はコーヒーを飲みながら言った。 「また騒ぎになるな」 「ならないよ」 「なる!」 全員一致だった。しかし、009-7は秋葉原に行った。懲りずに電車で変装もなし。ブランドのREINAラインを着て、普通に歩いていた。駅を出た瞬間 「あれ……?」 「本物?」 ざわつき始めた。009-7は気付いていなかった。本人の意識は、電子パーツ、古いゲーム、フィギュア、その辺に向いていた。 「懐かしいな」 元おっさんである。

 

 しばらく歩いていると「ひゃっ」 小さな声がした。振り返るとメイド服の少女が立っていた。ビラを握りしめていた。緊張で震えていた。 「どうしました?」 009-7が聞いた。少女は勇気を振り絞った。 「ぜ、ぜひ来てください!」 ビラを差し出した。メイドカフェだった。009-7は考えた。 「そういえば」 秋葉原と言えばメイドカフェ。昔から有名だった。 「行ったことないな」 興味が湧いた。 「じゃあ行くね」 少女は硬直した。 「え?」 「行く!」 数秒後 「えええええええ!?」 絶叫だった。そして、十分後には、店内でドアが開いた。 「お帰りなさ……」 メイドが止まった。全員硬直した。そして「本物だああああ!」 店長が椅子から落ちて厨房からコックが飛び出してきた。メイドたちは泣きそうだった。009-7は普通に席へ座った。 「メニューください」 静かだった。誰も動かなかった。 「メニュー?」 「は、はいぃ!」 メイドが飛んできた。手が震えていた。 「おすすめは?」 「お、お、おむらいすです!」 「じゃあそれで」 客席では誰もゲームしていなかった。全員009-7を遠巻きに見ていた。 「見られてるな」 本人は平然としていた。元研究者である。学会発表で鍛えられていた。

 

 しばらくして、一人の客が勇気を出した。 「009-7さん」 「ん?」 「写真いいですか」 「いいよ」 快諾だった。それが始まりだった。次々と人が来た。 「映画見ました!」 「ありがとうございます」 「戦場の天使好きです!」 「そうか」 「秋葉原来るんですね!」 「好きだからね」 誰もが意外だと思った。世界的英雄、国家元首、サイボーグ。なのに、会話内容が「昔のPC-98知ってる?」 「知ってます!」 「おお!」 「レトロゲーム好きなんですか!?」 「好きだよ」 完全にオタクだった。客たちは打ち解け始めた。009-7も楽しかった。おっさん時代にこういう店に来たことはなかった。しかし、居心地が妙に良かった。

 

 一人の客がSNSへ投稿した。 『銀の魔女とツーショット』 写真付き。さらに、『普通にレトロゲーム談義してる』 動画付きだった。十分後にはSNSが爆発した。 『どこの店!?』 『秋葉原!?』 『今から行く!』 『本物!?』 一気に拡散した。店長が青ざめた。 「まずい」 窓を見た。人が増えているた。外は人でいっぱいだった。親衛隊、ファン、観光客が秋葉原中から集まってきた。009-7は窓を見た。 「増えたなあ」 呑気だった。 「増えたじゃありません!」 店長が叫んだ。メイドたちは半泣きだった。客たちは笑っていた。 「またやりましたね」 「またですね」 「伝説更新だ」 数時間後、なんとか裏口から脱出した。行こうと思っていた店、電子パーツ店、レトロゲーム店、模型店、全部行けなかった。 駅へ向かいながら009-7は肩を落とした。 「結局、何も見られなかったな」

 

 その日の夜、リビングで003がニュースを見ていた。 『銀の魔女、秋葉原メイドカフェ来店』 『SNSで話題騒然』 『店は過去最高売上』 009-7はソファに倒れ込んだ。 「次は平日に来よう」 004が即答した。 「やめてくれ」 002も頷いた。 「秋葉原が壊れる」 009は笑いながら言った。「今度はみんなで行こうか」 009-7の目が輝いた。 「それだ!」 003は静かに思った。 (絶対に止めなきゃいけない)

 

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