009-7の元部下の男には悪い癖があった。飲み会になって酒が入ると始まるのだ。 「聞いてくれ」 周囲は「ああ、始まった」 「まただ」 「銀の魔女の話だな」 完全に扱いが決まっていた。本人はスマホを取り出した。 「これ見ろ」 009-7と自分が肩を組んでいた。笑顔で距離が近い。 「だから何回も見たって」 「AIだろ」 「違う!」 「最近のAIすごいからな」 毎回同じ流れだった。ついに彼はキレた。 「じゃあ本人を呼ぶ!」 全員爆笑した。 「呼べるわけないだろ!」 「銀の魔女だぞ!」 「国家元首だぞ!」 「映画にも出てるんだぞ!」 元部下は勢いでLINEした。 『今度飲み会あるんですが来ますか?』 送ってから後悔した。無理だよな。数秒後に返信が来た。 『行けるよ』 全員固まった。さらに『いつやるの?』 彼は震えながら返信した。 『今度の金曜日です』 『了解』 参加者一同が沈黙した。 「嘘だろ」 「嘘だよな」 誰も信じなかった。
そして金曜日になった。居酒屋の個室に全員集まった。しかし、誰も本気にしていない。 「来るわけないよな」 「来ない来ない」 「来たら土下座する」 その時、店員が襖を開けた。 「お連れ様です」 そして入ってきた。銀髪、赤い瞳、絶世の美少女、009-7。 「こんばんは」 空気が凍った。誰も動かないかった。数秒後に「本物だああああ!」 大騒ぎになった。店員が驚いた。隣の個室まで聞こえた。009-7は普通だった。 「久しぶりだね」 元部下へ手を振った。それだけで彼は感動していた。 「本当に来た……」 その日、彼は人生最大のドヤ顔をした。 「だから言っただろ」 周囲は土下座した。 「すみませんでした」 「信じてませんでした」 「本当に知り合いだったんですね」 完全勝利だった。
しかし、問題はここからだった。酒が進んで、みんな打ち解けた。009-7も元おっさんである。飲み会は嫌いではない。気軽に話した。 「最近、仕事どう?」 「部長になりました!」 「出世したなあ!」 普通に元上司だった。その結果、勘違いする男が出てきた。 「連絡先交換できますか」 「いいよ」 「今度二人で食事」 そこまで言った時だった。 「だめ」 低い声がした。全員振り向くと003がいた。いつの間にか来ていた。009-7を放置するとろくなことにならないと経験から学んでいた。そのため、後から様子を見に来たのだった。男たちは硬直した。003と009-7、二人並ぶと破壊力が高すぎた。 「こんばんは」 003が微笑んだ。全員背筋を伸ばした。 「こんばんは!」 なぜか敬礼した者までいた。003は009-7を見た。 「また適当に返事したでしょう」 「してないよ」 「してる」 即答だった。009-7は黙った。003には勝てなかった。
その後、飲み会は大成功だった。美女二人、元上司で銀の魔女と003。参加者は夢のような時間を過ごした。しかし、問題は翌日だった。大量の写真があった。SNSには上げていないが、スマホには残っていた。そして、奥さんたちに見つかった。同時多発だった。 「この女誰?」 「説明して」 「なんで腕組んでるの?」 「楽しそうね?」 大修羅場になった。旦那たちは必死に説明した。 「違う!」 「銀の魔女だから!」 「世界的有名人だから!」 「元上司だから!」 奥さんたちは冷たい目で見た。 「へえ」 「それで?」 「そんな人があんたと飲み会するわけないでしょ」 説明になっていなかった。009-7のところに元部下からLINEが来た。 『家庭が危険です』 数秒後に返事をした。 『頑張れ』 非常に他人事だった。その画面を見た003は「原因の一人が何言ってるの」と呆れていた。