10人目のサイボーグ   作:れぷとん

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第15話 公開

 記者会見の日。政府庁舎前は異様な熱気に包まれていた。テレビ局の中継車、海外メディア、警察車両、そして野次馬。 『銀の魔女、本日ついに正体を公表』 『超人たちは何者なのか』 『人類と機械の境界が崩れる日――』 世界中が注目していた。

 

 数日前、地下基地。ギルモア博士は静かにモニターを見つめていた。そこに映るのは009-7の修復された左腕。人工皮膚の下で精密な駆動系が静かに動いていた。 「……問題ない。完全に修復できたよ」 「ありがとう、博士」 009-7は腕を軽く握った。感覚も戻っていた。だが、部屋の空気は重かった。009が壁にもたれながら口を開いた。「もう隠せないよね」 誰も否定しなかった。既に世界中が知っている。自分たちは人間ではない。 “サイボーグ”なのだと。004が煙草を指で弄びながら低く言った。 「政府はいずれ来る」 「解剖でもするつもりかしら」 009-7が冷たく言った。003が顔をしかめた。「嫌な言い方しないで」 「でも事実でしょ。軍や研究者から見れば、私たちは宝の山」 沈黙。ギルモア博士が静かに言った。 「だからこそ、先に主導権を握る」 全員が博士を見る。 「こちらから公開するんだ」 「……」 「我々は人類の敵ではないと示す。そして条件を出す」 博士ははっきり言った。 「人体実験は拒否する」 009-7がわずかに笑った。 「博士、そういう時だけ妙に強気よね」 「当然だ。わしの子供たちだからな」 その言葉に、皆が少しだけ表情を緩めた。

 

 政府特別委員会の会場は騒然としていた。委員たちは目の前の存在をどう扱えばいいのか分からない。人間か、兵器か、それとも何なのか。 「あなた方は……日本政府の管理下に入る意思は?」 009が即答した。 「ありません」 場がざわついた。 「僕たちは兵器じゃない」 静かな声だった。 「人間です」 009-7が続ける。 「ブラックゴーストは今も活動している。私たちはそれと戦っているだけ」 「では、あなた方の技術提供は?」 「断るわ」 即答。 「この技術は、人類には早すぎる」 委員たちの顔が強張った。だが、誰も強く出られなかった。なぜなら彼らは知っているのだ。目の前の存在は、戦車より強く、戦闘機より速い。敵に回せば国家ですら危うい。そして何より、彼らは実際に人類を守っていた。

 

 その夜、特番が放送された。 『独占生出演! サイボーグ戦士とは何者か!?』 出演者は五人。 009、002、004、003、そして009-7。視聴率は歴史的数字を叩き出した。 「本当に飛べるんですか!?」 司会者が興奮気味に聞く。002が苦笑した。「まあ、見た方が早いか」 次の瞬間、加速噴射。スタジオに風が吹き荒れ、002が一瞬で天井近くまで舞い上がった。 「うおおおおおお!?」 「飛んだあああああ!!」 スタジオ絶叫、SNS爆発。次は009。 「加速装置ってどんな感じなんですか?」 「こんな感じかな」 カチリ。加速装置起動。司会者が瞬きをした瞬間には009は観客席の後ろに立っていた。 「えっ」 「えっ!?」 「えええええええ!?」 観客総立ち。悲鳴、拍手、大混乱。そして。009-7の番になった。 「009-7さんの能力は?」 「電子戦」 「電子戦?」 「……簡単に言えば、機械を支配できる」 その瞬間、スタジオ中のスマホが一斉に鳴った。 『こんばんは』 「ぎゃあああああ!?」 全スマホ画面に009-7の顔が表示される。 「やめてください怖いです!!」 観客大爆笑。だが同時に世界中が理解した。この女、 下手すると国家インフラを単独で落とせる。危険すぎる。なのに本人はどこか天然だった。 「……ちょっと悪ノリした」 「かわいいから許されてますけどね!?」 司会者が叫んだ。ネットはさらに爆発した。 『銀の魔女かわいい』 『でも怖い』 『顔が良すぎる』 『女子力ゼロで草』 『なんでこの人こんな美人なのに生活能力低そうなんだ』 『003がお姉さんしてる』 『004が普通に保護者ポジなの笑う』

 

 翌日、009-7は変装してスーパーに来ていた。帽子、サングラス、マスク。完璧のつもりだった。 「あっ」 女子高生が固まった。 「銀の魔女だ……」 「えっ」 「ほんとだ!!」 「うわあああああ!!」 一瞬で人だかりができた。スマホ、撮影、歓声。 「こっち向いてください!」 「応援してます!」 「握手してください!」 「サインを!」 009-7は無表情で固まった。 「……無理」 数秒後。加速装置で逃走した。女子高生たちは目の前から009-7が忽然と消えて叫んだ。余計に騒ぎになった。

 

 その夜、ソファに突っ伏した009-7が死んだ目をしていた。 「もう普通に買い物できない……」 娘がポテチを食べながら言った。 「有名人だもん」 「嫌」 「世界一レベルで美人だし」 「そこじゃない」 「あと機械の腕見えたのインパクト強すぎ」 「知ってる」 003が苦笑した。 「もう観念しなさい」 「……」 「あなた、世界一有名な女性になっちゃったのよ」 009-7はしばらく沈黙し。 そして小さく呟いた。 「……静かな生活したい」

 

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