10人目のサイボーグ   作:れぷとん

147 / 148
第145話 巻き込まれた甥

 009-7専用ブランド、REINAラインは世界的な成功だった。その結果、009-7本人はもちろん、娘も被害を受けた。女子大学で 「ねえ!」 「次の新作は?」 「限定色は?」 「情報ない?」 毎日だった。娘は疲れていた。一方、甥は平和だった。大学のキャンパスで彼女の詩織と昼食を食べていた。普通の大学生活だった。誰も聞いてこない。なぜなら男だから。 女子学生たちは思っていた。 「ファッションのこと聞いてもね」 「知らないよね」 「男だし」 正しかった。実際、甥は知らなかったし興味もなかった。

 

 ある日、学食で女子学生たちが雑談していた。 「そういえば」 「何?」 「009-7さんって明日の服とかどうしてるんだろ」 何気ない一言だった。甥が反応した。 「聞いてみる?」 全員が 「え?」 「聞けるの?」 「聞けるよ」 スマホを取り出してLINEで送った。 『レイナさん』 数秒後 『なあに?』 即返信だった。脳内で接続しているのは相変わらずだった。 『明日の服どうするの?』 送信。女子学生たちは固唾を飲んで見守った。数秒後、返信が来た。 『説明難しいな』 『写真送る』 甥は言った。 「写真だって」 女子学生たち。 「写真!?」 「写真!?」 「写真!?」 送られてきた画像を開いた。全員が硬直した。未発表のREINAライン新作だった。コート、バッグ、アクセサリー、全部新作。しかも、009-7本人が着ていた。自撮りだった。背景はリビングだった。妙に生活感があった。しかし、服は完璧だった。女子学生たちは沈黙した。十秒経過して「きゃああああああ!」 周囲が振り向いた。 「未発表!」 「新作!」 「本物!」 大騒ぎになった。甥はようやく事態を理解したが、もう遅かった。女子学生A「送って!」 女子学生B「私にも!」 完全に終わった。

 

 数時間後の学内。 『009-7新作流出』 『ソースは甥』 『本物』 情報が流れ始めた。さらに、別学部、別大学、SNS、ファッション系掲示板に拡散。ブランド本社の広報部では「またか」 広報部長が呟いた。もう慣れていた。 「今度は誰だ」 「甥です」 もう怒る気力もなかった。その日の夜、甥から電話が来た。 「レイナさん」 「なに?」 「写真なんだけど」 「送ったやつ?」 「未発表の作品だったみたい」 「そうなんだ」 009-7は本気で知らなかった。003の声が後ろから聞こえた。 「レイナ!」 「なに?」 「なんで送ったの!」 「聞かれたから」 「そうじゃない!」 電話越しでもわかった。説教が始まった。甥は電話を握りながら遠い目をした。娘が疲れていた理由を理解した。

 

 翌日の大学で甥はまた囲まれていた。 「新作情報ある!?」 「次は!?」 「写真!」 「まだある!?」 甥は頭を抱えた。今まで平和だったが完全に終わった。009-7の身内である限り、平穏な学生生活は無理だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。