10人目のサイボーグ   作:れぷとん

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第143話 ゴシップ誌の記事

 週刊誌騒動は終わらないどころか悪化した。食卓に00ナンバーサイボーグたちが集まっていた。テーブルの上には問題の記事があった。 『003公認!?』 『銀の魔女との特別な関係』 『二人の距離が急接近!』 002が笑っていた。笑いすぎて苦しそうだった。 「もうだめだ」 009も頭を抱えていた。 「なんでこうなるんだろう」 004はコーヒーを飲んで言った。「説明不足だな」 003も頷いた。 「そうね」 全員の視線が009へ向いた。009は嫌な顔をした。 「え?」 「ジョー」 003が言った。 「あなたが説明しなさい」 「僕が?」 「あなたしかいないでしょ」 002も頷いた。 「主役だしな」 009-7も頷いた。 「確かに」 なぜか本人も賛成だった。数日後、インタビューが行なわれた。女性誌の編集部は期待していた。恋愛、友情、葛藤、そういう話を聞けると思っていた。

 

 009は最初から顔が赤かった。こういう話は苦手だった。 「まず」 記者が聞く。 「003さんとの関係について」 009は深呼吸して言った。 「好きです」 即答だった。 記者が固まった。 「はい?」 「好きです」 さらに赤くなった。 「昔からです」 「今もです」 「これからもです」 記者たちは猛烈にメモを始めた。女性誌編集部は歓喜した。続けて「009-7さんとの関係は?」 009は即答した。「仲間です」 「戦友です」 「家族みたいなものです」 「大切な人です」 そして少し考えて。 「でも恋愛ではありません」 言い切った。003が横で微笑んだ。

 

 女性記者たちは感動していた。 「素敵……」 「誠実……」 「本物だ……」 記事は大好評だった。 SNSでは『ジョー最高』 『こんな男性いるの?』 『003が羨ましい』 『理想の恋人』 女性人気はさらに上がった。問題はゴシップ誌だった。翌週、新しい記事が載った。見出し。『009 苦渋の告白』 嫌な予感しかしなかった。記事を読むと『003への愛を語った009。しかし009-7との特別な絆も認めた』 まだわかった。 『戦場で生まれた理解者同士の関係』 さらに読むと『美女二人の間で揺れる心』 009「揺れてないよ」 003「揺れてないわよね」 全員一致だった。

 

 記事は止まらなかった。 『満たされぬ銀の魔女の想い』 リビングで009-7が記事を読んでいた。数秒間の沈黙の後 「いや」 全員が振り向いた。 「何?」 003が聞いた。009-7は記事を指差して言った。 「満たされぬ心って」 「うん」 「私の心、おっさんなんだけど」 002が吹き出した。 「そうだった!」 004も肩を震わせた。009は笑いを堪えていた。003も耐えられなかった。 「確かに」 記事の内容は、悲恋、叶わぬ想い、美しい葛藤。しかし、当人の頭の中は、『今日の夕飯どうしよう』 『秋葉原また行きたいな』 『新しいPCパーツ見たい』 ほぼおっさんだった。009-7は真面目に考えた。 「そもそも、ジョーは003が好きだろ」 「好きだよ」 「じゃあ終わりでは」 「終わりだよね」 論理的だった。だが、ゴシップ誌に論理は通用しないのだ。翌々週、さらに記事が出た。『語られない銀の魔女の沈黙』 009-7は記事を閉じた。 「もうだめだな」 003も頷いた。002は笑いながら言った。 「諦めろ」 004も同意した。 「君が普通に生きようとするのは無理だ」 009-7は首を傾げる。 「私は普通だぞ」 その言葉に全員が同時に吹き出した。009-7が普通であるはずがなかった。

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