10人目のサイボーグ   作:れぷとん

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第150話 戦闘服のファッションイベント

 女子大での出来事は、あっという間に世界へ広がった。最初は学生たちが投稿した短い動画だった。 『レイナ様が戦闘服で来た!』 『本物の009-7!』 『赤い戦闘服が神だった』  数時間後にはトレンド入りした。翌朝には女性誌、芸能誌、ファッションサイトが一斉に記事を書いていた。高級ブランドのドレス姿でもなく、CMの衣装でもなく、戦場で着る赤い戦闘服がここまで反響を呼ぶとは、誰も予想していなかった。編集部は興奮していた。 「これよ!」 「強い女性の象徴!」 「可愛いじゃない、格好いいのよ!」 「今までなかったジャンル!」 特集号の企画が次々と立ち上がった。そして、ついにファッションイベントが開催されることになった。当然、003は頭を抱えた。 「なんで戦闘服でファッションイベントになるのよ……」 004も珍しく困惑していた。 「理解不能だ」 009は苦笑した。 「でも人気らしいよ」 当の本人、009-7は気楽だった。 「戦闘服なら服選ばなくていいし楽だな」 003は額を押さえた。 「そこじゃない!」

 

 イベント当日。巨大ホールには数千人の観客が集まっていた。女性が圧倒的多数。しかも、宝塚ファン、舞台ファン、女性向けゲームファン、女性アイドルファン。そういった層が大量に集結していた。開演前から妙な熱気が漂っていた。 「お姉様……」 「生レイナ様……」 「尊い……」 「今日死んでもいい……」 003は舞台袖で青ざめていた。 「なんなのこの空気……」 002は笑いを堪えていた。 「お前も人気あるぞ」 「私は怖いわよ!」 照明が落ちて会場が静まり返った。そして、中央のゲートが開いた。鮮烈な赤、サイボーグ009の象徴の戦闘服。銀髪、マフラー、そして凛とした表情。009-7がゆっくり歩いて現れた。一瞬、会場が静止した。次の瞬間、大歓声が上がった。 「キャーーーーーー!!」 「お姉様!!」 「素敵!!」 地響きのような歓声だった。009-7は少しびっくりした。 「え、戦闘服なんだけど」 マイクが拾ってしまった。さらに歓声が上がった。 「可愛い!!」 「天然!!」 「最高!!」 003は頭を抱えた。

 

 スクリーンには過去の戦闘映像が流れた。無人機を停止しミサイルを無力化。敵基地へ突入、電子戦による制圧。世界を救った数々の戦い。観客は息を呑んだ。映画でも演技でもない。  本物だった。実際に命を懸けて戦った人物が目の前にいる。その事実が圧倒的だった。最前列の女性が涙ぐんでいた。 「格好いい……」 隣の女性も頷いた。 「本当に戦ってきた人なんだ……」 「凄い……」 質疑応答の時間になった。一人の女性が立ち上がった。 「レイナ様!」 「はい」 「戦うのは怖くありませんか!」 会場が静かになった。009-7は少し考えた。 「怖いよ」 予想外の答えだった。 「毎回怖い」 会場は静まり返る。 「死ぬかもしれないし、仲間が傷つくかもしれない。できれば戦いたくない」 静寂「でも」 009-7は微笑んだ。 「守りたい人がいるからね」 会場のあちこちで悲鳴のような歓声が上がった。「きゃああああ!」 「お姉様あああ!」 「尊い!」 「尊すぎる!」

 

 イベント終了後、SNSは大爆発した。 『お姉様最高』 『戦闘服写真集希望』 『レイナ様に守られたい』 『いや私がお守りしたい』 『宝塚が実在した』 『少女漫画の主人公だった』 そして、宝塚関係者、舞台関係者、映画関係者、全員が同じことを考えていた。 「舞台に出てほしい」 その夜、003はソファに倒れ込んだ。 「もう嫌……」 009が笑った。「どうしたの?」 003はスマホを見せた。見出し『戦闘服の女王』 『令和のベルサイユの薔薇』 『世界最強のお姉様』 『宝塚ファンが熱狂』 003は遠い目になった。 「戦争を止めるために戦っていたはずなのに……」 004がコーヒーを飲みながら呟いた。 「今度は女性ファンの暴走を止める戦いだな」 009-7は首を傾げた。 「なんで?」 全員が同時に思った。この天然が原因だ。しかし本人はわかっていなかった。

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