10人目のサイボーグ   作:れぷとん

150 / 150
第148話 妻は親戚から巻き込まれた

 009-7の妻は落ち着いていた。娘は女子大で囲まれ、甥は大学で囲まれ、妹はスーパーで囲まれた。しかし、妻は無事だった。なぜなら、009-7がおっさん時代からの夫婦で何十年も連れ添った。009-7本人ですら頭が上がらないのだ。だから誰も近寄らなかった。妻自身も思っていた。 「私は大丈夫」 ブランド騒動もファッション騒動も適当に流しておけばいい。そう思っていた。

 

 ある日の午後、従妹から電話が来た。久しぶりだった。子供の頃はよく遊んだが大人になって疎遠になっていた。夫の葬式で再会した。そのくらいの距離感だった。 「元気?」 「元気よ」 他愛のない話と近況報告、子供の話が続いた。そんな中、「実はね」従妹が笑った。 「うちの娘が大変なの」 「何が?」 「009-7さんの服」 妻は吹き出した。 「ああ」 またか。 「欲しいんだって」 「そういう年頃だものね」 笑い話だった。その時、後ろから声がした。 「代わって!」 電話が奪われた。従妹の娘だった。高校生。妻にとっては赤ん坊の頃に会ったきりだった。 「こんにちは!」 元気いっぱいだった。 「こんにちは」 「私、レイナさん大好きなんです!」 「そうなの」 「専用ラインも大好き!」 「そうなのね」 「次はどんなデザインなんですか!?」 妻は笑った。若いなあ、と思った。そして、軽い気持ちで言ってしまった。 「そういえば進学祝いもあげてなかったね」 「え?」 「ハンカチくらいなら買ってあげるよ」 電話の向こうで悲鳴が上がった。 「本当ですか!?」 「本当よ」 大喜びだった。電話を切った。

 

 そして、何気なく009-7へLINEした。 『こんなことがあった』 数秒後 『進学祝いだね』 『そう』 『それなら新作のハンカチあるよ』 即答だった。 『本当?』 『ある』 妻は喜んだ。 『助かる!』 高級ブランドだ。普通に買うと高い。非常に助かった。数日後、荷物が届いた。妻は、開けて固まった。ラッピングが豪華、高級感がすごい。箱、リボン、カード付き。しかも、カードには 『進学おめでとう!レイナより』 直筆だった。妻は頭を抱えた。 「これはまずい」 絶対まずい。しかし、もう遅かった。

 

 その週末、009-7本人が訪問した。久しぶりの親戚宅だった。従妹は緊張していた。従妹の娘は硬直していた。そこへ、銀髪、赤い瞳の世界的有名人である本人登場。 「進学おめでとう」 ハンカチを渡した。 従妹の娘は沈黙の後 「きゃあああああああ!」 近所に響いた。その日の夜、SNSには上げなかった。ちゃんと約束は守った。しかし、友達には言った。言わないはずがなかった。 「レイナさん本人から貰った」 カード、ハンカチの写真を見せた。翌日には学校中に広まった。親戚中にも広まった。さらに遠縁にも広まった。そして、数日後には妻のスマホが鳴った。親戚だった。 「久しぶり!」 久しぶりすぎた。 「娘がね」 嫌な予感がした。 「レイナさんの」 やっぱりだった。妻は悟った。自分も巻き込まれた。夜のリビングから妻が電話をかけた。009-7が聞いた。 「どうしたの?」 「あなたのせい」 「なぜ?」 「親戚中から電話来る」 009-7は少し考えた。 「人気者だな」 「他人事みたいに言わないで」 即座に返された。その時、妻のスマホがまた鳴った。知らない親戚だった。何十年も会っていない。妻は天井を見上げた。 009-7は少し申し訳なさそうな顔をした。しかし、その直後にまた電話が鳴った。完全に巻き込まれていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

愛と勇気と正義にかけて、市民をお守りいたします!(作者:イングラマン)(原作:機動警察パトレイバー)

某巡査の娘が特車二課第二小隊に配属される、原作再構成二次小説です。▼自分が読みたいがために投稿しました。▼・TVアニメ版を軸にOVA、漫画版や小説版をミックスしています。▼・転生オリ主最強です。▼・一部キャラクターの生年と経歴を変更しています。▼・作者は警察組織や軍事関係、コンピュータについてはネットで調べた程度の知識しかありません。▼以上の点を踏まえて、本…


総合評価:4160/評価:9.02/完結:26話/更新日時:2026年09月11日(金) 19:00 小説情報

転生バドは勝利を夢見る(作者:ぶーく・ぶくぶく)(原作:機動警察パトレイバー)

※本作は作者が読みたい原作改変を自給自足する趣味作です。感想や考察はありがたく拝見しますが、展開は作者の予定と趣味を優先して進めます。▼オタクの夢見る転生もの。▼リアルっぽい世界でインドで人買いに攫われて外れかと思ったら、ボク、バドリナード・ハルチャンドやん!▼グリフォン乗れるやん!▼ならアルフォンスに勝たなあかん。▼原作通りなんてつまらない。▼性能は勝って…


総合評価:1130/評価:7.23/完結:64話/更新日時:2026年08月18日(火) 05:00 小説情報

ちゃんと軍人教育受けてるジィッドくん(作者:ぶーく・ぶくぶく)(原作:ファイブスター物語)

ニナリスのA-B1-B1-B2-B2:VVS1・L型って見てさ。クリアランスVVS1が嫁いでくるのにジィッドくん残念過ぎないと思って妄想を形にしてみます。これミースを誘拐したり、エンジン爆破しそうにないから、死なないで済むかしら?▼ラストまで投稿したぜ。2026年6月18日完結。▼トローラ・ロージン転生「https://syosetu.org/novel/4…


総合評価:902/評価:8.5/完結:161話/更新日時:2026年06月18日(木) 00:00 小説情報

【完結】最も手を伸ばすのは神威の花。(作者:SUN'S)(原作:ゴールデンカムイ)

彼女は糸色景と相楽左之助の娘だ。▼明治40年、彼女は北海道に来ていた。母のやり残した事を知るため、母の見た世界を知るため、それから中々帰ってこない旦那を迎えに来ている。▼ちなみに彼女は私の書いた「某剣客浪漫世界で私は物書きをする」および「もしも「るろ剣」の世界に糸色景がいたらのスレ」に登場する絶景先生こと糸色景の子孫に当たります。▼【スレっぽいヤツ】▼htt…


総合評価:207/評価:8.33/完結:162話/更新日時:2026年09月12日(土) 22:05 小説情報

トローラ・ロージン転生(作者:ぶーく・ぶくぶく)(原作:ファイブスター物語)

※本作は作者が読みたい原作改変を自給自足する趣味作です。感想や考察はありがたく拝見しますが、展開は作者の予定と趣味を優先して進めます。▼星団暦2988年、アドラー。▼ユーバー・バラダに雇われた傭兵騎士トローラ・ロージンは、目覚めた瞬間に自分が「もう詰んでいる」ことを悟る。▼視界いっぱいに迫る黄金の電気騎士、K.O.G.。▼本来ならここでトローラは、MHバルン…


総合評価:3090/評価:8.81/連載:63話/更新日時:2026年08月20日(木) 18:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>