10人目のサイボーグ   作:れぷとん

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第142話 秘密のデート?

 高級ブランドとの契約から一か月ほど経過した頃、009-7は上機嫌だった。 「楽だ」ソファでくつろぎながら呟いた。003は紅茶を飲んでいた。 「何が?」 「服」 即答だった。 「朝起きる」 「着る」 「終わり」 実にシンプルだった。 以前は「その服はだめ」 「なんで?」 「だめだから」 というやり取りが頻発していた。しかし今は違う。ブランドから届く、着る、以上。003も文句を言わない。009-7としては革命だった。 「文明の勝利だね」「何か違う気がするけど」009が苦笑した。

 

 問題もあった。最近、妙に見られるのだ。写真を撮られるたり声をかけられたり。特に女性から。 「不思議だよね」009-7は本気で言った。「何が?」 「最近女性に話しかけられるんだよ」 003は額を押さえた。 「まだわからないの?」 「何が?」 説明しても無駄だった。REINAラインの大ヒット。世界中で話題になって本人は歩く広告塔なのだ。しかも、銀髪、赤い瞳、絶世の美少女。目立たないわけがない。しかし、本人は理解していなかった。

 

 そんなある日、009が言った。 「今日は僕の番だね」 護衛ローテーション。最近、009-7を一人で外出させると何かやらかす。そのため誰かが付き添うことになっていた。今回は009。ただそれだけのことだと思っていた。しかし、その日の009-7の服装は新作だった。まだ発表前のREINAライン最新モデル。長いコート、上品なシルエット、洗練された小物、完璧なコーディネート。009も普通に格好良かった。結果、街を歩く、人が振り返る。「見られてるな」 009が言った。 「そうかな?」 009-7は気付いていなかった。二人並んでいると絵になりすぎた。映画のポスターみたいだった。しかも、最新ファッションで未発表新作。写真と動画がSNSに投稿された。拡散した。 『009と009-7』 『デート?』 『新作コーデ』 『美しすぎる』

 

 翌日の週刊誌の表紙の大見出しが酷かった。 『009と009-7 秘密のデート!?』 00ナンバーサイボーグの家で朝の食卓。全員、沈黙していた。記事を読んだ。さらに沈黙した。そして、002が吹き出した。「ははははは!」 耐えられなかった。 「秘密のデートだって!」 009も笑い始めた。 「秘密でも何でもないよ」 004も記事を読んだ。数秒後、肩が震え始めた。笑っていた。記事は続いた。 『003と009は破局か!?』 「してない」 003。 『銀の魔女の略奪愛!』 「してない」 『二人の間に女の戦い勃発!?』 「してないってば!」 003が机を叩いた。全員爆笑だった。さらに記事は書いていた。『最近009-7が女性向けブランドで活躍』 『009との距離も近い』 『003との関係はどうなるのか』 完全に妄想だった。009-7は首を傾げた。 「なんで私なんだろ」 002が笑いながら言った。 「お前だからだ」 「意味がわかんない」 003もため息をついた。 「私もわからない」

 

 それから数日、テレビ、ネット、雑誌、あちこちのメディアが騒いだ。結局、003が記者会見で 「私が送り出しました」 「ただの見張りです」 と説明して終了した。それでも、週刊誌は諦めなかった。翌週、新しい見出しが出た。『003公認!?複雑すぎる00ナンバーサイボーグの人間関係!』 食卓で全員大爆笑した。009-7は「だからなんで私なんだよ?」理解できていなかった。

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