共同生活中のリビングでは、009-7がソファでくつろいでいた。テレビでは秋葉原特集が流れていた。 「メイドカフェかあ」 009が興味深そうに言った。 「面白そうだね」 009-7は頷いた。 「結構居心地良いんだよ」 002が嫌な顔をした。 「やめろ」 004も本を閉じた。 「やめてくれ」 003は即座に察した。 「絶対だめ」 「なぜ」 009-7が不満そうに言った。 「この前大騒ぎになったでしょう!」 「今回は009もいるよ」 「そういう問題じゃない!」 しかし、二人は聞いていなかった。
数日後の秋葉原に向かう電車に009と009-7は普通に乗っていた。変装なし。周囲の乗客が妙にそわそわしていた。 「あれ……」 「もしかして……」 スマホが向けられた。写真、動画がSNSに上げられた。まだ駅に着いていないのだが『009と009-7秋葉原方面へ移動中』 投稿された。009-7は気付いていなかった。 「今日はどこ見ようかな」 009も楽しそうだった。 「レトロゲームも見たいな」 二人とも平和だった。秋葉原駅のホーム、改札はざわざわしていた。地上へ出た。人が増えた。もっと増えた。009が首を傾げた。 「なんか見られてない?」 「気のせいだろ」 009-7が答えた。全然、気のせいではなかった。SNSでは既に『銀の魔女と加速戦士』 『秋葉原降臨』 がトレンド入りしていた。二人はまったく気付かず前回来たメイドカフェへ向かった。
店の前に例のメイドがいた。目が合った。 「え」 「こんにちは」 009-7が手を振った。 「また来た!」 メイドが小さく呟いた。感動と恐怖が半々だった。そして、店内に入った。 「お帰りなさいませ!」 今回は言えた。しかし、顔は真っ赤だった。目の前には、世界的英雄二人が並んで座っていた。絵になりすぎていた。銀髪の009-7、栗色の髪の009。まるで映画のワンシーンだった。客たちがざわついた。 「すごい」 「本物だ」 「絵になるな」 誰かが写真、動画を撮った。SNSに上げた。終了であった。数分後には 『009と009-7がデートしてる!?』 『秋葉原メイドカフェ』 『映画みたい』 拡散して爆発した。店の外は人でいっぱいになった。まただった。009が窓を見た。 「増えてない?」 「増えてるね」 009-7も認めた。しかし、二人とも危機感がなかった。 「人気者だね」 「そうだね」 メイドたちと店長は頭を抱えた。警察も来た。
結局、数時間後に裏口から脱出した。またしても目的地には行けなかった。帰宅したら、リビングで003が待っていた。腕組みして無言だった。怖かった。002と004は遠くへ避難していた。009が小声で言った。 「まずいね」 「まずいな」 009-7も同意したが手遅れだった。 「二人とも」 003が微笑んだ。怖い。 「はい」 「何をしに行ったの?」 「秋葉原」 「そうじゃない」 「メイドカフェ」 「そうじゃない!」 003の声が響いた。 「どうして電車で行くの!」 「普通だから」 「普通じゃない!」 「メイドカフェ楽しかったよ」 「そこじゃない!」 009が助け船を出そうとした。 「でも楽しかったよ?」 「ジョーまで!」 火に油だった。003の説教は長かった。三時間たっても終わらなかった。途中で002がコーヒーを差し入れた。004は途中から読書を始めた。009と009-7は正座していた。そして最後に003は疲れ果てて言った。 「お願いだから学習して」 009と009-7は顔を見合わせた。 「学習したよ」 「したね」 003の表情が少し和らいだ。 「今度から?」 二人は同時に答えた。 「変装する」 003は天井を見上げた。全然学習していなかった。