「お父さん、責任取って」 娘からそう言われた009-7は真面目に考えた。リビングのソファに座りながら腕を組んだ。 「責任かあ」 003が嫌な予感を覚えた。004も新聞から顔を上げた。009はそっと距離を取った。002は面白そうな顔をしていた。 「どうするつもりだ?」 004が聞いた。009-7は即答した。 「娘の大学へ行く」 003が顔を覆った。 「まさか」 「直接説明する」 「何を?」 「戦闘服はそんなに大したものじゃないと」 004が天井を見上げた。嫌な予感しかしない。
数日後の都内某女子大学の正門前。女子学生たちがざわついていた。 「あれ……」 「まさか……」 「嘘でしょ?」 赤い戦闘服、銀髪、赤い瞳。009-7本人だった。娘は頭を抱えた。「なんで戦闘服なのよ!」 「評判なんだろ?」 「だからって!」 既に遅かった。学生たちが集まり始めた。あっという間に囲まれた。 「レイナ様!」 「お姉様!」 「本物だ!」 歓声、拍手、悲鳴。スマホ撮影、ライブ配信、SNS投稿。009-7は困惑した。 「そんなに珍しいかな?」 娘は即答した。 「珍しいに決まってるでしょ!」 さらに問題だったのは。 009-7が嬉しくなったことであった。元々承認欲求がないわけではなかった。むしろ研究者時代から褒められると弱かった。女子学生たちが目を輝かせていた。尊敬の眼差し、憧れの視線。悪い気がしなかった。009-7は言った。 「そうだ、せっかくだから実演しよう」
まずは軽いジャンプから。地面を蹴った。ドンッ! 五メートル。女子学生 「きゃあああ!」 「飛んだ!」 「すごい!」 拍手、歓声。009-7は嬉しかった。次は走った。校庭を一周を数秒だった。女子学生たち「速すぎる!」 「オリンピックどころじゃない!」 さらに、鉄棒を片手で曲げ、ベンチを持ち上げた。歓声が上がった。完全にヒーローショーだった。娘は顔を覆った。 「終わった……」 004は胃薬が欲しくなった。そして最悪の瞬間が来た。一人の女子学生が聞いた。 「レイナ様!加速装置って本当にあるんですか!?」009-7。 「あるよ」 女子学生たち。 「見たい!」 「お願い!」 「一度だけ!」 「お願いします!」 009-7は完全に調子に乗っていた。 「少しだけならいいよ」 009-7の瞳が赤く輝くいた。加速装置起動。その瞬間、姿が消えた。女子学生は数秒沈黙した。 「え?消えた?」 「どこ?」 「超能力?」 次の瞬間には、講堂の屋根、校舎の反対側、図書館前、噴水の上。あちこちから009-7の声が聞こえた。 「こっちだよー」 「今はこっち」 「次はここ」 完全に遊んでいた。女子学生たちは大混乱した。 「瞬間移動!?」 「テレポート!?」 「魔法!?」 「天使!?」 「妖精!?」 「宇宙人!?」 もはや何でもありだった。
SNSはさらに爆発した。動画が世界中へ拡散された。再生数は数時間で数百万回。ニュース番組では専門家たちが頭を抱えていた。 「物理法則がおかしい……」 「映像加工ではありません」 「現地の複数カメラで確認されています」 その頃、大学の片隅で004はベンチに座って頭を押さえていた。003が隣に座った。 「どうしたの?」 「頭痛だ」 「奇遇ね」 「胃も痛い」 「私もよ」 そこへ嬉しそうな009-7が戻ってきた。 「みんな喜んでくれた」 004はゆっくり顔を上げた。 「そうだな」 「成功だったな」 「でしょ?」 「大成功だ」 声が妙に優しかった。003が危険を察した。004は立ち上がって009-7の肩を掴んだ。 「来い」 「え?」 「話がある」 「何の?」 「長い話だ」 説教が始まりそうだった。